ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev による2位のSAB Miller 買収、実現へ

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ビール世界最大手のAB InBev は2015年11月11日、2位の英のSAB Miller を1株当たり44ポンド、総額 697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。

2015/10/14 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ

このままでは独禁法上で問題になるのは確実なため、両社は対策を取った。(下記参照)

これが奏功し、EUは2016年5月24日、米国は7月20日、 そして最後の大物の中国商務部も7月29日に承認した。これで23国・地域の承認を得、残りは数少ない。

Asia-Pacific では、豪州、インド、韓国と中国が承認している。日本で公取委が審査しているという話は聞かない。
両社の日本でのシェアは小さく、合併しても全く影響がない。

しかし、英国のEU離脱選択を受けたポンド安が新たな問題として浮上した。

合意時のレートでは、700億ポンドは1,060億米ドルに相当する。
しかし、Brexitによる12%のポンド安で、これは920億ドルに目減りした。

株主の不満を受け、AB InBev は2016年7月26日、SAB Miller の買収価格を、これまでの44ポンドから45ポンドに引き上げた。最終提案であるとしている。
この結果、買収総額は790億ポンドになる。

但し、これでも米ドル換算では1,040億ドルで、当初のドル建てより低い。

部投資家は新たな買収価格でもSAB Millerの価値が過小評価され、株主が公平に扱われていないとして、引き続き提案は受け入れられないとの姿勢を示した。

SAB Millerの取締役会は7月29日、AB InBev の新提案(1株当たり45ポンド)を全会一致で支持を決め、株主にこれを受け入れるよう勧告した。

これによりビール業界史上最大の買収実現に向けて道筋が整った。

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独禁法対策は下記の通り。

1)米国

SAB Millerは保有するMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却する。
Molson Coorsは米国のビール市場でシェアを25%に伸ばし、ABインベブの45%に次ぐ2位に躍進する。

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米国は2016年7月20日、これを条件に承認した。

2)EU

AB InBev は2015年12月17日、SABMiller の欧州のブランド、Grolsch ビールとPeroni ビールを売りに出すことを明らかにし、3ヶ月以内の成約を求めた

アサヒビールは2016年2月10日、AB InBev に対し、AB InBevによるSABMillerの買収実行を条件として、SABMillerのイタリア、オランダ、英国事業その他関連資産を取得するための法的拘束力のある最終提案を行ったと発表した。

SABMillerのイタリア、オランダ、英国の事業を構成する会社の全株式と、3ブランドの知的財産権その他関連資産。
ただし、「Peroni」と「Grolsch」は米国・プエルトリコにおけるブランドに係る知的財産権を除く。

買収対象会社 ブランド  
Birra Peroni S.r.l.(伊) 「Peroni」 150年以上の歴史
Royal Grolsch NV(蘭) 「Grolsch」 400年の歴史
Meantime Brewing (英) 「Meantime」 英国のクラフトビールのパイオニア的ブランド
Miller Brands (UK) (英)    

2016/2/16 アサヒビール、英SABMillerの欧州事業の一部を買収 

AB InBev は4月19日、アサヒからの約29億ドルでの買収提案を受け入れた。

更にAB InBev は4月29日、SABMillerの中東欧事業を売却する意向と発表した。

SABMillerのハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキア、ポーランドの全ての資産を売却する。売却額は50億ドル程度と推定される。
ブランドでは、ポーランドのTyskieとLech、ハンガリーのDreher、ルーマニアのUrsusなど。

これら中東欧の事業は1社または2社に売却される。

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EUは5月24日、AB InBev によるSABMiller買収を承認すると発表した。
既に対策として発表されていたSAB Miller の欧州のビール事業の実質的に全ての売却を条件とする。

2016/5/28 EU、AB InBev によるSABMiller 買収を承認

3)中国

香港の華潤ビール(China Resources Beer)は2016年3月2日、SABMiller とのJVの華潤雪花ビール(China Resources Snow Breweriesを100%子会社化すると発表した。
SABMillerの持分49%を総額16億ドルで買収する。

中国では、華潤雪花、青島ビール、AB InBevが3強で、AB InBevSABMillerを傘下に収めると中国でのシェアは40%近くになる。

これだけでもAB InBevによるSABMiller買収承認の障害となるが、2008年11月の InBev によるAnheuser Busch 買収の際に、中国商務部は、「華潤雪花ビールの株式保有を求めてはならない」との条件を付けて承認している。

このため、AB InBev はSABMiller買収の承認を得るため、華潤雪花ビールを手放すこととしたもの。

2016/3/5 SABMiller、華潤雪花ビールを売却

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中国商務部も7月29日、買収を承認、これでほぼ全ての国での承認を取得した。

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