大飯原発で想定される地震の揺れが、過小評価のおそれがあると指摘した原子力規制委員会の島崎元委員と、田中俊一委員長らが7月19日面談した。
元委員が規制委員会の再計算で過小評価が裏付けられたと述べたのに対し、田中委員長は再計算に用いた武村式は評価手法として確立していないとし、見直す考えがないとした。
武村式は、「不確かさ」の考慮をどこまですればよいかなど、原発の揺れを計算する手法としては確立されていない。
「武村式は実績がなく、今すぐに取り入れるのは難しい。今回の計算は、木に竹を接いだようなもの」(石渡明委員)
武村式によって行った再計算については、再計算自体に無理があったとし、「元委員の指摘だからといって、やってはいけない計算を職員にやらせてしまった」と述べた。
そのうえで、「まずは専門家できちんと議論し、標準となるものを出していただきたい」と述べた。
付記
規制庁担当者は同じ会見で、規制庁が二つの計算方法で出した結果については相対的に比較できるとの見解を示し、判断が分かれた。
付記
原子力規制委員会は7月27日の定例会で、見直さないことを決めた。
武村式について改めて検討し、「規制において推奨すべきアプローチと位置づけるまでの科学的・技術的な熟度には至っていない」と判断した。
問題点は下記の通り。
2016/7/16 大飯原発の基準地震動問題
入倉・三宅式 596ガル→「不確かさの考慮」を上乗せ補正→補正後 856ガル
なお、関電によると、炉心冷却が確保できなくなる下限値は 1260ガル
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島崎元委員
「入倉・三宅式」では、地表に対して垂直に近い断層に適用すると、地震規模が他の計算式に比べて四分の一程度に過小評価される。
他の手法による再計算を要請規制委
「武村式」を使って再計算
現在の基準地震動の856ガル、武村式では644ガル→基準地震動の見直しは不要
島崎元委員
規制庁の計算に誤り
① 基準地振動の計算のパラメーターの設定に違い
現行の入倉・三宅式 596ガル
再計算の入倉・三宅式 356ガル
武村式 644ガル② 現行 入倉・三宅式の結果(596ガル)に「不確かさの考慮」を上乗せ補正(→856ガル)
再計算では補正なし島崎元委員の試算では、1550ガル
「高い精度の推定ではないが、現在の基準地震動が過小評価されているのは間違いない」。
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原子力規制委員会は7月13日、武村式による再計算の結果、最大の揺れは644ガルで、審査で了承した856ガルを下回ったとし、「揺れの大きさを見直す必要はない」と結論づけた。
しかし、この計算がおかしいと指摘されると、今度は、武村式は確立されたものではないとし、再計算について、「やってはいけない計算を職員にやらせてしまった」としている。
「入倉・三宅式」では、地表に対して垂直に近い断層に適用すると、地震規模が他の計算式に比べて四分の一程度に過小評価されるとの意見を入れて再計算をしながら、「入倉・三宅式」しかないとする。
島崎元委員の試算では1550ガルにもなり、炉心冷却が確保できなくなる下限値の1260ガルを上回る。
(既報の通り、基準値振動は平均値であって、上限値ではなく、これを上回る可能性はある。)
しかも、島崎氏の退任後、規制委員会には地震の専門家がいないという。
(現在の地震担当の石渡明委員は地質学が専門)
今回のドタバタで規制委員会の審査に対する信頼性がゆらぐ恐れがあるし、今後の裁判にも影響を与えるとみられる。
実際に事故が起これば、また「想定外」というのだろうか。
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