ロッテグループの危機

| コメント(0)

韓国ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長(創業者の次男)は9月20日午前、背任や横領の疑惑に絡む事情聴取を受けるため、ソウル中央地検に出頭した。

約18時間にわたる事情聴取を受けたが、これでロッテグループの裏金疑惑に関する捜査は終結に向かう。

検察は創業者、次男、長男、創業者の内縁の妻、徐美敬氏ら創業者一族を全員起訴する方針とされる。

創業者の長女の辛英子氏は、韓国の化粧品会社などからロッテ免税店への出店を認めるよう頼まれ、リベートとして計30億ウォン(約2億6400万円)を受け取ったほか、辛容疑者が実質的に運営する企業に娘3人を取締役にするなどで約47億ウォンを横領した疑いで起訴され、収監されている。同氏は9月12日、裁判所に保釈を申請した。

朝鮮日報は、辛東彬(重光昭夫)会長が逮捕、起訴された場合、同氏が経営の一線を追われる可能性があると指摘し、その場合、「韓国 5位の財閥が日本の経営陣数人に左右されるという、あきれた状況が現実になるかもしれない」と伝えた。 

ーーー

韓国の検察は6月10日、ロッテグループの幹部が帳簿外の裏金づくりを行った疑いがあるとして、大々的な家宅捜索を行った。


ロッテは李明博前大統領の政権で最も恩恵を受けた企業だとされる。

辛格浩氏の宿願だったソウルの複合商業施設「ロッテワールドモール (第2ロッテワールド)」の認可を受けるために裏金を使って政界に金品を供与した疑いをはじめ、釜山のロッテワールド用地の用途変更やビール事業進出、免税店運営事業の受注など、前政権時代の恩恵に絡む数々の疑惑がある。

2016/6/15 韓国検察、ロッテグループを家宅捜索 

創業者の辛格浩(重光武雄)氏の次男で韓国ロッテグループ会長の辛東彬(重光昭夫)氏と、長男の辛東主(重光宏之)氏との争いの過程で内部資料が検察に流れたとの憶測がある。

2015/8/1 ロッテの内紛、 2015/8/19 ロッテ、次男中心の体制に

調査の過程で、グループ幹部で、辛東彬(重光昭夫)会長の側近の李仁源・副会長兼政策本部長が、出頭を要請された8月26日の朝、自殺しているのが発見された。

2016/8/27 ロッテグループのナンバー2、検察取り調べ前に自殺

ロッテ創業家の 関係図は下記の通りで、これまでに創業者、次男、長男が事情聴取を受けた。創業者の長女の辛英子氏は別件で既に起訴、収監されている。

創業者 辛格浩(重光武雄)氏

ソウル中央地検は9月8日、高齢で病身の創業者の辛格浩総括会長(94)をロッテホテル執務室で事情聴取した。

ロッテグループの巨額の裏金疑惑のほか、脱税疑惑も調べた。

同氏は2005年に、他人名義で保有していた日本のロッテホールディングスの持ち株を 内縁の妻 徐美敬氏と娘の辛ユミ氏に譲渡した際、米国や香港、シンガポールなどに設立したペーパーカンパニーを通じて譲渡し、約 6千億ウォン(約550億円)の贈与税を脱税した疑惑が浮上した。

徐美敬氏は日本在住で、数回にわたる韓国検察の出頭要請に応じておらず、検察は外交部の協力の下、強制帰国のための手続きを進めている。

検察は徐美敬氏が韓国内に所有している全財産を差し押さえた。

地検とは別に、韓国公正取引委員会は9月21日、虚偽資料を提出した疑いでロッテグループの辛格浩(重光武雄)総括会長を検察に告発した。

事実婚関係にある徐美敬氏と娘、辛ユミ氏が株主となっている「ユニプレックス」とユギ開発、ユウォン実業、ユギインターナショナルの4社に関する資料を故意に 提出しなかった。
その結果、4社はロッテグループの系列会社(相互出資制限企業集団)には編入されず、関連規制から逃れていた。

