福島第一原発の処理費用 21.5兆円

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経済産業省は12月9日、東京電力の経営再建策を検討する有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」 で、福島第1原発の廃炉や損害賠償・除染などの事故費用が、現状の約11兆円の予想からほぼ倍増し、21.5兆円になるとの試算を公表した。これらの費用を確保するために、東電に原子力や送配電事業の再編・統合を求め、収益力を高めることを明記した。

福島第1原発事故の処理費用の見積もりと、その負担案は下記の通り。(単位:兆円)

従来

今回

負担

増加理由 東電 他電力 新電力
廃炉 2.0 8.0 燃料デブリ取り出し 2.0→8.0
賠償 5.4 7.9 営業損害、風評被害
新たな賠償項目
2.7→3.9 2.7→3.7 0→0.24
除染 2.5 4.0 工事費などの増加 2.5→4.0
中間貯蔵 1.1 1.6 1.1→1.6
合計 11.0 21.5 7.2→15.9 2.7→3.7 0→0.24 1.1→1.6

1) 廃炉費用  東電負担

管理型積立金(東電がコスト削減などによって捻出した資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構機構に積み立て)

2) 賠償費用

当初案 東電を含む原子力事業者が負担

東電がコスト削減などによって捻出した資金を機構に積み

今回案 新電力も負担

増加分は2.4兆円で、経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」ものの不足分で、大手から新電力に移行した消費者も含め「過去分」の負担金を請求する。

この分を2020年から40年間、新電力も支払う送電線使用料(託送料)に上乗せし、上乗せ額は電気料金に転嫁される。

新電力負担分を1/10の 0.24兆円とした。40年回収とすれば、年額60億円で、託送料金0.07円/kWh(一般標準家庭で18円/月)となる。

この案には自民党内からも費用の上ぶれなどを懸念する声が出た。このため、経産省は12月12日、託送料に上乗せする上限を2.4兆円にする方針を明らかにした。新電力負担上限は0.24兆円となる。

賠償額がさらに増える場合は従来の負担方法で対応する。

3) 除染費用  東電の株式売却益で充当する。

東電の収益力を拡大し、将来の株式売却益を増やす。

現状年間 0.4兆円の利益を、0.5兆円に。(送配電コスト改革)
更に柏崎刈羽原発 2基再稼動で、0.1兆円

国は1兆円で株式取得、腰を据えて売却益4億円を実現

中部電力との共同発電会社(JRRA)による既存火力も含めた統合
送配電事業の共同事業体設立(共同調達、火力調整電源の共同運用、連系線の共同投資、デジタル化対応、海外展開)
原子力事業の共同事業体設立(共同調達、安全防災の共同投資、廃炉の事業化、海外展開)

付記

政府は12月20日、福島の帰還困難地域に限り、除染をインフラ整備などの公共事業と位置づけ、国が負担することを決めた。3~5千億円を見込む。

4) 中間貯蔵 電源開発促進税を充てる


なお、経産省は12月12日、上記の処理費用のなかに、帰還困難区域の復興拠点の整備費用や、炉内の燃料デブリ取り出し後に生じる廃棄物の処分費が含まれていないことを明らかにした。総額が21.5兆円から更に増加することが確実である。

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河野太郎衆院議員の「ごまめの歯ぎしり  河野太郎の国会日記」(2016/12/7) は、原発ゼロの会(8党・会派及び無所属の衆参国会議員78名が参加、共同代表:自民党の河野太郎と民進党の近藤昭一) 役員の談話 「東電賠償・廃炉費用、老朽炉廃炉費用の託送料金上乗せについて」を掲載している。


「電 力システム改革貫徹のための政策小委員会」と「東京電力 改革・1F問題委員会」で議論が進んでいる。

国民的議論はもちろん国会の関与も一切ないままに原則を歪めた国 民負担増大案がまとめられるのであれば言語道断である。これまでに提 案されている託送料金上乗せ案には根拠がないか飛躍した 論理が用いられており、そもそも議論の前提となる数字等も十分に公開 されていない。

原発ゼロの会は各種費用の託送料金上乗せに反対するとともに、「原発の後始末費用」については原則に立ち返るべきであると強く主張する。

■ポイント
【総論】
1. 既に東電賠償・廃炉費用は国民負担に転嫁されはじめている
2. 東電債務超過回避のために費用見積りを隠すべきではない
3. 老朽炉の廃炉関係費用の見積りを明らかにすべき

【東電賠償・廃炉費用について】
4. 原賠機構一般負担金「過去分」はあり得ない
5. 「使用済燃料再処理等既発電費」の前例を悪用すべきではない
6. 1F廃炉費用の託送料金上乗せの根拠がない
7. 1Fへの廃炉会計制度(廃止措置資産)適用には歯止めがない
8. 東電破綻処理、株主・貸し手責任の完遂が前提

【老朽炉の廃炉費用について】
9. 「安全神話」の反省がない
10. ベースロード電源市場とのバーターにすべきではない
11. 廃炉促進の特別法で分割償却を担保すべき
12. 託送料金上乗せは電力会社に不当な損益改善効果
13. 会計制度を歪めるべきではない
14. 「原発は安い」というコスト計算に意味はない


「そもそも、事故リスクを過小評価し、事故費用の備えを怠ったどころか、 リスクに備えると原発が危険だと思われる恐れがあり、また投資に金が嵩 むことから、賠償費用の備えをせず安全投資も抑えた国及び電力会社 の甘い判断の問題である。『安全神話』を流布させてきた責任を棚に上 げ、賠償の原資不足を電気利用者全員で負担しろと言うような、事故検 証と断絶した費用負担論は認められない。」

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