賠償を受けた水俣病認定男性への補償費不払い処分を取り消す判決

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水俣病と認定された男性が、民事裁判で賠償金が支払われたことを理由に法律に基づく補償費の支給を受けられないのは不当だと熊本県を訴えた裁判で、2審の福岡高等裁判所は6月16日、「支給すべき補償費があるか検討せずに賠償金によって、すべて補償されたと判断した県の処分は違法だ」として、処分を取り消す判決を言い渡した。

原告(91歳)は2004年に水俣病関西訴訟の最高裁判決で勝訴、慰謝料 800万円を受け取り、2011年には水俣病患者と認定された。

公害健康被害補償法では、認定患者には以下の補償が与えられる。

項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700    +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170~67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
原告は認定後、公害健康被害補償法に基づき障害補償費を請求したが、同法には損害賠償を受けた患者に対して県は補償の義務を負わないとする免責規定があるため、県は2013年に不支給の決定をした。


これを不服として訴えた
1審の熊本地方裁判所は2015年3月、「法律の規定で補償の対象外になるのは明らかだ」として、訴えを退け、原告は控訴していた。

今回の判決で裁判長は、公健法の規定について、賠償を受けた場合でもあくまでその価格を限度に支給義務が免除されるにとどまると解釈し、「チッソから賠償金が支払われても、原告と熊本県との関係では損害や慰謝料がすべて補償されたとは言えない。支給すべき補償費があるか検討せずに賠償金によって、すべて補償されたと判断した県の処分は違法だ」と判断し、処分を取り消す判決を言い渡した。

民事訴訟で賠償金を受け取ったことによって補償が一切支給されないとすると「訴訟を起こさなかった水俣病患者との関係で、不公平が生じる」とも指摘した。

障害補償費の支給義務付け請求については「県が判断すべきだ」として認めなかった。

熊本県の蒲島知事は「今後については判決内容をよく検討したうえで対応したい」というコメントを出した。



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