武田薬品、Valeant Pharmaceuticalsの胃腸薬事業買収を交渉 

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Wall Street Journal は11月1日、カナダの製薬大手Valeant Pharmaceuticals International が多額の債務を軽減するため、胃腸薬事業のSalix Pharmaceutical を武田薬品工業に約100億ドルで売却する交渉を行っていると報じた。

Valeant はSalixに限定せずに第三者といろいろな売却の交渉をしていると述べた。

この報道を受け、武田は11月2日、下記の発表を行った。

当社は、当社の事業成長を加速するために、重点領域(消化器系疾患領域、オンコロジー、中枢神経系疾患領域およびワクチン)を中心とした様々な戦略オプションを常時、検討しております。当社は、重点領域において、常に複数の相手先との案件について交渉を行っていますが、現時点で開示すべき合意事案はありません。

Salix Pharmaceuticalは、Valeantが1年半前に111億ドルの現金(負債込みで158億ドル)で全株を買い取った。

Valeantは2015年2月22日に101億ドルの現金(借入金込みで145億ドル)での買収に合意した。

しかし、アイルランドの医薬会社Endo International plcが3月11日、112億ドルの現金と株式で 全株を買い取る提案を行った。

このため、Valeantは3月16日に、上記の新しい条件での買収で Salix Pharmaceuticals と合意した。

Salixは胃腸病薬の市場のリーダーで、有名な処方薬4種を含め合計22種類の薬を保有する。米国の胃疾患治療薬市場(GI市場)は50億ドル規模で、年間5%拡大しているが、Salixの売り上げの伸びはこの市場成長ペースを上回っている。



Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していたが、
この買収によってValeantの債務は310億ドルへと2倍前後に膨らみ、また、米国での医薬品値上げで監督当局や政治家から監視の対象となり、苦境に陥った。

Valeant Pharmaceuticals が2種類の心疾患治療薬を大幅に値上げしたことをめぐり、米議会下院の監視・政府改革委員会の民主党委員らが問題視した。

ValeantはMarathon Pharmaceuticals から2種類の心疾患治療薬(特許切れだがジェネリック品無し)を買収したが、即日、大幅値上げした。

2016/8/30 Mylanの医薬品 EpiPenの値上げに対する批判 後半

株価も暴落している。

Valeantは本年4月25日にライバルのアイルランドの製薬大手 Perrigo Co. のCEOのJoseph Papaを会長・CEOとして迎えることを決めた。
Valeant は再建対策の一つとしてコアでない資産の売却も検討している。

Wall Street Journal (5月26日付)によると、本年春に武田薬品と投資会社TPGから共同でのValeant 買収提案があったという。

武田薬品の狙いは旅行者下痢症やIBS(過敏性腸症候群)のような胃疾患薬を扱う Salix Pharmaceuticalsではないかとみられた。
Salix のIBS薬の Xifaxanに期待しており、本年の売上高を10億ドルとみている。

同紙によると、武田薬品も2015年のSalixの争奪戦に参加していたとされる。

この経緯からみて、今回の買収交渉は決して驚くものではない。

 
  Valeant について

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦 
2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収
2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦
2015/8/26 Valeant Pharmaceuticals、女性用バイアグラの Sprout Pharmaceuticalsを買収
2016/5/30 武田薬品、カナダのValeant Pharmaceuticalsに買収を提案、拒否される

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武田薬品は2008年4月に、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticals, Inc.を約88億ドルで買収することを発表した。
同社は5月9日、91.9%の応募を受け、本TOBが成立したと発表した。

癌領域におけるリーディングカンパニーで、癌領域および炎症疾患領域において有望なパイプラインを保有する。

2011年5月19日、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed A/S を買収すると発表した。
買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(約1.1兆円)

同年9月30日に買収を完了し、同日をもって100%子会社とした。

2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収 

2014年6月にGlaxoSmithKline 出身のChristophe Weber を代表取締役社長とし、翌年CEOになった。

同社は消化器系疾患領域、オンコロジー(癌)、中枢神経系疾患領域の3分野(+ワクチン)を重点領域とし、これらの分野に経営資源を投じるため、事業の選択と集中を進めている。

2015年12月16日、呼吸器系疾患領域事業をAstraZenecaに5億7500万ドルで売却することで合意した。

2015/12/22 AstraZeneca、買収による事業拡大 

2015年11月30日、後発薬世界最大手のイスラエルのTeva Pharmaceutical と、日本で両社によるジェネリック医薬品の合弁会社を設立する基本合意契約を締結した。

武田薬品は長期収載品事業を分割し、ジェネリック医薬品事業を営む大正薬品に承継、大正薬品は武田テバ薬品と改称する。

2015/12/28 武田薬品とTeva Pharmaceutical の日本の合弁会社の概要 

武田薬品は子会社で試薬大手の和光純薬工業の売却を決めていたが、11月3日の日経は富士フィルムが2000億円規模で買収する方向で最終調整に入ったと報じた。

1922年に当時の武田長兵衞商店から分離して武田化学薬品とし、1947年に和光純薬工業と改称した。
武田薬品が69.43%、富士フイルムが 9.51% を出資する。

ES細胞やiPS細胞の培養につかう試薬など有望技術を持つ。

富士フィルムと日立化成、Carlyle Groupが応札していた。


今回の多額での買収はこの選択と集中の一環である。



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