米食品医薬品局(FDA)は9月2日、抗菌作用のあるトリクロサンなど19種類の殺菌剤を含む抗菌石鹸やボディーソープなどを販売禁止にすると発表した。
長期に日常使用した場合の安全性と、通常の石鹸水より殺菌効果があるということをメーカーが証明できなかったとしている。
一部企業は既にこれらの殺菌剤を製品から除外し始めている。
「消費者は抗菌石鹸は細菌の増殖を防ぐのにより効果があると考えがちだが、通常の石鹸と水より有効だという科学的根拠はない」と指摘した。さらに「殺菌剤は長期的に利点よりも有害となりうる可能性があるとの指摘もある」と警告した。
規制対象となったのはトリクロサン、トリクロカルバンなど下記の19種類の殺菌剤を含む石鹸やハンドソープ、ボディーソープなど。
- Cloflucarban
- Fluorosalan
- Hexachlorophene
- Hexylresorcinol
- Iodine complex (ammonium ether sulfate、polyoxyethylene sorbitan monolaurate)
- Iodine complex (phosphate ester of alkylaryloxy polyethylene glycol)
- Nonylphenoxypoly (ethyleneoxy) ethanoliodine
- Poloxamer-iodine complex
- Povidone-iodine 5 to 10 percent
- Undecoylium chloride iodine complex
- Methylbenzethonium chloride
- Phenol (greater than 1.5 percent)
- Phenol (less than 1.5 percent) 16
- Secondary amyltricresols
- Sodium oxychlorosene
- Tribromsalan
- Triclocarban
- Triclosan
- Triple dye
トリクロサンは殺菌効果などをうたう液体抗菌製品の93%に含まれており、2千種以上が販売されているという。
水で使用し、使用後に洗い流すものが対象で、除菌用ローション (Hand sanitizers)や医療の場で使われる殺菌製品には適用されない。
FDAでは、トリクロサン(液体石鹸)、トリクロカルバン(固形石鹸)など殺菌製品に使われる殺菌剤の長期使用で菌への抵抗性やホルモン効果などの健康リスクがあることを示すデータが出たため、2013年にルールを提案し、販売を続ける場合には安全性と有効性の追加データを出すよう求めた。
しかし、メーカーは19種類の殺菌剤についてデータを出すことが出来なかった。他の3種類、Benzalkonium chloride、Benzethonium chloride、Chloroxylenol (PCMX) については、追加データ待ちで1年間だけ使用を認めた。
FDAは通常の石鹸と水による手洗いを推奨しており、石鹸がない環境ではアルコール消毒液(60%以上のアルコールを含むもの)の使用を勧めている。
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欧州でもEuropean Chemicals Agency (ECHA)が2015年6月25日にトリクロサンの使用禁止を決定した。
ホルモンの働きを妨害し、甲状腺や生殖成長、発達機能などに影響を及ぼす可能性があることや、抗生物質が効かない抗生物質耐性菌が生まれているとの研究報告がある。
日本では1990年代に病原性大腸菌O157の被害が広がると抗菌剤に注目が集まり、トリクロサンが配合された薬用せっけんなどが広く使われるようになった。
現在も、トリクロサンやトリクロカルバンを含む製品が多く販売されている。
菅官房長官は9月7日の記者会見で、「日本において同様の成分を含む製品の確認を早急に実施している。この調査結果を踏まえ、厚生労働省の審議会において日本が取るべき措置について検討を行い、速やかに結論を導きたい」と述べた。
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