三菱化学は9月14日、連結子会社の日本化成を完全子会社化すると発表した。
三菱化学は1960年に日本化成に資本参加し、2013年には三菱商事の持つ同社株を譲り受け、現在、64.88%を出資している。
三角株式交換の方法により、日本化成の他株主に三菱ケミカルホールディングスの株式を割り当てる。
株式交換は2017年1月1日を予定しており、日本化成は本年12月28日に上場停止する。
三菱化学グループの無機化学部門における中核企業としての現在の位置づけを更に発展させ、機能性無機事業をはじめ、グループ内の協奏・インテグレーションをより一層進めていくべく、 検討を行い、従来以上に関係を緊密すると同時に、迅速な意思決定を行うことができる体制を構築することが不可欠であるとの認識を共有するに至った。
三菱化学は8月5日、日本合成化学工業にTOBを実施すると発表している。
2016/8/9 三菱化学、日本合成化学にTOB、最大430億円
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日本化成は1937年に日本水素工業として発足、1939年に小名浜でメタノール、硫酸の製造を開始、その後、アンモニア、硫安、化成肥料などを順次生産した。
1971年に三菱化成、三菱商事などがアンモニア、尿素大型工場建設のため設立した(旧)日本化成を吸収し、日本化成に改称した。
1999年には三菱化学から緩効性化成肥料を全面移管、2004年には三菱化学のアンモニア系製品事業、2005年には合成石英事業を移管した。
現在の日本化成の事業と業績は下記の通り。
2016年3月期実績(百万円)
売上高 営業利益 製品 無機化学品 15,738 392 アンモニア系製品、合成石英粉、電子工業用高純度薬品等
機能化学品・化成品 11,120 381 紫外線硬化性樹脂、ゴム・プラスチック架橋助剤、脂肪酸アマイド、アクリレート、メタノール等
エンジニアリング 4,560 149 貨物運送・荷役 1,163 59 その他 122 19 調整 168 112 合計 32,871 1,112 税引前利益 1,373 当期純利益 895
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完全子会社化の後の体制は下記の通りとなる。
統合後 |
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三菱ケミカルホールディングスの動きは、欧米の企業の動きと異なる。
欧米の大企業は、今後の事業の方向を先ず決め、それに合わせ、買収を行うとともに、自社及び買収企業の不採算事業のみならず、儲かってはいるが将来の成長が見込めない等の事業についても売却したり、スピンオフしている。
2015/12/24 2015年 回顧と展望 再び 「ガラパゴス鎖国」論
Bayerは今回、Monsantoの買収を決めたが、Bayerは2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を Lanxess として、2015年9月にはMaterial Science部門をCovestro として分離独立させ、純粋なLife Science 会社になっている。
それに対し、同社の場合は、集める一方である。三菱樹脂、三菱レイヨン、大陽日酸、日本合成化学、日本化成、・・・ と買収するが、それぞれの企業のどの部門も売却していない。(インドと中国の高純度テレフタル酸事業のように、破綻した事業の売却はあるが 。)
各社の事業全てが成長事業で、同社の将来の事業の方向に合っているとは思えない。今回の日本化成の場合、三菱化学が以前に売却したアンモニア系製品、合成石英が主力製品に含まれている。
企業の規模は大きくなるが、資金効率は悪い。
三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨン3社の統合による三菱ケミカル㈱ 設立時に、方向に合わない事業を放出するであろうか。
なお、三菱ケミカルホールディングスの柱の一つで、利益の大きな源泉である田辺三菱製薬への出資は56.34%のままである。
これこそ100%子会社にすべきだが、2007年10月1日の合併時の約束で、10年間はこの比率を維持することとなっている。
2017年秋に残りを買い取る資金を準備しているのだろうか。
因みに、他株主の株数は245,098千株で、9月15日終値 2,053円で計算すると 5,032億円、2015年下期以降の高値 2,252円(約10%のプレミアムアップ相当)では5,520億円となる。
付記
住友化学の大日本住友製薬も同様で、住友化学の持株は50.12%にとどまっている。
2005年10月1日の合併時に、「議決権の比率を基本的に10年間は50.1%以内に留め、新会社の上場の継続に協力するとともに、公開企業としての長期的な成長を支援する」ことに合意している。
既に10年は経過している。
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