福島原発の費用負担

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既報のとおり、経産省は9月20日、原発費用の負担に関連する二つの委員会の設置を決めた。

 「東京電力改革・1F 問題委員会」 東電の経営問題福島第一原発(1F)の廃炉費用の負担を議論

 「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」 卸電力市場活性化や全国の原発の廃炉費用負担を検討

エネ庁は福島第一の賠償額、廃炉費用、および他の原発の廃炉費用の引当不足分を8.3兆円と見込み、電力自由化で大手電力から新電力に契約を切り替える消費者が増えた場合、原発を持つ電力会社だけでは巨額の費用を賄えなくなる可能性があるとし、この8.3兆円を、全国の送電線の使用料金に上乗せする形で、太陽光発電などすべての電力会社の電力料に上乗せして回収しようという案を考えた。

二つの委員会はこれを検討するものである。化学業界からは前者には小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長、後者には石村和彦・旭硝子会長がメンバーに入っている。

2016/9/21 原発コストを新電力も負担、政府案 


毎日新聞(10月5日付け)によると、電力業界団体の電気事業連合会(電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回ると試算し、国費での負担を政府に非公式に要望していることが分かった。

電事連は、賠償費用のほか、上記のエネ庁案には入っていない除染費用を対象とした。

賠償費用は、東電を含む原子力事業者が負担するが、2013年に想定した5.4兆円に対し、2.6兆円増えて8兆円になると予想する。(エネ庁試算では3兆円増)

除染費用は機構が保有する東電株式の売却益で賄う予定であった。

除染費用は2013年の予想の2.5兆円に対し、4.5兆円増えて7兆円になる見込みで、更に、東電株の下落を受けて、除染費用に充てる将来の売却益も1兆円減ると想定した。

この結果、差引合計で8.1兆円が不足することとなり、これを国庫で負担するよう求めている。

福島第一の廃炉費用については東電負担となっているが、2兆円の想定から大幅に膨らむ見通しで、東電は政府支援を要請している。

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エネ庁と電事連の計算には互いに含まれていないものがある。

エネ庁計算には、除染費用超過分と東電株の値下がりが入っていない。どうする積もりなのか?

電事連の計算には、東電独自のマターである福島第一の廃炉費用と、(公式には自らは言えない)他原発の廃炉費用引当不足分が入っていない。

これを総合すると、エネ庁と電事連と東電が政府支援(=国民負担)を考えているのは、 下記のように 14兆円程度にもなる。

電事連及び東電要請

エネ庁案

金額 不足額 処理 不足額
除染費用 当初 2.5兆円 機構の東電株式売却益
予想 7.0兆円 4.5兆円 (含まず)
東電株売却益 当初 2.5兆円
予想 1.5兆円 1.0兆円 株価値下がり) (含まず)
賠償費用 当初 5.4兆円 電力会社負担金
予想 8.0兆円 2.6兆円 3兆円
不足額合計(国庫負担要請) 8.1兆円 費用増 7.1兆円
収入減 1兆円
福島第一
 廃炉費用
当初 2兆円 東電負担
予想 大幅増 全額? 東電、政府に支援要請 4兆円
他原発
 廃炉費用
1.3兆円
総額 8.3兆円 関東需要家 5.4兆円 180円/月
他需要家   2.9兆円   60円/月
エネ庁案に電事連の除染費用増、東電株売却益減を加算(5.5兆円) 13.8兆円


原発は「安全」で、「コストは一番安い」として推進してきた筈である。


付記

河野太郎衆院議員の「ごまめの歯ぎしり」(2016/10/6) によると、9月末の時点で、東電に対して求償された金額は1兆80億円となっているが、そのうち東電が支払ったのは4874億円、48%にすぎないという。この他に各省が求償する国有財産の除染費用が別途ある。

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