出光興産と昭和シェル石油の合併に反対している出光創業家は8月3日、昭和シェル株式を0.1%強を取得したと表明した。
出光興産の昭和シェル株式購入はこれを合わせると 1/3 を超えることとなり、TOBが必要で、出光興産が計画していたShell からの市場外での昭和シェル株式買収ができなくなる。
「両社は企業風土があわず、合併でも買収でもうまくいかない」と主張、「合併に最後まで反対する」として合併断念を迫った。
出光昭介名誉会長は、「異なった経歴の中で成立し働いている人々を、出光大家族の中に加え、同様に面倒を見ていく事に私は非常に危惧の念を抱きます」と統合反対の理由を述べている。
出光興産は、2000年5月、第三者割当により配当優先株式290万株の発行を決め、東海銀行、住友銀行、住友信託銀行、東京海上火災保険、住友生命の各社に割り当てた。
2006年10月24日に東京証券取引所第一部市場に上場した。2006/10/28 出光興産上場
2000年5月に当時の出光昭社長が、外部資本の受け入れを表明、「数年後には上場も検討する」とぶち上げたのに対し、出光昭介会長が真っ向から反対した経緯がある。
この時は、銀行の後押しを受けた社長派が勝利した。
創業家は、出光がシェルからの購入株数を減らして1/3 未満にしようとした場合に昭和シェル株の買い増しも検討しており、「昭和シェルに関する重要事項を伝えられるとインサイダー取引の可能性がある」として、今後は協議に応じないとしている。
創業家側は出光興産の議決権の33.92%を握っており、総会決議で拒否権を持つが、それに加え、新たな抵抗策をとったこととなり、出光興産にとり、一層ハードルが高まった。
昭和シェルとの合併は、出光興産のこれまでの歴史を一変するものであり、それについて経営者側が創業家と十分に話し合ってこなかったツケが出たといえる。
日章興産 * 16.95% 出光文化福祉財団 7.75% 出光美術館 5.00% (小計) (29.70%) 名誉会長 * 1.21% 長男 * 1.51% 次男 * 1.51% 合計 33.92%
付記 創業家側は8月8日、上記*の共同保有の届出を行った。21.18%となる。
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出光経営陣は9月にも市場外で Shell 所有の昭和シェル株 35%のうち 33.3%を1株あたり 1,350円で買い取り、年内にも開く臨時株主総会で出光とシェルの合併の承認を得る計画でいる。
2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ 2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結
しかし、筆頭株主の日章興産などを通じて出光株の33.92%を握っている創業家は昭和シェルとの統合に反対している。
2016/6/29 出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」
出光興産の月岡隆社長と創業家の出光昭介名誉会長が7月11日に会談したが、理解を求めた経営陣に対し、創業家側は反対姿勢を譲らず、平行線のままだった。
このたび、出光昭介名誉会長が市場で昭和シェル株を40万株(発行済み株式の0.1%)を購入した。買い取り価格は4億円弱とみられる。
大株主の創業家は会社の「特別関係者」と見なされるため、出光側の保有割合が3分の1を超えることになり、TOBの義務が生じ、Shell のみから市場外で株を購入することが出来なくなる。TOBの場合、8月3日の終値が939円に対し、Shellとの契約価格は1,350円のため、多数株主が応じるとみられ、買収金額は膨れ上がる。
買取りを断念する場合は多額の違約金を支払う必要が出るとみられる。
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昭和シェルの株式状況は下記の通り。
株主 株数(千株) 持株比率(%) 購入金額
(@1,350)Shell→出光興産 125,261.2 33.24 <1/3 1,691億円 出光昭介(特別関係者?) 400.0 0.11 (小計) (125.661.2) (33.35) >1/3 Shell (Anglo-Saxon Petroleum) 6,784.0 1.80 Aramco 56,380.0 14.96 その他株主 188,025.2 49.89 (2,538億円) 合計 376,850.4 100.00
金融商品取引法(第27条の2)では、下記の場合は公開買付が必要となっている。
①市場外での買付け等で株券等所有割合が5%超となるもの(著しく少数の者からの買付け等を除く)
②市場外での著しく少数の者からの買付行為で株券等所有割合が1/3 超となるもの
特別関係者がある場合にあつては、その株券等所有割合を加算したもの「著しく少数の者」は「61 日間で10 名以内」 (金融商品取引法施行令)
「特別関係者」は、株券等の買付け等を行う者と、株式の所有関係、親族関係その他の政令で定める特別の関係にある者となっている。
政令では、下記の通りとしている。
①株式の所有関係、親族関係その他の特別の関係にある者。
(法人の場合)
―買付者の役員
―買付者が特別資本関係にある法人等及びその役員
―買付者に対して特別資本関係にある個人、法人等、その法人等の役員②買付者との間で、共同して対象株券等の取得・譲渡、議決権その他の権利の行使、買付後の相互の株券等の譲渡・譲受を合意している者
早稲田大学の黒沼教授は、「特別関係者」の規定は、「目的を共有して共に行動することを前提」としており、「合併阻止のために規定を利用することは想定されていない」としている。(日経) しかし、規定では、単に「特別の関係にある者」となっている。
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