ホテルロッテなど11社の株主である海外16社についてオーナー家とは関係の無い「その他株主」と誤った記載をした。

韓国では資産5兆ウォン以上の「大企業集団」は系列会社の記載や、系列会社に対する株式保有状況について厳しい報告義務があり、虚偽資料提出容疑では、最高1億ウォン(約900万円)の罰金刑が下される。

公取委は、ユニプレックスなど4社を2010年10月1日にさかのぼって、ロッテの系列企業に編入する措置を取った。

ホテルロッテなどグループに属する11社が企業集団現況公示、株式所有現況申告で海外の系列会社16社を「その他株主」と虚偽申告していたことについては、過料5億7300万ウォンと警告の処分を下した。

ロッテ側は、日本の系列企業の状況を十分把握できなかったためで故意ではない、と釈明している。

ーーー

長男 辛東主(重光宏之)氏

韓国検察は9月1日、辛東主(重光宏之) 氏を事情聴取した。2006年から2015年まで、勤務実体がないのにロッテ建設やホテルロッテなど7~8社の取締役を務め、400億ウォン(約36億円)の報酬を受けた横領疑惑。

ーーー

次男 辛東彬(重光昭夫)会長

辛東彬(重光昭夫)会長は9月20日午前、背任や横領の疑惑に絡む事情聴取を受けるため、ソウル中央地検に出頭した。

検察が問題視するのは次の点。

(1)組織的な巨額の裏金作りに関与していた疑い

ロッテ建設がここ10年間に300億ウォン台の裏金をつくった問題で、同氏の直接、間接的な関与があったかどうかを調べた。
グループの司令塔役を担う政策本部の指示や黙認なしにロッテ建設が独自に多額の裏金を作るのは難しく、検察はグループの最高経営陣が裏金作りを進めたとみている。

(2)M&Aの過程で生じた損失を系列会社に押しつけた背任容疑

ホテルロッテのロッテ済州・扶餘リゾートの安値での買収、中国のホームショッピング企業ラッキーパイなどの海外企業の高値でのM&Aで系列会社に損害を与えた。

(3)日本のロッテグループの系列会社に役員として名を連ね、業務の実体がないにもかかわらず、毎年100億ウォン(約9億1千万円)以上の給与を受け取っていた横領容疑

(4)グループ内企業の有償増資に関する不可解な支出や創業家が所有する企業に対する集中的な仕事の発注など

検察は下記の案件に辛東彬(重光昭夫)会長が指示をしたかどうかを調べた。

・資金難に陥ったロッテ PS Net の360億ウォン規模の有償増資を実施し、これに応じたロッテ情報通信、コリアセブン、ロッテドットコムに損害を与えた。

・ロッテケミカルが2008年から昨年まで訴訟詐欺を行ない、270億ウォン台の法人税などの不正還付を受けた件(当時、ロッテケミカルの代表)

同氏の横領、背任の規模は1000億~2000億ウォン台に達するとされる。

これに対し同氏はロッテ建設の帳簿外資金の存在を全く知らなかったと答えるなど、容疑を全面的に否認する趣旨の供述をした。
グループ会社間の資産の移転についても、当時の経営判断によるもので、背任の意図は無かったと話した。

ーーー

付記

ソウル中央地検は9月26日、背任・横領の容疑で、辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長の逮捕状を請求した。
ソウル中央地裁は9月29日、逮捕状請求を棄却した。

ソウル中央地検は9月20日、「国税庁と協議して徐美敬氏が国内に持つ全財産を差し押さえた」と明らかにした。

地検は9月
27日、徐美敬氏を、贈与に絡む税を脱税したとの特定犯罪加重処罰法違反罪で在宅起訴したと発表した。日本に滞在しているとみられ、今後、出廷も拒めば裁判所が拘束手続きを取る可能性がある。

コメントする

月別 アーカイブ