米パイプライン運営大手のEnergy Transfer、奇策を使い、同業のWilliams Companiesとの合併を違約金なしで解消

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米パイプライン運営大手のEnergy Transfer Partners, L.P. は6月29日、2015年9月28日に合意した同業のWilliams Companiesとの合併を取りやめると発表した。
原油価格の低迷で約330億ドルの買収負担が重く、白紙撤回する。

一方のWilliams は6月27日の株主総会で合併を承認したばかりだが、違約金支払を求め、上告した。

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Williams Companies は2015年6月21日夜、Energy Transferから約480億ドル相当での買収を持ち掛けられたが、この提案を退けたことを明らかにした。
1株当たり64ドルの提案は「当社の価値を大幅に過小評価している」とした。

Energy Transfer によると、買収価格は株価に32.4%のプレミアムをのせた1株64ドルで、全額Energy Transfer の株で払われる。
債務継承分を含めれば買収額は約530億ドルになる。

翌日の株式市場で同社の株は前日比25.90%高となり、時価総額は455.8億ドルとなった。

Energy Transfer は全額株式交換方式の取引は「時宜にかなった、適切な合併」になるとして、引き続き買収を目指す意向を示した。

1908年創業のWilliamsはテキサス州からニューヨーク州とニュージャージー州を結ぶ全長約1万6000キロの天然ガス網を所有している。さらに、米北東部の巨大シェールガス田「マーセラス・シェール」からニューヨーク州と北東部6州に天然ガスを供給するパイプライン網の建設を計画している。

一方、1995年にテキサス州の320キロ足らずの天然ガスパイプライン運営から出発させた
Energy Transferは、今では11万キロを超える石油・ガス・燃料輸送網を手掛ける米国有数のエネルギー輸送企業に成長した。

Williamsのパイプライン資産は北東部、
Energy Transferは南部と中西部に集中しているため、両社の合併は理にかなっているとされる。ネットトワークの重複の少ない両社は独禁法上も余り問題ないとみられた。


その後、エネルギー関連株が軒並み大幅に下がった。
この結果、両社の交渉での買収価格も下がった。

Energy Transferは2015年9月28日、買収が決まったと発表した。
買収価格は株価に4.6%のプレミアムを乗せた1株43.50ドルで、 Energy Transfer の株か現金か、その組み合わせを選べる。
買収額は債務込みで377億ドルと、当初提案から約3割下回った。

しかし、その後も株価の下落は続いた。原油価格下落に加え、買収が本当に実現するかどうかとの疑念が響いたとされる。

Energy Transfer は2016年3月、半年前に同業のWilliams買収で利益が年間20億ドル上積みされる可能性があると見込んでいた が、これを大幅に下回る 1億7000万ドルに引き下げた。

シナジーの見通しを92%引き下げたことについて、昨年9月28日の買収合意後に「生じた事態や環境を考慮した」と説明、同日以降、原油価格がバレル当たり5ドル、天然ガスが30%それぞれ下げている状況に言及した。

Energy Transfer 側はこれ以上のコメントを避けたが、Williams側は、「Energy Transferとの統合が株主にとって最大の利益になると考えており、株主の承認を経て買収を実現することを目指している」と述べた。

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Energy Transfer は統合解消を図った。

しかし、統合契約には、経済状況やエネルギー製品産業や両社の株価の変動は統合契約を解消する根拠にならない、と明示されている。

一つだけ、Energy Transferが使えるかも分からない条項があった。

今回の取引では、Williams株式買収に当たり、Energy Transferの株式で支払い得ることとなっている。

この場合、合併は組織再編と看做され、取引は通常は無税である。
これを確実にするため、契約書には、双方の法律事務所が、この取引は無税の組織再編であるとの意見書を出すとなっている。

2016年5月、Energy Transferの法律事務所のLatham & Watkins は、合意が無効となる6月28日までに意見を出すことが出来ないとの判断を行った。

Energy Transferは株主に対し、これを理由に買収が破談になると述べた。

Williams側は5月13日、Energy Transfer が「遅延や妨害を繰り返す」ことで買収合意に違反していると主張し、Delaware Chancery Court に対し Energy Transfer による合意解消を阻止するよう求める訴えを起こした。合意解消を正当化する理由として法律意見書の件を用いることを禁じるよう求めた。

この訴訟で、裁判官は6月24日、訴えを却下した。

詳細は明らかにされていないが、Energy Transferの法律事務所のLatham & Watkins は、無税の組織再編としては問題があることを見つけたとされる。
今頃になって見つけたというのはおかしく、裁判官もおかしいとしたが、疑わしいというだけでは間違いであるとは言えないとした。

裁判官は、Latham & Watkins は「誠実」という条件は満たしているとした。

また、Latham & Watkins は契約当事者でなく、Latham & Watkins が意見を言えないという以上、Energy Transfer は逃れられることとなる。

これにより、裁判官は税務上、どちらが正しいかの判断を避けた。

この結果、 Energy Transferは契約書の規定により、6月28日に契約を終了することが出来るようになった。

Williams は6月29日、Energy Transferから期限までに条件が整わないため契約を終了するとの通知を受けたと述べ、コメントを発表した。

Energy Transferは、Latham & Watkins からの税務に関する意見をもらうことも含め、契約を実行するための努力を怠っており、契約違反である。

実際問題として Energy Transfer側に契約実行の意思がないことを認める。株主の利益を守るため、違約金支払を求める。

両社の統合は、6月9日にFTCの承認を得ている。

Williamsは6月27日の株主総会で、Energy Transferとの統合を承認した。
Williamsは同日、州最高裁に訴えた。違約金支払いを求める。

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