廃液による魚の大量死で、台湾プラスチックのベトナムの製鉄所に罰金5億ドル

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ベトナム政府は6月30日、中部ハティン省などの海で4月に相次いで起きた魚の大量死について、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)が建設する製鉄所からの排水に含まれる有害化学物質が原因とし、罰金5億ドルを命じた。

同製鉄所には、JFEスチールが5%資本参加し、技術支援・供与を行っている。

魚の大量死は製鉄所を建設中の中部ハティン省とその周辺の2省で4月上旬から確認された。その中には沖合や深海にしか生息しない希少種も含まれていた。
地元の漁師らの話によると、製鉄所ができる前は魚やエビが豊富に獲れたが、操業が始まってから漁獲量が急減したという。

ベトナム地元紙は地中に埋設した1.5 km のパイプを通じ、海に汚染物質が流れ出した疑いがあると指摘した。魚の大量死が見つかる数日前、同社はパイプの洗浄をしており、300トンの有毒な化学物質が使われたとしている。

ベトナム政府は当初、魚の大量死に製鉄所が関係する確証はないとの見解を示していた。

4月末に同社のハノイ事務所代表が「魚やエビか、近代的な製鉄所か、ベトナムはどちらかを選ばなければならない。両方手に入れるのは首相でも無理だ」と発言して反発を買い、翌日に本社の幹部が謝罪した。

政府は、魚の大量死の調査のため現地に専門家チームを派遣、原因究明に向けて国際的な支援の要請を検討する意向も示し、責任者を法の裁きにかける方針を明らかにした。

ベトナム天然資源環境省などが6月30日に発表した調査結果によると、4月に同製鉄所が地下に埋めたパイプを通じ排出した廃液がハティン省近海で魚の大量死を引き起こしたという。

これを受け、台湾プラスチックは汚染物質を検査しやすいように同パイプを地表に移すなどの対策をとる。

同製鉄所は当初6月下旬に稼働予定だったが、環境対策を改善し、7~9月中の操業開始をめざす。

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台湾プラスチックが建設中の一貫製鉄所:Formosa Ha Tinh Steel はベトナム初の大型高炉で、ハティン省ケアン市ブンアン経済区で建設を進めている。
鉄鋼を中国からの輸入に頼っているベトナムにとって国家的な最重要プロジェクトのひとつ。

第1期の総投資額は105億USドル、敷地面積は2,000ha強、粗鋼生産量は年約700万トンを計画しており、将来的に世界最大級の年2200万トン以上を生産する計画。

JFEスチールが5%資本参加すること、ならびに技術支援・供与を行うことを決定した。

同社は、新興国における幅広い需要増加に応えるため、かねてより東南アジア、インド等で一貫製鉄所事業の可能性を検討してきた。
ベトナムは、順調な経済成長を背景に鋼材需要が安定的に拡大しており、また今後鋼材需要の着実な伸びが見込まれる東南アジアに立地していることから、ベトナムの内需、および東南アジア向けを中心とした外需に対応した鋼材供給拠点として期待できる。

JFEは、第5次中期経営計画で、JFEブランド販売量 4,000万トンへの拡大を目指しており、今回の参画はその一歩となる。
今後、FHS社の早期の安定稼動に向け協力すると共に、FHS社において製造された製品を同社を通じて出資先や顧客に販売することによって、今後の成長に結びつけていく。

製鉄所の概要は下記の通り。

合弁会社 Formosa Ha Tinh Steel
所在地 ハティン省ケアン市ブンアン経済区
事業内容 高炉一貫製鉄業
資本金 45億USドル
株主構成 台湾プラスチックグループ70%、中国鋼鉄25%、JFEスチール5%
* 中国鋼鉄は台湾最大の製鉄会社で、粗鋼生産能力は年間約1300万トン規模
投資額 105億USドル(第1期予定)
設備 コークス炉、焼結設備、第1高炉、第2高炉、製鋼設備、熱間圧延設備、棒鋼・線材圧延設備、発電所

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