パナソニックの欧州ブラウン管カルテルの制裁金確定 

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パナソニックは欧州ブラウン管事業でのカルテル制裁金に関する欧州普通裁判所の判決について欧州司法裁判所に上告していたが、7月8日、これを却下する決定の通知を受けた。

これにより、パナソニックの制裁金128,866千ユーロ(約143億円)が確定した。既に引当金を計上しており、2017年3月期連結決算への影響はない。

子会社MT映像ディスプレイ(及びその前身の松下東芝映像ディスプレイ)については上告せず、同社負担分(62,747千ユーロ)は納付済み。

パナソニックとMT映像ディスプレイはブラウン管事業から撤退している。

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EUは2012年12月5日、テレビやコンピューターモニター用のブラウン管CRT)について、1996年から2006年までの10年にわたり価格カルテルを結んだとして、パナソニックや東芝を含む6社に対し、過去最高となる総額14億7000万ユーロの制裁金を科した。

2012/12/6 EU、ブラウン管カルテルに制裁金 

これに対し、中華映管とTechnicolor を除く各社が欧州一般裁判所に訴えた。

欧州一般裁判所は2015年9月9日、Samsung、Philips、LGについては制裁金を据置き、日本勢については減額(東芝単独はゼロ)の判決を下した。

東芝はテレビ向けのブラウン管についてのカルテルに加わっていたかどうかについて証明できていないとした。

パナソニックは子会社分についてはこれを受け入れたが、単独分については、事実認定や法令適用に疑義あるとして、欧州司法裁判所に上告した。

今回、欧州司法裁判所がこれを却下し、確定した。

 

減免率

制裁金(千ユーロ)

欧州一般裁
2015/9/9
欧州司法裁
2016/7/8
TV用 モニター用 合計
台湾・中華映管(Chunghwa 100% 0
(8,385)
0
(8,594)
0
(16,979)
Samsung SDI 40% 81,424 69,418 150,842 →  150,842
Philips 30% 240,171 73,185 313,356 →  313,356
LG Electronics 0% 179,061 116,536 295,597 →  295,597
Philips/LG Electronics Philips分30% 322,892 69,048 391,940 →  391,940
フランス Technicolor 10% 38,631 - 38,631
パナソニック 0% 157,478 - 157,478    128,866 →  128,866
東芝 0% 28,048 - 28,048    0
パナソニック/東芝/松下東芝映像ディスプレイ 0% 86,738 - 86,738 82,826
パナソニック/MT映像ディスプレイ 0% 7,885 - 7,885     7,530
合計   1,142,328 328,187 1,470,515

 
松下電器産業と東芝はブラウン管事業を統合、2003年4月に松下東芝映像ディスプレイを設立、
 2006年にドイツとアメリカの子会社での生産を停止し、清算。
 2007年に松下が東芝持株(35.5%)を買い取り、完全子会社化し、MT映像ディスプレイに改称。

パナソニックは子会社分については負担分を62,747千ユーロとしている。
計算上は松下東芝映像ディスプレイ分の2/3と、MT映像ディスプレイ分の全額の合計となる。

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公取委は2009年10月7日、MT映像ディスプレイと韓国、台湾、タイのテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。

日本のブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。

公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。

2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令

MT映像ディスプレイ自体も、Samsung SDIなどとともに排除措置命令を受けたが、両社については、排除措置命令時において既に当該行為がなくなっていると認められ、取り消された。

MT映像ディスプレイと海外子会社3社による価格カルテルに関する審決取消請求事件について、東京高裁は2016年4月13日、原告の請求を棄却した。

    2016/4/23  
日本企業の海外子会社による他の日本企業の海外子会社向けの価格カルテルで有罪 

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