台湾の蔡英文政権は2025年に「原発ゼロ」にすることを決めた。
行政院(内閣)は10月20日、再生エネルギー事業への民間参画を促す電気事業法の改正案を閣議決定した。
太陽光と風力発電を中心に再生エネの割合を20%まで高めることを目標とするもので、近く立法院で審議に入り、年内の可決を目指す。
蔡総統は「改正は原発ゼロを進め、電源構成を転換する決意を示すもの」と述べた。
台湾には4原発・8基があり、うち第四原発は完成後も住民の反対で稼動していない。
第一、第二原発は人口密集地の台湾北部にあり、台北中心部から23~28kmの距離にある。
第四原発は今後も稼動せず、残り6基についても40年稼動期間の延長をせず、期間満了で停止する。このため、2025年5月に原発ゼロとなる。
出力(net) | 発電開始 | 40年 | 現状 | ||||
第一原発 (金山発電所) |
1号 | BWR | 604MW | 1978/12 | 2018/12 | 停止中 | 2014/12の定期検査で不具合発覚 |
2号 | BWR | 604MW | 1979/7 | 2019/7 | 稼動中 | ||
第二原発 (国聖発電所) |
1号 | BWR | 948 MW | 1981/12 | 2021/12 | 稼動中 | |
2号 | BWR | 948 MW | 1983/3 | 2023/3 | 停止中 | ||
第三原発 (馬鞍山発電所) |
1号 | PWR | 919 MW | 1984/7 | 2024/7 | 停止中 | 定期検査 |
2号 | PWR | 922 MW | 1985/5 | 2025/5 | 稼動中 | ||
第四原発 (龍門発電所) |
1号 | ABWR | 1300 MW |
住民反対で未稼働 |
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2号 | ABWR | 1300 MW |
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台湾も日本と同様に地震が多い。
2000年3月、反原発を主張する民進党の陳水扁が総統選挙に勝利を納め、政権交代が行われた。
台湾の原子力情勢は一変し、既設原子力発電所の廃炉、工事中の第四原子力発電所の中止、「非核家園(原発のない故郷)」の立法等、一連の脱原子力方針が打ち出された。
2008年の総統戦では民進党の謝長廷が敗北し、国民党の馬英九が総統になった。
しかし2011年3月11日の福島第一原発事故で安全性への不安が高まり、反対運動が激化した。
第四原発の稼働を目指していた馬英九政権は2014年に凍結決定に追い込まれた。
(2014年4月27日、5万人のデモ隊が台北駅前の8車線道路を15時間占拠し、稼働を阻止した。)
馬政権は第四原発を廃炉にはせず、将来的に稼働させる選択肢を残していた。
2016年1月の総統選で、民心党の蔡英文主席が大差で当選した。
蔡女史は2012年の総統選に立候補後、「2025年までに原発全廃」を目指す目標を表明、民進党結党以来の党是の一つである「脱原発」を鮮明に打ち出してい た。
付記
安井至氏は 「市民のための環境学ガイド」 2016/10/29 「台湾、2025年原発離脱」で次のように述べている。
このような政策は、2025年に不可能とは言えませんが、問題はそれ以後でして、それが解決可能かどうか、と言われれば、相当な覚悟と予算と電力料金の値上げが必要なのではないか、という結論になりそうです。
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2010年の台湾の電源構成は下記の通りとなっている。(GWh)
水力 7,255 2.94% 石炭 123,289 49.91% 石油 9,462 3.83% 天然ガス 60,787 24.61% 原子力 41,629 16.85% 風力 1,028 0.42% 2014年は1,490GWh 太陽光 21 0.0084% 2014年は 510GWh バイオマス 540 0.22% 廃棄物 3,036 1.23% 合計 247,045 100% RIST 「台湾の電力事情、発電計画、原子力発電」から
全原発が稼働を終えて原発ゼロとなるまでの時間は9年しかなく、電力の安定供給や計画の現実性への課題は多く、計画実現をめぐり内外から厳しい目が向けられている。
台湾で電力問題を所管する李世光・経済部長は次のように述べている。
2025年までに既存の原発をすべて停止させる一方で再生エネルギーを推進し、原発ゼロとすることを明確な目標に掲げた。
再生エネは太陽光と洋上風力発電を柱とする。
太陽光発電は技術的にも成熟してきた。パネルは生産過剰で価格が下がっており、台湾には逆にチャンスだ。
台湾海峡は強い季節風が吹き、風力も有望だ。
ただ、前政権が力を入れていなかったので台湾には自己技術がない。日本との協力にも期待している。再生エネは安定したベースロード電源とは言えないが、違う種類の再生エネを組み合わせることでベースロード電源に近いものにし、蓄電や節電にも力を入れていく 。
海風を利用し、台湾で最も早く風力発電を始めた台湾海峡の離島、澎湖諸島の陳光復知事は、「澎湖はグリーンエネルギーを本島に供給する重要な電源になる」 と述べた。
澎湖は現在、人口約10万人分の約15%を供給、2025年までに、太陽光も加えた発電能力を増強して再生エネ供給率を100%とし、余剰分は海底ケーブルで約60キロ離れた台湾本島に送電する計画 。
澎湖には現在風力発電所が数箇所あるが、そのうち、中屯風車には600キロワットの風力発電機が8基あり、観光地にもなっている。
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