森下仁丹、子宮頸がんの経口ワクチン事業に参入

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森下仁丹は6月16日、子宮頸癌の治療に使う経口ワクチン事業に参入すると発表した。創薬ベンチャーのアンジェスMGから、日米英中4カ国での開発・製造・販売に関する権利を使う許可を得ることで基本合意した。

子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染者は世界で3 億人以上と言われ、約10%が前がん病変の初期段階に移行し、その後、子宮頸部上皮内腫瘍性病変(CIN)と進むにつれ、HPV のがん関連蛋白質(特にE7)の発現が増加し、前がん病変の後期である高度異形性(CIN3)からは30-40%が子宮頸がんに移行すると言われている。

        http://www.irwebcasting.com/20120213/3/18c27d51e1/media/120213_anges_01.pdf

日本を含む各国で発売されている子宮頸癌予防ワクチンは、子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防を目的としたワクチンであり、HPVの既感染者に対し癌化を防ぐような有効性は得られない。

現在、前癌状態を治療する薬剤がなく、主な治療方法として子宮頸部円錐切除術が実施されているが、手術による早産、低出生体重、帝王切開のリスクが高まることが指摘されている。

今回の「子宮頸部前癌治療ワクチン(CIN治療ワクチン)」は、HPVのE7 蛋白質に対する特異的な細胞性免疫を子宮頸部へ効率的に誘導することで子宮頸部の高度異形成を消失させ、子宮頸がんへの移行を回避できる画期的な世界初の治療ワクチンとして期待されている。

本剤は、既に食品として使用され安全性が確立されている乳酸菌にHPVのE7蛋白質を発現させて死菌化した乳酸菌粉末のカプセル製剤で、経口投与により乳酸菌の持つ腸管粘膜免疫の誘導能を介して、子宮頸部の高度異形成を消失させることができる。

この治療ワクチンは、韓国のBioLeaders Corporation が創製し、大阪(当初は沖縄)のジェノラックBLが開発を行ったもの。

BioLeaders Corporationは2000年1月1日に、バイオテクノロジーの産業・教育・研究パートナーシップにより設立された。
世界で初めて乳酸菌ディスプレイ技術を利用して、乳酸菌をキャリアとした安全な経口剤タイプのワクチン化技術を開発した。

ジェノラックBLは2001年10月にバイオリーダースジャパン として設立され、2006年4月に改称した。

多様な感染症に対応するワクチン技術を持っており、その食経験からヒトへの安全性の高い乳酸菌に注目し、乳酸菌による抗原等の外来タンパク質の発現技術と、抗原タンパク質を維持した死菌化技術を応用して、粘膜ワクチンの開発を進めている。

アンジェスMGは2011年12月、BioLeaders Corporation とジェノラックBLとの間で、子宮頸部前がん治療ワクチンについて国内外の開発、製造、使用および販売の独占的実施権許諾に関するオプション権について基本契約することに合意し、2013年4月に国内外における開発、製造、使用および販売の独占的実施権許諾に関するライセンス契約に合意した。
中国の権利は2012年に取得済で、アンジェスMGは当該治療ワクチンについて、国内外の権利を取得することになった。

その後、アンジェス MGは、BioLeaders Corporation、ジェノラックBL、および東京大学産科婦人科学の川名敬講師との間で、経口ワクチンによる子宮頸癌治療ワクチンの共同開発を進めてきたが、2012年5月に森下仁丹がプロジェクトに参画し、共同研究を進めることになった。

川名敬准教授は2014年9月、東京大学医学部附属病院で実施された研究者主導臨床試験の成果を報告し、ワクチン領域で権威ある医学専門誌Vaccineに掲載された。

- 投与した全17例において薬剤に由来すると考えられる有害事象の発生は認められず。
- 至適用量を服用した被験者の70%で投与開始後9週目の時点で前がん病変の明らかな退縮を確認。

今回、アンジェスMGは、BioLeaders Corporation とジェノラックBLから許諾を受けているCIN 治療ワクチンの権利の全てを森下仁丹に独占的に再許諾するもの。
対価として契約一時金および商業化時のロイヤリティを受け取る。

アンジェスMGは、今回の権利許諾により、主力事業である遺伝子治療と核酸医薬を中心とする遺伝子医薬の開発に経営資源をより集中させると同時に、将来、CIN 治療ワクチンの商業化が成功した際にはロイヤリティを受け取ることで保有する権利の価値を最大化できる。

ワクチンは乳酸菌粉末のカプセル製剤であり、森下仁丹では、同社が長年取り組んでいるプロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など)研究や、独自の製剤技術(シームレスカプセル技術)のさらなる深耕にも資すると判断し、権利の許諾を受けるに至った。

同社は今後、アンジェスに続き、外部の研究機関や企業と年内に提携し、ワクチンの開発や販売の体制を構築する。

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森下仁丹のシームレスカプセルは、カプセル構成成分の調整により、医薬品成分の活性維持や作用部位への運搬効率の向上などが期待できる。

シームレスカプセルの優位性

1. フレキシブルな粒径設計、小児から年寄りまで服用し易い設計が可能

2.口腔→胃→腸→大腸の各部位での崩壊設計が可能

3. 苦味物質のマスキングが可能

4. 酸素透過の低減が可能

5. カプセルinカプセルによる複合製剤の設計が可能


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