フランスの原子力安全局 (ASN) は6月28日、フランスで運転中の58基の加圧水型原子力プラントのうち、9つの原発の18基の蒸気発生器で水室(Channel Head) の機械的強度が想定より低い可能性があると発表した。
これらはArevaのCreusot 工場 と日本鋳鍛鋼(新日本製鐵グループ及び三菱グループの共同出資)が鍛造したもので、機械的強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使われた可能性がある。
2015年4月、建設中のフランスの Flamanville 3号機で、Areva社傘下のCreusot 工場 (Creusot Forge ) が製造した原子炉容器上蓋と下鏡に鋼材組成の異常が見つかり、調査を指示していた。
これを受け、原子力規制委員会は8月24日、国内の実用発電用原子炉の原子炉容器等において炭素濃度の高い領域が残っている可能性がある鋼塊部分を含んだ鍛造鋼の使用の有無等について確認する必要があると判断し、下記の調査対象機器について、製造方法及び製造メーカーを調査し、その結果を報告することを指示した。
加圧水型原子炉:原子炉容器、蒸気発生器、加圧器
沸騰水型原子炉:原子炉圧力容器2016/8/25 原発に強度不足の鋼材使用の可能性
原子力規制委員会は9月2日、電力各社からの報告を発表した。
13基の原発で原子炉容器に日本鋳鍛鋼の鍛造鋼が使用されており、その他、4基の原発で蒸気発生器で使用されていることが分かった。
鍛造鋼の使用が確認された原発については、当該鍛造鋼が規格(JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性について評価し、その結果を10月31日までに報告させ、対応を検討する。
電力会社 | 原発 | 現状 |
原子炉容器 |
蒸気発生器 | ||
上蓋 | 下鏡 | 胴部 | 一次側鏡板 | |||
北海道 | 泊1号 | ○ | ||||
泊2号 | ○ | |||||
東京 | 福島第二 2号 | ○ | ○ | |||
福島第二 4号 | ○ | ○ | ||||
北陸 | 志賀1号 | ○ | ○ | |||
関西 | 高浜2号 | ○ | ||||
高浜3号 | 運転差止 | ○ | ||||
高浜4号 | 運転差止 | ○ | ||||
大飯1号 | ○ | |||||
大飯2号 | ○ | |||||
四国 | 伊方2号 | ○ | ||||
九州 | 玄海2号 | ○ | ||||
玄海3号 | ○ | ○ | ||||
玄海4号 | ○ | ○ | ||||
川内1号 | 営業運転 | ○ | ||||
川内2号 | 営業運転 | ○ | ○ | |||
日本原子力 | 敦賀2号 | ○ | ○ | |||
(基数) |
(13基) |
(他4基) |
フランスでは運転中の18基でこの鋼材が用いられているが、当局は直ちに安全上の問題があるとは判断していない。
日本鋳鍛鋼では、「原子力の分野では特に厳しい仕様を定め、検査で強度も確認しており、現時点で問題はないと認識している。事業者の調査に協力し、原子力規制委員会から要請があれば、いつでも調査を受ける」としている。(産経新聞)
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