中国商務省は8月22日、公告第34号で、日本とEU原産の高性能ステンレス継目無し鋼管* に対するアンチダンピング課税措置を撤廃すると公表した。
* 石炭火力発電所の超々臨界圧ボイラ等に使用される高付加価値特殊鋼
WTO上級委員会が2015年10月14日に、WTOルールに違反しているとして日本とEUの主張を認め、中国に対し是正を勧告する最終判断を示し た。
商務部は2016年6月20日付けで再調査を行う と発表した。
今回、当初の反ダンピング調査申請者が申請を取り消したとの理由で、アンチダンピング課税を撤廃した。
商務部は2011年9月8日、日本とEU原産の本製品について調査を開始し、2012年11月8日にクロの最終決定を行った。
反ダンピング税率は次のとおり。
日本 住友金属工業 9.2% 神鋼特殊鋼管 14.4% 其の他 14.4% EU Tubacex Tubos Inoxidbles 9.7% Salzgitter Mannesmann Stainless Tubes Italia 11.1% 其の他 11.1%
日本政府は、中国では同製品を生産していないとし、中国側の損害認定などの説明が不十分と主張して、中国側に詳しい説明を求めた。
WTOの紛争解決手続きによると、相手国と協議し、解決しない場合は、WTOの「一審」に当たる紛争処理小委員会(パネル)設置を要請する。
日本(およびEU)は2013年4月11日、WTOに対し本件措置についてパネル設置要請を行い、同年5月24日にパネルが設置された。
2015年2月にパネル報告書が、同年10月14日に上級委員会報告書がそれぞれ公表された。
中国の措置はアンチダンピング協定に違反すると判断し、中国に対して措置を協定に適合させるよう勧告した。
- 中国によるアンチダンピング課税は、日本から輸出している高性能品と中国製品とのグレードの違いや競争関係がないことを適切に考慮していない等の点で損害及び因果関係の認定に瑕疵があり、アンチダンピング協定3条1項(実証的な証拠) 及び5項(損害立証) に違反するとしたパネル報告書の判断を支持した。
- 中国の措置は、アンチダンピング協定3条2項(影響を累積的に評価)及び4項(すべての経済的な要因及び指標の評価)にも整合しない。
これを受け、商務部は2016年6月20日、再調査をすると発表したが、当初の申請者が申請を取り消したという理由で措置を撤廃したもの。
経産省はこれについて、「WTOの紛争解決手続の有効性が改めて確認されるとともに、近年新興国においてアンチダンピング課税措置が増加傾向にある中、WTOルールの明確化を通じて、恣意的又は不透明なアンチダンピング課税措置発動を抑制することについても大きな意義があると考えられます 」としている。
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同様の例として、EU原産のX線セキュリティチェック機がある。
2011年1月23日にクロの最終決定を行った。
これに対し、WTO紛争処理小委員会は2013年2月、WTO反ダンピング規定に違反するとの判断を下した。
反ダンピング関税は「損害的ダンピング」への対処として厳格な条件の下でのみ課すことができるが、今回の事案において、中国はこれらの条件を満たしていないとのEUの訴えに同意した。
また、中国が適正な手続きと透明性の規定用件を尊重することを怠ったとの結論を下し、同国にWTO規定に則るよう要請した。
中国商務部はWTOの決定を受け、再調査していたが、2014年2月19日、当初の申請者が申請取り消しを申し出たため、国務院関税委員会がダンピング課税の終了を決めた。
WTOの決定前に中国側が取り消した例もある。
商務部は2005年9月に、米国・韓国・タイ・台湾原産の無漂白クラフト紙をダンピングと認定し、課税を開始した。
米国政府は被害の認定や調査手続きを問題視し、強く反発、WTOの協議を要請すると中国に伝えた。
米国企業が中国の行政再審法(1999/10/1発効)に基づき再審を要請したところ、商務部は再審の結果、この決定がアンチダンピング法に合致しないとして、2006年1月9日付けでこの決定を取り消し、同日付でダンピング課税を終了した。
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