ソウル中央地検が、ソウル市内のロッテグループ本社にある辛東彬(重光昭夫)会長の執務室と自宅、グループ会社など計17カ所を家宅捜索した。グループ創業者、辛格浩(重光武雄)氏の執務室なども捜索した模様。
付記
韓国紙は7月8日、ソウル中央地検が創業者の辛格浩(重光武雄)氏と次男の辛東彬(重光昭夫)会長に対し出国禁止措置を取ったと報じた。
持ち株会社にあたるホテルロッテをはじめ、ロッテショッピング、ロッテホームショッピング、ロッテ情報通信などと、これら企業の主要役員の自宅も捜索対象となった。検事や捜査官約200人を投入し、コンピューターのハードディスクや会計帳簿、下請け契約書、資産取引に関する資料などを確保したとされる。
また、グループナンバー2のロッテショッピング政策本部長(副会長)ら数人の役員に出国禁止措置を取ったとされる。
ロッテは李明博前大統領の政権で最も恩恵を受けた企業だとされる。
辛格浩氏の宿願だったソウルの複合商業施設「ロッテワールドモール (第2ロッテワールド)」の認可を受けるために裏金を使って政界に金品を供与した疑いをはじめ、釜山のロッテワールド用地の用途変更やビール事業進出、免税店運営事業の受注など、前政権時代の恩恵に絡む数々の疑惑がある。
検察は役員が下請け業者との取引単価を水増しして差額を受け取ったことを示す手がかりを確保した。グループ会社間の資産取引の過程で裏金をつくった疑いがあるともされる。
韓国メディアは、前政権の関係者に捜査の手が及ぶ可能性に言及する。
また、辛格浩(重光武雄)氏の長女・辛英子ロッテ福祉・奨学財団理事長が化粧品会社から免税店入店に関して20億ウォン台の裏金を受け取った容疑で検察の捜査を受けている。
2年前にはロッテホームショッピングの前社長・現社長・役員らが複数の納品業者から20億ウォンを受け取った容疑で実刑判決を受けた。
特にロッテ免税店は中国人観光客の増加により「金の卵を産むガチョウ」になっているため、入店のためのロビー活動もいっそう激しさを増しているとされる。
付記
ソウル中央地検は7月4日、辛英子理事長について、背任収財や横領などの疑いで逮捕状を請求した。業者から便宜を図るよう頼まれて不正に30億ウォン(約2億7千万円)を受け取った疑い。自身が実質的に運営する会社から資金40億ウォンを横領した疑いもあるという。
---
ソウル中央地検は7月7日、
韓国の化粧品会社などからロッテ免税店への出店を認めるよう頼まれ、リベートとして計30億ウォン(約2億6400万円)を受け取ったほか、辛容疑者が実質的に運営する企業から40億ウォン(約3億5200万円)を横領した疑い。検察は、家宅捜索の過程で、辛英子理事長の長男が所有する会社がコンピューターサーバーを交換し、関連文書を破棄するなど、組織的な証拠隠滅を行っていたことも確認したと発表した。
別途、大型スーパーのロッテマートが有毒物質を含む加湿器用殺菌剤をプライベートプランド商品として販売し多数の被害者を出したとして、業務上過失致死傷の疑いで捜査が進んでいる。
ソウル中央地方検察庁は5月14日、有害な化学物質、PHMG(ポリヘキサメチレングアニジン)入りの加湿器用殺菌剤を製造・販売したイギリスに本社を置く Reckitt Benckiser の韓国法人の元代表ら3人と別の会社の代表1人を業務上過失致死傷の疑いで逮捕した。
2001年から2011年に韓国で販売され、妊婦と乳幼児等221人が被害を受け、そのうち95人が死亡した。
問題を放置した政府の不作為を、修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲になった旅客船セウォル号の沈没事故になぞらえ、「家の中のセウォル号」とも呼ばれている。
ロッテマートは、2006年からPHMGを原料とした加湿器殺菌剤をプライベートブランド商品として製造して販売した。
ロッテマートは、「2011年8月以来、加湿器殺菌剤の問題点が提起され、被害者が発生したという報道が出る中でも、『正式に明確な調査結果が出ていない』、『被害状況の確認が難しかった』などの理由で、原因究明と事態の解決により積極的でなかった点について、おわび申し上げます」と述べた。
