年金運用、4-6月で5.2兆円 の損失 

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年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)は8月26日、2016年度第1四半期(4-6月)の運用状況を発表した。

運用益は マイナス5兆2342億円で、2015年度第4四半期のマイナス4兆7990億円に続き、2四半期連続の巨額赤字となった。

GRIFでは、赤字の要因として、①中国の景気の悪化、②5月の米雇用統計の想定外の低迷、③英国のEU離脱を問う国民投票を挙げ、それらが重なり株安や円高となったとしている。

6月末の円相場は3月末との比較で主要10通貨全てに対して上昇した。国内株は大幅に下落する一方、日本銀行のマイナス金利政策を受けた国内債の利回りは低下した。
下記の通り、株式比率を大幅に増やしたことが響いた。

株式の赤字の多くは期末時点での時価に基づく評価損であり、全額が実現した損益ではない。
保有している株式については、今後に株価が上がると取り戻せる可能性はある。第1四半期の利子・配当収益は8,342億円であった。

GRIFは、「市場変動による影響について多角的に分析しつつ、長期的な観点から運用を行っており、短期的に市場価格が上下しても年金受給に支障を与えることはありません 」としている。

なお、2015年度通期の運用損益はマイナス 5兆3098億円であった。

市場運用開始(2002年度)以降の累積収益額は、2014年度末では50兆7338億円であったが、2016年度第1四半期末には40兆1898億円に減少した。

第1四半期末での運用資産額は129兆7012億円であった。

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GRIFは2014年10月に運用方法を大幅に見直し 、これまで24%であった株式(国内、外国12%ずつ)を50%(国内、外国25%ずつ)に増やし、株式と債券が半分ずつで国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型 とした。5%だった短期資産は各資産に分散して管理している。

理由は制度を維持できるだけの運用益を確保するため。

今の制度に必要な利回りは1.7%だが、低金利の国債で運用しても目標を達成できない。
また、「全額国債運用なら、1%金利が上昇すれば、(債券価格が下落するので)10兆円の評価損が出る。国債は安全で、株式は危ないという考えがあるが、そうではない」と説明した。

今後、新たな基本ポートフォリオを目標として中長期的に資産配分を調整する。

2013/6/7 2014/6/末

2014/10/31

2016/6/末
基本 上下
変動率
基本 上下
変動率
国内株式 12% 6% 16.79% 25% 9% 21.06%
外国株式 12% 5% 15.54% 25% 8% 21.31%
国内債券 60% 8% 51.91% 35% 10% 39.16%
外国債券 11% 5% 10.76% 15% 4% 12.95%
短期資産 5% 5.00% 5.51%
合計 100% 100% 100% 100%

上下変動率は国内債券が8%から10%、国内株式6%から9%、外国債券5%から4%、外国株式5%から8%に変更された。

新たな目標値に向けた資産構成への変更がほぼ終了した2015年7-9月期に自主運用開始以降で最大の評価損を計上した。

金融市場は昨年末にかけて持ち直したものの、本年に入ると円高・株安が再燃し、再度大幅赤字となった。

2015年 4-6 2兆6489億円
7-9 -7兆8899億円
10-12 4兆7302億円
1-3 -4兆7990億円
2016年 4-6 -5兆2342億円

国内債券は黒字であるが、比率を増やした株式(国内及び外国)が大幅赤字である。


GRIFは「投資は長期で見るもの」としているが、株式比率を上げるとボラティリティが高まることを被保険者に十分に伝えていないことを問題視する意見が多い。

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