METIは7月8日、例年の「世界の石油化学製品の需給動向」を発表した。
世界の石油化学製品の今後の需給動向(PDF形式)
まず、世界の石油化学産業に大きな影響を与える中国の石炭化学と、米国のシェール革命の影響について、下記の通り説明している。
1.中国の石炭化学の動向
(1)石炭化学プロジェクトは、公表済の50近い計画(エチレン換算で約1.7千万トン)のうち、稼働済みのものも含め、2017年末までに18プロジェクト(同585万トン)が実行される見込み。しかし、原油安等の影響により、全体的に稼働予定時期に1年程度の遅れが見られ、2018年以降、どの程度実行されるかは不透明 。
(2)エチレンの生産能力は、ナフサクラッカーも含めた新増設計画の進展に伴い、2.1千万トン(2014年)から3.1千万トン(2020年)まで増加する見込み 。
(3)プロピレンについては、PDHの新規プロジェクトが増加し、MTPも合わせたプロピレンの生産能力は2.4千万トン(2014年)から3.7千万トン(2020年)まで増加する見込み 。
2.米国のシェール革命の影響
(1)シェール由来の新増設エチレンプロジェクトは、原油価格の値下がりによる優位性の低下や建設コストの上昇等の影響を受けるものの、ナフサに対する絶対的な価格競争力は変わらない 。
(2)昨年の調査では、エチレンプラントの稼働開始時期に遅れが見られたが、今回調査では全体として稼働が早まる方向となっており、2017年、 2018年をピークに1千万トンを超える能力増強が引き続き見込まれる。その結果、エチレンの生産能力は2.7千万トン(2014年)から3.4千万トン(2020年)まで増加する見込み 。
概要は以下の通り。
1.世界のエチレン系誘導品
1)生産能力
北米のシェールや中国の石炭化学によるプラントの生産能力の増加が主な要因となり、エチレンを含む世界のエチレン系誘導品の生産能力は増加する見通しである。
しかし、北米では新増設計画が建設コストの上昇を招いていることに加えて、原油価格の下落がナフサに対するエタンの優位性を低下させ、それらがプラントの稼働開始時期を遅らせる動きにつながっている。世界のエチレン系誘導品の生産能力(エチレン換算)は、2014 年末時点で164.2百万トンであった。
現時点の予想では、2020 年末の生産能力は198.5 百万トン(2014 年比で34.3 百万トン増)で、年平均3.2%で増加する見通し。日本の存在感は薄い。
2) 需要
2014 年の世界のエチレン系誘導品需要実績(エチレン換算)は、原油や石油製品の価格が大きく変動している状況の中で、前年比2.6%増と堅調に推移し、131.4 百万トンとなった。
2020 年末の世界全体の需要量合計は162.5百万トン(2014 年比で31.2 百万トン増)、2014 年~2020 年の需要の伸びは年平均3.6%となる見通し。
2.世界のプロピレン系誘導品
1) 生産能力
世界のプロピレン系誘導品の生産能力(プロピレン換算)は、2014 年初時点で112.6 百万トン。
2020 年末の生産能力は138.8 百万トンで、年平均3.5%で増加する見通し。中東や北米のエタンクラッカーからはプロピレンはほとんど生産されないため、石炭化学やプロパン脱水素法(PDH)によりプロピレンの生産を進める中国の占める割合が大きくなり、アジアが全世界の半分以上を占める。
2)需要
世界の需要(プロピレン換算)は、2014 年の88.8 百万トンから2020 年には114.1 百万トンに増加し、年平均伸び率は4.3%と見込まれる。
3.主要製品の需給 (総能力、総生産と地域別需要)
製品別の、能力・需要・生産の地域別推移と、各国・地域ごとの能力・需要・生産の推移を下記のサイトでグラフ化した。
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