三菱商事は7月4日、傘下のMCバイオテックの培養工場において、アスタキサンチン製造工程の本格稼働を開始したと発表した。
MCバイオテックには三菱商事が93%、日本水産が約7%を出資している。
アスタキサンチンは、その抗酸化作用から健康食品、化粧品原料、並びに天然着色料として、欧米・日本・東南アジア・中国等世界的に需要が拡大している。
アスタキサンチンはカロテノイドの一種で、エビやカニなどの甲殻類や、鮭、イクラ、鯛などに多く含まれる赤橙色の色素。
これらの魚介類は体内でアスタキサンチンを体内で生合成することができず、主に微細藻類や植物に生産されたものが食物連鎖によってオキアミやサクラエビの体内に蓄積され、上記の魚介類はそれらを餌とすることで、アスタキサンチンを摂取している。
アスタキサンチンには他の抗酸化剤の追随を許さない、ビタミンEの100~1000倍とも言われる強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素除去能、免疫賦活化、発ガン抑制作用など、極めて有用な特性を持つことが、分かってきた。
このため、アスタキサンチンを摂取することで、生活習慣病の予防や疲労回復、アンチエイジング、美肌作用といった効果があると期待され、新たな機能性健康食品や飲料、老化予防化粧品の素材として、にわかに市場の注目を集めるようになった。アスタキサンチンには天然型と合成型があり、天然型はヘマトコッカスという単細胞の藻類(ヘマトコッカス科ミドモナス目の単細胞の植物プランクトン)から培養する。
ヘマトコッカスは紫外線を受けると自らの身を守るためにアスタキサンチンを生成し、緑色から赤色に変化する性質を持つ。合成型のアスタキサンチンは石油由来で生成される。合成型は、抗酸化力が天然型に比べて約30%ほどといわれる。
MCバイオテックの培養工場はブルネイの首都のBandar Seri Begawan にある。
ブルネイは、日照、水等の自然資源に恵まれていることから、アスタキサンチンを豊富に生成するヘマトコッカス藻の培養に適しており、ブルネイ政府の協力も得ながら、「Bio Innovation Corridor」工業団地の第1号案件として本事業を取り進めてきた。
本事業では、三菱商事は、日本で天然アスタキサンチンを扱うバイオジェニック㈱と提携している。
バイオジェニックがMCバイオテックにヘマトコッカス藻の培養装置を納めるとともに、工場の運転・管理を受託している。
バイオジェニックは、植物及び微生物の培養・研究開発ならびに製造販売、培養物の加工販売、その他機能性原料の研究開発・販売を業としている。
中国・昆明市の子会社で密閉式のフォトバイオリアクターでヘマトコッカス藻を培養、日本国内で天然アスタキサンチンを抽出・加工している。同社は荏原実業の子会社であったが、2012年にMBOで独立した。
MCバイオテックは培養したヘマトコッカス藻から乾燥バイオマスを製造し、日本向けに輸出し、日本国内でアスタキサンチンを抽出した後、バイオジェニックが、各種原料として製品化し国内外に販売する。
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三菱商事は、1972年よりブルネイにて LNGを生産、主に日本に向けて安定的に供給している。
本事業を通じてブルネイの豊かな微生物資源を有効に活用し、安全・環境面にも十分に配慮しながら工場の安定操業を継続することで、同国の産業多角化・雇用創出・人材育成に貢献し、エネルギー事業も含めた包括的なブルネイ・日本の関係強化に尽力するとしている。
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