米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

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米同時テロに関与した外国政府への損害賠償請求を可能にする法案にオバマ大統領が拒否権を発動したことを受け、米上下院は9月28日、上院は 97対1、下院は 348 対77 の賛成多数で再可決し、拒否権を覆して法案は成立した。


拒否権が覆されるのはオバマ政権下で初めてとなる。

法案提案議員の一人は、「こうした状況下で分かったのは、ホワイトハウスと行政は外交の方がずっと気になっているということだ。われわれは家族や正義の方に関心がある。政権はこの問題について完全に間違っていると思う」と述べた。

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911同時テロではテロ実行犯19人のうち15人がサウジ国籍だった。
同時テロの遺族はサウジ政府を連邦裁判所に提訴したが、外国政府の免責特権を理由に審理されなかった。

このため、同時テロに関与した外国政府への損害賠償請求を可能にする法案「テロ支援者制裁法(Justice Against Sponsors of Terrorism Act (JASTA)」(通称 Sept. 11 lawsuit bill)が提出され、上院は5月17日に全会一致で、下院は9/11 直前の9月9日に賛成多数で可決した。

テロリストグループに関与した疑いのあるサウジアラビアおよびその他の国が、アメリカの裁判所で法的免除を行使することを禁じる内容で、テロリズム支援国以外には法的免除を与えた1976年の外国主権免責法(Foreign Sovereign Immunities ActFSIA)を超越する法案である。Hillary Clinton とDonald Trump の両大統領候補もこれを支持した。

サウジアラビアは、全面的に同時多発テロへの関与を否定しており、法案に激しく反発している。

New York Timesによると、サウジのジュベイル外相は、
裁判で多額の賠償を命じられて在米資産が接収されるのを防ぐためには米国債その他のドル建て資産を売却せざるを得なくなる、と米議会に警告した。法案が成立すれば、サウジは最大で7500億ドルのドル建て資産を手放すことを余儀なくされるという。

米財務省は5月16日、サウジアラビアによる米国債保有額を初めて公表した。それによると、サウジの2016年3月時点の米国債保有は1,168億ドルであった。
(これに対し中国は1兆2000億ドル、日本は1兆1000億ドル台である。)

オバマ大統領は9月23日、サウジアラビアとの関係を損なうおそれがあるなどとして、拒否権を行使した。

しかし、上下両院は28日、それぞれ拒否権を覆すのに必要な「両院で3分の2以上の賛成」をクリアし、圧倒的賛成多数で法案を再可決した。

イラン核合意で悪化した米サウジの関係が、今回の法案成立でさらに深刻化するのは避けられない。

オバマ大統領は、これを「過ち」とし、海外にいる外交官や米兵などは今は国家主権による免責特権で守られているが、今回の法成立を受けて、彼らの行動について外国の市民が米国に法的責任を問うようになるかもしれないと指摘した。

CIA長官は、これにより最も失うのは米国であり、CIA が最大のリスクを負うと述べた。また、サウジはテロ攻撃を防ぐための情報を最も提供している国であり、この法律がテロ対策での米国との関係に悪影響を与えるのは"absolute shame"であると述べた。

国防長官も、外国が仕返しとして米国の免責特権を制限した場合の影響を警告し、アメリカ人が訴訟される可能性や、米軍基地を含めた在外の米国政府の資産へのリスクがあると述べた。

これを受け、 下院議長は「米兵が海外で法的問題を抱えないように修正を検討したい」と述べた。大統領報道官は、「知らなかったというのは言い訳にならない」と皮肉った。

サウジは「強い懸念」を表明、国際規範に反するとして「米議会が是正のための必要な措置を取ることを望む」と強調した。

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