韓国製洗濯機に対する米国の反ダンピング関税で、韓国のWTO勝訴確定 

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世界貿易機関(WTO)の上訴機関である上級委員会は9月7日、米国が2013年に韓国製洗濯機に課した9~13%の反ダンピング関税がWTO協定に違反するとの判決を下した。
WTO上級委は通商紛争の最終審で、3年以上に及んだ反ダンピング紛争で韓国の勝訴が確定した。

米国は2013年1月、サムスン電子とLG電子が不当に安い価格で洗濯機を輸出したとして、反ダンピング関税を適用し た。

これに対し、韓国政府は同年8月、米国の「ゼロイング」方式と「標的ダンピング」方式 は協定違反としてWTOに提訴した。

「ゼロイング(Zeroing)」は、高値輸出の分はダンピングマージンをゼロと、安値輸出のみで計算することにより、全体のアンチダンピング税率を不当に高くする計算方法。

正常価格 100
輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同
-25)、Cが150(同 -50)の場合
(いずれも同数量とする)

通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = -15.5% ダンピングなし
  

ゼロイング  〔20+0+0〕
/(80+125+150) = 5.6% ダンピングあり

WTOは2007年1月、日本の申立てを認め、米国にゼロイングの撤廃を勧告したが、米国は従わず、WTO の紛争処理上級委員会は2009年8月、小委員会(第1審)の判断を支持し、米国がWTOの是正勧告に従っていないと認定した。日本の「勝訴」が確定し、米国は計算方法の見直しが義務付けられた。

2009/8/20  米の反ダンピング関税調査、WTO違反が確定

米国は依然としてゼロイングを適用し続けたが、2012年2月に、米国は日本とEUに対しては「ゼロイング 」を撤廃することを約束した。

2012/2/8  米が反ダンピング課税で「ゼロイング」廃止 

しかし、韓国に対しては依然として「ゼロイング」を適用し、WTOの協定違反の判定を受け、「ゼロイング」と「標的ダンピング」を合わせる方法を考案した。

「標的ダンピング (Targeted dumping) 」は、輸入された全体物量でなく、特定の時期に特定の地域で販売された物量に対してのみダンピングマージンを計算する方式である。

米国はサムスン、LGが2012年のBlack Friday(11月の第4木曜日の感謝祭の翌日の金曜日のことで、クリスマス商戦の開始の日)に合わせて輸出した洗濯機を標的にした。米国メーカーも値引き販売するが、韓国製だけがダンピング判定を受け た。

2013年8月の韓国政府の提訴を受け、WTO紛争解決機関小委員会は2016年3月、「ゼロイング」+「標的ダンピング 」計算方式が国際協定を違反していると判断した。

しかし、米国は2016年4月に
上訴した。 しかも、WTOの上級委員会の韓国出身の委員の再任を拒否すると愚挙に出た。

WTOの通商紛争解決手続きは二審制で、小委員会(パネル)の調停が一審、上級委員会の調停が二審となる。
7人で構成されたWTO上級委員会は国家間貿易紛争で最終決定を出す「最高裁裁判官」と同じ役割をする。

張勝和・ソウル大法学専門大学院教授は2012年に韓国人では初めてWTO上級委員に選出された。

委員の任期は4年で、一度だけ再任可能となっており、再任にはすべてのWTO紛争解決機構加盟国の同意が必要である。

米国は張勝和委員の再任に反対し、再任は不可能となった。

これに対しては、現在の上級委員全員と、18人の元委員のうち生存している13人全員が抗議声明を出し た。
「米国の行為はWTOの自由貿易体制を危機に陥れ、根幹を揺るがす」とし、「上訴機構の判決と勧告は委員個人でなく上訴機構レベルで出した決定という点を看過した行動」と指摘した。

関係者は「洗濯機紛争は米国のゼロイング慣行を一度に崩す可能性があり、波及力が大きい」とし「もし上訴機構が韓国の手をあげればその後の判決の基準となるだけに、米国の産業界が急いで動いている」と説明した。
しかし、再任反対は、オバマ政権レベルで熟慮した決定ではなく、米通商代表部(USTR)の独断的な突発行動である可能性が高いと見られている。

張勝和の再任は拒否されたが、上級委員会はWTO協定に違反するとの判決を下した。

韓国産業通商資源部関係者は「世界的な保護貿易主義の流れに影響を与える。韓国企業の対米輸出環境が改善する」と述べた。

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