Pfizer、会社分割を見送り 

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Pfizerは9月26日、2012年から検討してきた会社分割を見送ると発表した。

検討の結果、現状の姿が将来の株主価値創造に最も適しており、特許で保護された製品を扱うPfizer Innovative Health と、低成長のジェネリック製品を扱うPfizer Essential Health を分割して別々の企業として上場する案を撤回する。

同社の現在の体制は下記の通り。

Pfizer Essential Health Global Established Products (GEP)
Pfizer Innovative Health Global Innovation Products (GIP)
Vaccines Oncology and Consumer healthcare (VOC)

同社は5~6年前から、この2つの事業を1つの会社で運営するよりも、別々の会社で運営するほうがよいのではないかという "Trapped value" 問題を検討してきた。

しかし、検討の結果、現時点で2社に分割しても、収入や競争力を高めず、逆に分離のコストが増え、税務上のメリットも期待できないことから、分割は価値損失の方向であるとの結論に達した。

2つの事業は従来どおり、Pfizerのなかの別の事業として運営される。

この結果、会社分割の場合と同様に
事業の力、効率、資金面でのフレキシビリティを維持し、分離の場合のメリット、即ち、焦点を絞り、責任感を増し、緊急性を意識するということを確保できるとしている。

今後、両事業を業界のリーダーにするとしている。

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Pfizer は2012年にリストラ計画を開始し、基本事業以外を順次売却してきた。

2012年11月にNutrition事業をNestle に11,850百万ドルで売却し、48億ドルの売却益を計上した。

2013年6月にAnimal healthのZoetis 部門をIPOで分離し、103億ドルの税引き後利益を計上した。

それ以前の2011年8月にCapsugel 事業(Hard capsule とDrug-delivery system)をKKRに2,375百万ドルで売却し、約13億ドルの売却益を上げている。

その一方で、基本事業の成長を図るため、事業買収を計画した。(最初の2つのビッグな買収は失敗)

2014年にAstraZenecaの買収を提案した。しかし、AstraZenecaはこれに反対し、下記の問題も発生したため、Phizer は断念した。

Pfizerの経営幹部が、買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」こととした。買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというもので、これに対し米国議会が反発、課税逃れ阻止の法案提出の動きも出てきた。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案

2015年11月にアイルランドに拠点を置く同業のAllergan の合併を決めた。
本社移転による米国の課税回避という目的もあるが、ジェネリックを扱う
Pfizer Essential Healthの事業の強化の目的もあった。

2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収

しかし、米財務省が2016年4月に、税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」をめぐり追加措置を発表したため、本社移転による恩恵がなくなり、買収を撤回した。

2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

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2015年2月にジェネリック注射剤やバイオ後続品を扱うHospira, Inc.を170億ドルで買収した。

2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収 

2016年5月には、アトピー性皮膚炎に有効な新たな非ステロイド系薬のcrisaborole を持つAnacor Pharmaceuticals, Inc.を52億ドルで買収した。

2016年8月にバイオファーマのMedivation, Inc. を140億ドルで買収する契約を締結した。

2016/8/24 Pfizer、Medivation を買収

同じく8月にAstraZeneca から複数の抗感染症薬の権利を最大15億7500万ドルで取得すると発表した。

2016/8/31 Pfizer、AstraZeneca から抗感染症薬買収

今後も、買収により、Innovative Health とEssential Health の両事業の強化を図ると思われる。



同社の歴史については下記参照

2016/6/8 欧米の医薬業界の変遷 -1 

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