マイナス金利の影響

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日本銀行は1月29日、政策委員会・金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。
今後は、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、金融緩和を進めることとした。

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。 (2月16日から)
今後、必要な場合、さらに金利を引き下げるとした。

 

2月3日発表 

金利率
2月残高 年80兆円増
2015年平均残高 210兆円 210兆円 0.1%
これを超えた残高 うち一定割合 40兆円 残り  0%
これを超える分 10兆円 10~30兆円 -0.1%


2016/2/13 マイナス金利の波紋 


導入から半年が経過したが、目的の「2%の物価安定目標の早期実現」の兆しは見えない。


逆に悪影響はいろいろ出ている。

2016/8/13付日経によると、金融庁は日銀のマイナス金利政策の影響を聞き取り調査し、日銀に懸念を伝えた。

 ・ 利ざやの縮小などから、3メガ銀行グループの2017年3月期決算で少なくとも3000億円程度の減益要因になる。

マイナス金利による減益幅 マイナス金利幅拡大ケースの上積み
(金利収入面のみ)
三菱UFJ 1550億円 480億円
三井住友 750億~760億円 410億円
みずほ 610億円 600億円

 ・ 自己資本埋め合わせ対策としての公募増資は踏み切りにくく、リスク資産圧縮は融資先の絞込みに結びつく可能性がある。

 ・ ある銀行では年利0.625%で貸す住宅ローンの採算が割れ、銀行単体で赤字となっていた。

 ・ マイナス金利の長期国債などの変動影響を時価で評価したところ、1年間で自己資本比率が半分に減った保険会社ももあった。


三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は4月14日、都内の講演で日本銀行のマイナス金利政策について、銀行にとっては「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べた。

「銀行はマイナス金利を個人や法人顧客に転嫁できないだろうから、資金利ざやはさらに縮小して基礎体力低下をもたらし」、銀行業界では「体力勝負の持久戦は厳しさを増し長期化することになる」とした。

一方、マイナス金利の経済効果については、欧州の先行例などを示し、既に金利の低い日本で企業や個人の投資を促すかどうかは分からず「残念ながら懸念を増大させる方向に働いてしまっているようだ」、「個人も企業も政策効果に懐疑的になってしまっており、将来に対する不確実性が増すにつれて支出や投資計画を凍結している」と述べた。

平野社長の懸念のとおりとなった。

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三井住友銀行の労働組合は2月23日、物価上昇に弾みがつかない中、マイナス金利などで本業の収益が悪化する懸念が出てきたため、春闘でのベースアップ要求を3年ぶりに見送る方針を固めた。三菱東京UFJ銀行やみずほフィナンシャルグループの労働組合もこれに従った。

2016年春闘は、政府が賃上げを呼びかける「官製春闘」の3年目にあたる。

安倍政権の要請に応えて、経団連は労働組合が求めるベースアップを容認する方針を固めていたが、マイナス金利が足を引っ張る結果となった。

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三菱東京UFJ銀行は7月13日、国債の入札に参加する際の特別な資格である国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)の資格返上を正式に届け出た。財務省は7月15日付けで資格を取り消した。今後は特別参加者の役割を三菱UFJモルガン・スタンレー証券が行い、三菱UFJ銀行も必要に応じて国債の入札には参加する。

外資系では資格返上の例はあるが、日本の金融機関では2004年10月の制度導入以来初のケースとなる。メンバーは国内大手銀行や証券会社など計21社となる。

プライマリーディーラーは、財務省が開催する国債市場特別参加者会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができるが、下記の義務を持つ。

・応札責任:
全ての国債の入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の相応の額を応札すること。

・落札責任:
直近2四半期中の入札で、短期・中期・長期・超長期の各ゾーンについて、発行予定額の一定割合(原則短期ゾーン0.5%、短期以外のゾーンは1%)以上の額の落札を行うこと。

・流通市場における責任:
国債流通市場に十分な流動性を提供すること。

・情報提供:
財務省に対して、国債の取引動向等に関する情報を提供すること。
これまで各銀行は自己資本比率を計算する際に、日本国債のリスクを事実上「ゼロ」と扱っており、貸し倒れリスクのない国債を大量に購入してきた。

三菱UFJの国債保有額は突出している。

2016年3月末
 三菱UFJ  28.3兆円
 みずほ   15.0兆円
 三井住友  9.8兆円

しかし、利回りがマイナスに下がった国債を買い続ければ損失が出る懸念がある。

日経によると、三菱東京UFJ銀行で 「国債の金利変動リスクを自己資本に反映させたらどうなるか」のシミュレーションを行った結果、「どのモデルを使って計算しても国債金利が一律2%上がると自己資本比率は5%程度下がる」という結果が出た。当時の自己資本の3分の1を吹き飛ばすというものであった。

プライマリーディーラーの場合は応札責任、落札責任があり、損失が出る懸念がある国債を買い続けることは株主に説明できない。

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日銀が導入したマイナス金利政策が企業業績に打撃を与えている。

市場金利が低下し、「退職給付債務」が膨らみ、利益を圧迫し始めた。

退職給付債務は国債や優良社債の利回りを参考にして決める「割引率」を使って計算する。市場金利が下がれば運用益が減ることになり、退職給付債務は拡大し、現時点で保有する年金資産を差し引いた積み立て不足は、費用計上する必要がある。

明らかにされた例は下記の通りだが、今後、他社にも拡大する。

大和ハウス工業 2016年3月期に849億円の特別損失を計上
住友林業 2016年3月期に115億円の費用を計上
LIXIL 2016年3月期の営業利益を108億円押し下げ
ダスキン 2017年3月期から5年で50億円の費用計上
四国電力 2017年3月期に166億円の費用計上

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金融庁は銀行救済のため、法令改正を行った。

金融庁は7月7日、「金融商品取引所等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を出した。

金融商品取引所はデリバティブ(金融派生商品)取引時に、決済の不履行に備えて顧客から一定の証拠金を預かっている。
これらはこれまで、銀行等への預金で管理することとなっていた。

しかし、マイナス金利ルールでは、銀行の預金(預かり金)が増加すると、その分は銀行が日銀に金利を支払うことが必要になる。

これを避けるため、金融庁は、金融商品取引所が証拠金を(銀行等以外に)日銀に直接預けられるように法令を改正した。

金融庁はマイナス金利の副作用に対して「助け舟」が必要だと判断した。




  
      
        
      
     

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