尿による癌検査

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日立製作所は6月14日、住友商事グループの協力を得て、尿中代謝物の解析により、 健常者、乳がん患者および大腸癌患者を識別する基礎技術の開発に成功したと発表した。

将来、受診者自身が尿検体を採取し、これを医療検査機関に送ることで癌検査を可能とする新しい検査スタイルの確立に道を開くもので、癌検査の受診機会の増大に寄与する可能性がある。今後、バイオマーカー候補物質の構造解析を行い、大腸癌、乳癌以外の癌の識別および実用化に向けた研究を推進する。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業、産学連携医療イノベーション創出プログラムの支援によって実施されたもの 。住商ファーマインターナショナルとともに検査法の開発を進めてきた。



乳癌と大腸癌の患者各15人、健康な人15人の尿中に含まれるさまざまな物質の量を、微量な物質を精密に測定できる質量分析計で細かく調べた。

尿検体から1,300以上の糖や脂質などの代謝物を検出し、そこから癌患者の尿を識別するバイオマーカー候補となる物質を10個程度まで絞り込 み、特定したバイオマーカー成分の含有量の違いから、健常者と癌患者の尿を識別することに成功した。

健常者群、乳癌患者群、大腸癌患者群の尿中代謝物を比較したところ、数百種の代謝物が、乳癌、大腸癌で健常者と比べて増加または減少していることが明らかになった。

これらの代謝物を一つひとつ精査することで、数百種のうちの多くが、癌の分子メカニズムと関連した代謝物変動であると確認されている。

そしてこれらの候補代謝物の貢献度を精査し、重要なバイオマーカー候補をさらに10種程度に絞り込み、主成分解析を行うことで、健常者、乳癌患者、大腸癌患者それぞれの尿検体の識別に成功した。

但し、バイオマーカー数を5~10種程度に減らした場合、乳癌と大腸癌の区別はつかないが、健常者と癌患者を区別することはできる。

このため、将来的にはまず、癌かどうかを判別する第1のフェーズと、癌の種類を詳細に解析する第2のフェーズというように、2段階での検査を検討している。

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