検察は6月11日、ロッテマートの元代表で現ロッテ物産社長を業務上過失致死容疑で逮捕した。
ロッテでは武雄氏の長男の重光宏之氏と次男の昭夫氏が経営権を巡って争っているが、さらに経営に不安が出てきた。
長男の宏之氏は、下記のコメントを出した。
家宅捜査されている事実について、グループの社会的信用や企業価値が毀損される極めて深刻な事態であると認識しており、------- 現経営体制の重大な問題点が新たに顕在化したものと受け止めている。
事態の全容解明に向けて説明責任を果たすことを求めるとともに、----- 経営正常化のための緊急協議の場を設けるよう求める。
韓国ロッテグループの事実上の持ち株会社、ホテルロッテは6月13日、韓国の金融委員会に上場撤回申告書を提出し、7月中に予定していた株式上場を無期延期すると決めた。検察の捜査が進む中で投資家保護を考慮した。
ロッテは6月10日、米国のAxiall への買収提案(下記)を撤回すると発表した。
ーーー
Lotte Chemical は6月7日、米国でWestlake Chemical から買収を仕掛けられている米国の塩ビメーカー Axiall に買収提案をしたと発表した。
Westlake Chemical は1月29日、Axiall Corporationの全株式を14億ドルで買収する提案をしたと発表した。
1株当たり20ドルの買収で、現金11ドルとWestlakeの株式 0.1967株で支払うもので、総額で約29億ドルとなるが、約15億ドルの負債込みとなるため、ネットでは14億ドルでの買収となる。しかし、Axiallの取締役会はAxiall の資産価値と将来性を著しく低く評価しているとして 拒否した。
Westlakeは4月4日、新提案を行った。
1株当たり23.35ドル(←20ドル)の買収で、現金14ドル(←11ドル )とWestlakeの株式 0.1967株(同じ)で支払うもので、買収額は約15億ドルの債務込みで31億ドル、ネットで16億ドル(←14億ドル )となる。Westlake側はAxiall の株主に対し、Westlakeの提案を通すため、6月17日のAxiall の株主総会でWestlake側の推薦する取締役を選任するよう要請、これに対し、Axiall も会社側に投票するよう要請している。
Lotteは買収額を31億ドル(Westlake の修正提案)以上というだけで、詳細は明らかにしていない。
ロッテによるAxiall買収提案は、Westlakeに対抗するWhite Nightの役割のほか、相乗効果を狙ったものでもある。
Axiall はロッテが手薄なカセイソーダやVCM、PVCなどに強く、顧客の大半が北米地域であるのに対し、ロッテはエチレンなどオレフィン系に強みがあり、事業の中心はアジア地域で、製品群や顧客基盤が重ならない。
また、両社は米国で提携している。Lotte と Axiall は2015年6月18日、ルイジアナ州に石油化学JVを設立すると発表した。
シェールガスに付随するエタンを分解し、エチレンを生産するもので、 Lotte Chemicalが90%、Axiall Corp.が10%出資する。
エチレン能力は年産100万トンで、出資比率に応じ、Lotteが90万トン、Axiallが10万トンを引き取るが、Lotteは自社枠のうち40万トンをAxiallに販売する。Axiallはエチレンを自社のPVCに使用する。Lotteはエチレングリコール 70万トンを生産する。
2015/6/22 韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学
ロッテは6月10日、Axiall への買収提案を撤回すると発表した。
付記
ルイジアナ州 Lake Charlesで開かれたエタンクラッカーおよびエチレングリコール合弁事業の起工式に出席した辛東彬(重光昭夫)会長は6月14日、グループが裏金疑惑で検察の捜査を受けていることについて「申し訳なく思う」と謝罪した。
ホテルロッテの韓国取引所への株式上場延期については「無期限延期ではない。年内上場に向け努力する。国会で国民と約束したので必ず上場する」と説明した。
コメントする