DNA で 「また従兄弟」が分かる新しい血縁判定法

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京都大学は8月10日、玉木敬二教授(医学研究科)らの研究グループが、口腔内細胞のDNAを用いて、これまで親子・兄弟までしかできなかった2人の間の血縁関係を「また従兄弟」(いとこの子ども同士)まで判定できるDNA鑑定法を開発したと発表した。

同成果は7月29日に米国科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

Pairwise Kinship Analysis by the Index of Chromosome Sharing Using High-Density Single Nucleotide Polymorphisms


ヒトは父親と母親からの染色体を1本ずつ23対持っている。

血縁が近い人同士は、血縁の遠い人や他人と比べて互いに同じ色の部分を多く持つため、血縁鑑定では、この同じ色の部分がどれほどあるかを検出すれば判定できる。

ところが、通常のDNA鑑定法(DNAの15箇所を検査)は、染色体にある複数の離れた場所の配列情報だけをDNA型として検出するため、血縁が遠くなって染色体の同じ部分が少なくなると、どこが同じ部分なのか分からなくなる。

現在の方法では、親子、兄弟までしか、完全には判断できない。


今回の方法は、DNAマイクロアレイを用いてDNAの配列上のわずかな違い(一塩基多型:SNPs)を174,254ヵ所 検査する。

この検査結果を有効に利用するため、「染色体共有指数」(ICS:Index of chromosome sharing ) を考案した。

検査した2人が特定の血縁関係にあるかどうかを、分布の高さ(確率密度)を利用する計算方法を用いて、確率的に評価する。

血縁関係が予想できる場合は、血縁関係がある場合とない場合の確率(尤度)を比較する尤度比で計算する。
尤度比が高いほど、血縁関係があることを意味する。

状況により、特定の血縁関係(兄弟なのか、伯父甥なのか、従兄弟なのか)が分からない場合があるが、この場合は確率密度とベイズの定理を応用した事後確率を算出し、決定する。

この方法を使うと、性別に関係なく、「いとこの子供」といった遠い縁戚関係でも99.9%の確立で判断できる。
「またいとこ」でも約94%の確立で、他人と鑑別できることが分かった。


今後の展望として、次のとおり述べている。

・ サンプル数を増やして精度の検証をしたい。

・ 今回は新鮮な頬の細胞を用いたが、遺体の場合、爪や歯や骨であることが多く、長期にわたり外環境にさらされて壊れているのが殆ど。
 このような試料からの確実に判定できるよう研究を続けたい。



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