バーナンキ氏、日銀の新政策は「ヘリコプターマネー政策に似ている」 

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米連邦準備制度理事会(FRB)のBen Bernanke 前議長は9月21日 ブログで "The latest from the Bank of Japan" を発表した。

https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/2016/09/21/the-latest-from-the-bank-of-japan/

「黒田総裁は政府の支出を金融で賄ういわゆるヘリコプターマネーには反対を表明したが、国債の金利を無期限にゼロとすることはマネタリーファイナンス(=ヘリコプターマネー)の要素を持つ」と述べている。

ヘリコプターマネー」は、1969年に経済学者のMilton Friedmanが発表した概念で、需要喚起のために国民に対し直接紙幣のばら撒きを行う、という考えである。

2003年に"Ben" Bernankeが日本の需要低迷と物価下落への対策として提案した。

2001年3月からの日銀の量的金融緩和政策は中途半端であり、物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷り続け、さらに日銀が国債を大量に買い上げ、減税財源を引き受けるべきだ。(「日本の金融政策に関する若干の考察」)

紙幣を刷って配る(政府が無利子の永久国債を発行して日銀が引き受ける)ため、実質的に国の債務を増やさずに需要を喚起できる。
但し、カネの価値を暴落させ、ハイパーインフレを招きかねないとされる。

2016/5/9 ヘリコプターマネー

ブログの要旨は次のとおり。

発表された日銀の政策には2つのポイントがある。

一つは、インフレレートが2%を超え、安定してそれ以上に留まるまでは、マネタリーベースの拡大を続けることをコミットしたこと。
2番目は、大きな変化として、10年物国債の利回りを0%にしたこと。

これは、日本のデフレを終わらせるという目標を再確認し、そのための新しいフレームワークを決めたもので、Good News である。
日銀は今後、場合によって、短期利率を下げることも、もっと長期の国債の利回り目標を下げることも出来る。

日銀がデフレとの戦いの放棄を考えているとの市場の推測を打ち消すのに役立ち、建設的である。

最も驚いたことで、興味があることは、10年債の利回りをターゲットにした決定である。

これは good idea だろうか?

一般的にはリスクがある。目標利回りで全ての国債を買い続ける必要がある。
しかし、日本の場合はやっていけるだろう。日銀がすでに大量の国債を買っており、他の国債保有者は理由があって保有している場合が多い。

日銀は日銀の金融緩和と政府の財政政策・構造改革のシナジー効果をうたっているが、黒田総裁はヘリコプターマネーへの反対を表明した。
しかし、国債の金利を無期限にゼロとすることはマネタリーファイナンス(=ヘリコプターマネー)の要素を持つ。

第二次大戦中と大戦直後にFRBは長期国債の利回りをターゲットとした。これは戦争の費用負担を下げるためであった。

日銀が更に長期の国債(日本には40年国債もある)の利回りをターゲットとするなら、ますますヘリコプターマネー的となる。

今のところは日銀は日銀の金融緩和と政府の財政政策・構造改革のシナジー効果で良しとし、明らかな財政・金融協力には反対している。

明らかな財政・金融協力(ヘリコプターマネー)が将来起こるかどうかは、日銀の今回の政策が成功し、決定的に日本のデフレを終息させることができるかどうかによるのだろう。

ーーー

日本銀行は9月21日、3年半にわたる異次元緩和の「総括的な検証」の結果を発表した。

 詳細は、日銀発表の 総裁記者会見要旨

               目で見る金融緩和の「総括的な検証」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

これまでの総括

当初うまく機能し、実施1年後には消費者物価は1.5%(消費税の影響を除くベース)まで上昇した。

ところが、その後、逆風が吹いて実際の物価上昇率が低下し、その結果、予想物価上昇率の上昇も止まり、2%を実現できていない。

  ①2014年夏以降の原油価格の下落と消費税率の引き上げ後の需要の弱さ
  ②2015年夏以降の新興国経済の減速とそれを受けた世界的な金融市場の不安定化

今後の政策 「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」

2%の物価安定の実現のためには、弱含んでしまった「予想物価上昇率」を引き上げる必要がある。
このため、2%の目標に向かう「フォワードルッキングな期待形成」のための方策をとる。

新しい政策枠組みの第一:金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」

「量的・質的金融緩和」は、経済・物価の好転をもたらした。その主たるメカニズムは、実質金利低下の効果。

これを長短金利の操作によって追求する「イールドカーブ・コントロール」を、新たな政策枠組みの中心に据える。

短期金利、および10年物国債金利の操作目標の2つの金利水準を提示する。

今回は、
短期金利:当座預金の政策金利残高に従来通りマイナス0.1%

長期金利:10年物国債金利がおおむね現状程度(0%程度)       

日銀の国債買入れは、買入れ額の「めど」を示したうえで、長期金利の操作方針を実現するように運営する。

現在の「年間80兆円増」は当面の「めど」とする。減少もありうる。

買入対象については、引き続き幅広い銘柄とし、現在の「7年~10年程度 」の平均残存期間の定めは廃止

イールドカーブ・コントロールの手段:

「政策金利残高に対するマイナス金利の適用」と「長期国債の買入れ」

日銀が指定する利回りによる長期国債買い入れ(指し値オペ

固定金利の資金供給オペを行うことができる期間を従来の1年から10年に延長

金利が上昇した場合などには、10年金利、20年金利などを対象とした指値オペを直ちに実施

新しい政策枠組みの第2: 「オーバーシュート型コミットメント」

生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。

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