命の危険がある急性アレルギー反応「アナフィラキシー」を緩和するために用いられる注射薬「EpiPen」の価格をかつての5倍にまで引き上げ、不当に利益を得ているというもの。
EpiPen は、アレルギー疾患のうち、食物・薬物・ハチ等などにより即時型・多臓器アレルギー反応(アナフィラキシー症状)を起こす可能性の高い患者に対して事前に処方され、それを携帯し、緊急補助治療の目的に使用される医薬品である。
成分はepinephrineで、これはadrenalineの米国での名前。
症状出現後30分以内(遅くとも60分以内)に注射すれば、死亡者を減少させる効果が期待できる。
アナフィラキシーが起こる恐れのある何百万人もの患者に処方されている注射薬で、流通はMylanがほぼ独占している。
米国ではSanofi が競合品のAuvi-Q を販売していたが、2015年11月に、誤った投与量が注入される可能性があるとして自主回収した。
イスラエルのTeva Pharmaceutical はEpiPenのジェネリックをFDAに申請していたが、本年2月29日、FDAに大きな問題点を指摘され、却下された。
同社では上市は著しく遅れるとしており、2017年以前の上市は期待できないとみられている。
米上院の2人の有力議員が8月22日の上院司法委員会で、EpiPenの価格(2本入り)を過去6年間に100ドルから500ドル以上につり上げたとして同社を激しく糾弾した。
報道によると、実際には100ドルから600ドルに上がっており、その間、 同社のCEOの年俸は245万ドルから1893万ドルに上がったという。
日本ではファイザーが2012年8月にMylanから独占的販売権を取得するライセンス契約を締結した。
日本では2011年9月から保険が適用されている。
薬価は、大人用(0.3mg)が10,894円、子供用(0.15mg) が7,979円。
価格急騰で家族や学校、緊急救援隊員によるEpiPenへの使用を困難にしていると指摘し、価格引き下げを求めた。
EpiPenは1年ごとに買い替える必要があり、両議員によると、価格上昇により多くの患者が購入を続けられなくなっている。また、学校への常備や、患者が加入する健康保険プログラムへの出資額の増加により、政府も巨額の負担を強いられているという。
議員はまた、米連邦取引委員会に対し反トラスト法違反容疑での調査を要求した。
既に市場に長く流通していた同薬を2007年に買収したMylanは研究開発費を回収する必要もないとして、「EpiPenの継続的な価格引き上げには、何ら正当性がないとみられる」と指摘した。
これに対しMylanは、EpiPenには保険が適用されるため、大半の患者の負担は皆無か少額にすぎない上、同社は2012年から6万5000校以上にEpiPenを無料配布してきたと反論し た。
民主党大統領候補のHillary Clinton が8月24日に「製薬会社が正当な理由なく薬を値上げし、患者よりも自社の利益を優先することは間違っている」とし、Mylanの事例は「非常識」と非難、自主的値下げを要請した結果、Mylanは25日、患者の自己負担額を軽減する方針を発表した。
実際の定価引き下げは見送ったものの、患者が割引きカードを活用することで、2本入りの購入で最大300ドルのコストを軽減できる措置を導入した。これまで定価で購入してきた患者にとっては、自己負担額が実質半減することになる。
さらに、患者支援プログラムの使用要件を拡大し、保険未加入の患者や家族の自己負担額を軽減する方針を示した。
MylanのCEOは、同社がこれまでにEpiPenの改善に向け数十億ドルを投じてきたとしたうえで、薬剤給付管理会社や保険会社などが関与するため、同社が実際に回収できるのは定価の半分を下回る水準に過ぎないと主張している。
Clinton陣営は、Mylanの措置を歓迎するとしつつも、「定価を引き下げることなく割り引きを提供しても、高額の薬価を反映し保険料が上昇するため、今回の措置では不十分」との見解を示した。
カナダの製薬大手 Valeant Pharmaceuticals が2種類の心疾患治療薬を大幅に値上げしたことをめぐり、米議会下院の監視・政府改革委員会の民主党委員らが問題視した。
ValeantはMarathon Pharmaceuticals から2種類の心疾患治療薬(特許切れだがジェネリック品無し)を買収したが、即日、大幅値上げした。
医薬品 Marathon価格 Valeant価格 値上げ率 Isuprel 215.46$ 1,346.62$ 525% Nitropress 257.80$ 805.61$ 212%
議員は、Valeantが2つの薬剤の権利を取得した当日にそれぞれ525%、212%値上げした根拠になる文書の提出を要請していたが、同社は機密性が高いとして情報の提出を拒んだ。
Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していた。
同社は米国での医薬品値上げで監督当局や政治家から監視の対象となり、数カ月にわたって混乱に見舞われている。
2016年3月15日の米国の株式市場で、Valeantの株価が51%下落した。
業績見通しを下方修正したことや、2015年第4四半期決算が予想を下回ったこと、4月の期限までに年次報告書を提出しなかった場合はデフォルトに陥る恐れがあると明らかにしたことなどが理由。
Valeant は再建対策の一つとしてコアでない資産の売却も検討しており、問い合わせもあるという。
Wall Street Journalによると、武田薬品と投資会社TPGから共同での買収提案があった。金額の提示はなかったとされ、Veleantはこれを拒否、その後の話し合いはないという。
Valeantは4月25日にライバルのアイルランドの製薬大手 Perrigo Co. のCEOのJoseph Papaを会長・CEOとして迎えることを決めた。
4月29日に2015年の年次報告書を提出し、デフォルトをひとまず免れた。
これによると、株主帰属純損益は、2014年の+881百万ドルに対し、2015年は-292百万ドルとなっている。
その後、資産家のWarren Buffett が5月初めに、Valeant のビジネスモデルには非常に大きな欠陥があると述べたこともあり、株価は2015年8月の高値から85%余り下落した。
Valeantは2016年5月、2剤について、病院に対し最低10%、数量に応じ20%、30%、40%のリベートを支払うと発表した。
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