日本化学会は8月22日、山本尚・会長(中部大学教授・総合工学研究所長)が、米国化学会が設立し、有機化学の分野で優れた業績をあげた研究者に贈られる Roger Adams賞を受賞したと発表した。
1959年から2年に1度選出するもので、日本では2001年の野依良治・名古屋大学特別教授に続き 2人目となる。
これまでの受賞者29人のうち、11人がノーベル賞を受賞している。
2016年4月にサンフランシスコで授賞式 が行われる。賞金は25千ドル。
山本尚教授は、73歳で、紫綬褒章、フンボルト賞、日本学士院賞、野依賞、藤原賞などを受けている。
1980年代初頭にC2対称軸を持つキラル・ルイス酸触媒を提案・実現した。この触媒は不斉分子性酸触媒の源流となった。
最近では、さらに高選択性を得ることのできる、ルイス酸とブレンステッド酸を組み合わせた複合型酸触媒、ルイス酸の金属中心がキラルとなるシス・ベータ型金属触媒、2つの螺旋を組み合わせたシス・アルファ型鉄触媒の創成に成功している。
一方では、金属に替わる毒性のまったくない強力なスーパー・ブレンステッド酸触媒を開発、それを駆使した3次元分子の1工程合成に成功し、クリーンで省資源型のカスケード型合成法に成功した。
開発した触媒や反応剤は工業的にも日常的に用いられている。例えば、アルミニウム反応剤はプロスタグランディン合成に、アミド化ホウ素触媒はいくつかの医薬品プロセス合成に、バナジウム触媒は工業的規模での不斉酸化に用いられている。
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Roger Adams賞は、アダムス触媒(酸化白金)を開発したRoger Adams (1889-1971) を記念して設立された。
過去の受賞者は下記の通り。
(ノーベル化学賞) | |||
2015 | Larry E. Overman | 米 | |
2013 | David A. Evans | 米 | |
2011 | Robert H. Grubbs | 米 | 2005年 有機合成におけるメタセシス法の開発 |
2009 | Andrew Streitwieser | 米 | |
2007 | Samuel J. Danishefsky | 米 | |
2005 | Jerrold Meinwald | 米 | |
2003 | Albert Eschenmoser | スイス | |
2001 | Ryoji Noyori | 日本 | 2001年 不斉触媒による水素化反応の研究 |
1999 | Dieter Seebach | スイス | |
1997 | K. Barry Sharpless | 米 | 2001年 不斉触媒による酸化反応の研究 |
1995 | Barry M. Trost | 米 | |
1993 | Elias J. Corey | 米 | 1990年 有機合成理論および方法論の開発 |
1991 | Gilbert J. Stork | 米 | |
1989 | George A. Olah | 米 | 1994年 カルボカチオン化学における研究 |
1987 | Jerome A. Berson | 米 | |
1985 | Donald J. Cram | 米 | 1987年 高選択的に構造特異的な相互作用をする分子(クラウン化合物)の開発と応用 |
1983 | Sir Alan R. Battersby | 英 | |
1981 | Nelson J. Leonard | 米 | |
1979 | Melvin S. Newman | 米 | |
1977 | William S. Johnson | 米 | |
1975 | Rolf Huisgen | 独 | |
1973 | Georg Wittig | 独 | 1979年 新しい有機合成法の開発 |
1971 | Herbert C. Brown | 米 | 1979年 新しい有機合成法の開発 |
1969 | Vladimir Prelog | スイス | 1975年 有機分子および有機反応の立体化学的研究 |
1967 | John D. Roberts | 米 | |
1965 | Arthur C. Cope | 米 | |
1963 | Paul D. Bartlett | 米 | |
1961 | Robert B. Woodward | 米 | 1965年 有機合成化学に対する顕著な貢献 |
1959 | Sir Derek H. R. Barton | 英 | 1969年 分子の立体配座概念の確立 |
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