テルモは10月18日、米国のSt. Jude Medical, Inc. と Abbott Laboratories の両社の血管内カテーテル術関連事業の買収に関する基本的な条件に合意したと発表した。
買収額は約 1,120百万ドルで現金払い。
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Abbott は4月28日にSt. Jude Medical を買収する契約を締結したと発表した。買収価額は250億ドル。
St. Jude は売上高が約59億ドルで、ペースメーカーや血管を広げて血流を助けるカテーテル器具など、心血管治療関連の医療器具で業界大手。
同社は「カーディアック・リズム・マネジメント(不整脈疾患の診断及び治療に用いる医療機器)」、「心房細動」、「心臓血管」、および「ニューロ・モジュレーション(慢性疼痛・神経障害)」の4つの分野に注力している。
同社は2015年10月8日に、重症心不全(HF)治療における補助人工心臓技術の世界的リーダーであるThoratec の買収を完了しており、Abbottはこれも含めて入手することとなる。
St. Jude Medical は2015年10月8日、重症心不全(HF)治療における補助人工心臓技術の世界的リーダーであるThoratecの買収を完了した。
正味買収金額は約33億米ドル。この買収により、最も広く使用され大規模試験も行われている左心補助人工心臓のHeartMate II®、次世代機器のHeartMate 3™、HeartMate PHP™、およびその他の補助製品が、St. Jude の心不全製品ラインナップに追加される。
Abbott の医療器具事業は年間売上高が50億ドルで、そのうち30億ドル程度を心血管治療関連が占める。
同社は米国など主要市場で肥満や高齢化により同分野の医療用品の需要が伸びると見ており、St. Jude の買収で品ぞろえを強化する。
Abbott とSt. Judeの統合で止血機器での世界シェアが7割近くに達し、各国の独占禁止法に引っかかる可能性があるため、反トラスト法で問題となる製品の一部を売却するもの。
テルモは両社の合併成立を前提に本買収を行う。
テルモが買収する事業は次の通りで、テルモはSt. Jude Medical の止血機器事業を買収することで、同分野では世界シェアがトップ級になる。
相手先 製品 St. Jude Medical 大腿動脈穿刺部止血デバイス Angio-Seal
(世界シェアNo.1)
縫合糸でつながったアンカーとコラーゲンスポンジにより、穿刺部血管壁の内側からアンカーで、組織側からコラーゲンスポンジを挟み込むことにより止血する。
さらに、コラーゲンが凝固反応を促進し、迅速な止血を行う。
体内に留置するアンカー、コラーゲンスポンジ、縫合糸は60日~90日で生体に吸収される。大腿動脈穿刺部止血デバイス FemoSeal Abbott 心臓用カテーテルイントロデューサーキット
Vado Steerable Sheath
経血管内にカテーテルを挿入する際に、挿入部位を確保するために使用するシースセットカテーテルロック機能がカテーテルをしっかりと固定、カテーテルの長時間留置を可能にする。
Abbott は自社の大腿動脈穿刺部止血デバイス (Perclose ProGlide® Suture-Mediated Closure System、StarClose SE® Vascular Closure System、Prostar® XL Percutaneous Vascular Surgical System など)を引き続き保持し、統合会社で取り扱う。
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テルモは6月12日に、脳動脈瘤治療に用いる新形状塞栓デバイスを開発し、世界で初めて製品化した米国のSequent Medical の全株式を取得するための契約を締結している。
2016/6/16 テルモ、米脳血管医療機器メーカー買収
Abbott Laboratoriesは2014年7月、米国以外の先進国市場におけるBranded Generics事業を米ジェネリック医薬品メーカーのMylan に売却した。
約53億ドル相当のMylan株を受け取るが、早期に売却し、医療機器事業買収や自社株買いなどの資金に充当していく方針。
2014/7/21 MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収
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