米、中国の「市場経済国」認定見送り 

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米政府は11月23日、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」と認定しない方針を明らかにした。


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中国は2001年12月にWTOに加盟した。

その際、中国以外のWTO加盟国が、中国産品についてAD 措置又は相殺措置に係る調査を行う際の価格比較及び補助金額の算定に関し、中国を「非市場経済国 (Non Market Economy)」として扱う特例が、加盟後15年間認められた。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国で、すべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能な価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める」と規定している。

この結果、「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

これまでにロシア、ブラジル、ニュージーランド、スイス、オーストラリアなど81国(2016/2時点)が中国の市場経済国家の地位を認めた。
しかし、米、EU、日本、カナダなどの多くの国々や地域は未だに承認していない。

中国は、中国を「非市場経済国」とする根拠となっている条項は15年が経過する2016年12月11日に失効するため、自動的に「市場経済国」へ移行すると主張している。

2016/2/12 中国の「市場経済国」認定問題

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プリツカー米商務長官は11月23日の記者会見で、「市場経済国への移行は機が熟していない」と述べた。

中国は15年の経過で移行するとしているが、長官は、「WTO協定は中国が市場経済国に自動的に移行するとは定めていない」と主張した。
そのうえで、移行の条件は法律で決めれれた6つの基準に従って決めるとし、「現時点では機が熟していない」とした。

米国では、1930年関税法第771条(18)(B)で、ある国が非市場経済国であるかどうかを判断する基準が次のように決められている。

 1)どの程度当該国の通貨が他国通貨と交換可能であるか、
 2)どの程度労使間交渉により賃金水準が決まっているのか、
 3)どの程度外資による投資が認められているか、
 4)どの程度政府が生産手段を統制するのか、
 5)政府による資源配分、価格、および生産決定に対する統制はあるのか、
 6)その他当局が適切であると考える要因

鉄鋼製品など中国の安値輸出に歯止めをかける狙いがある。

中国は過剰生産設備の解消が遅れ、鉄鋼などのダンピングが世界的に問題視されている。

中国が「市場経済国」になれば、ダンピングの判断は中国の輸出価格が中国国内の価格に比べて安い場合となる。
しかし、国内の設備過剰により鉄鋼製品の国内価格が国際価格よりも大幅に安いため、輸出価格が第三国の国内価格より安くてもダンピングとみなされないこととなる。

中国国内価格 中国輸出価格 第三国国内価格
非市場経済国の場合:

ダンピング認定可

市場経済国の場合:

ダンピングでない

これに対し、中国外務省は 「中国が市場経済を発展させた成果は世界が認めている」と強調した。

トランプ次期大統領は大統領選中、「為替操作国である中国からの輸入品に45%の関税を課す」と主張してきた。当選後はこの件に触れていないが、中国には危機感が強い。

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EUは2月2日、中国をWTO協定上の「市場経済国」と認めるかどうかの協議を始めた。


欧州議会は5月に中国の「市場経済国」としての扱いに反対するとの決議を採択し、欧州委員会に対して本件についての適切な措置を提案するよう求めた。

欧州委員会は7月20日、中国を12月以降に「市場経済国」として扱う 場合、どのような政治的、経済的及び法的な影響がもたらされるかを中心に、3つの選択肢について審議したと発表した。

 ①中国を「非市場経済国」としているEUの現行法制を維持する 。
 ②中国を「非市場経済国」のリストから外し、ダンピングの認定手続き等について通常の方式を適用する。
 ③WTO加盟国としてのEUの国際的な義務を履行する一方で、貿易上の防御制度を抜本的に見直し、新たな方式によりダンピング問題等に対処する 。

審議の結果、欧州委員会はWTOの法的な枠組みの下でのEUの国際的な義務を尊重するとともに、現在の実態 :特に、現存する鉄鋼製品等の過剰生産問題:に対処することができる新たな貿易上の防御手段を備える必要があるとの点で意見が一致した。

WTO上の義務に違反して中国から損害賠償を求められるおそれのある事態を回避し、同時に「市場経済国」として認定することによってもたらされると考えられる安値競争に対抗できなくなるという事態をも回避するために、EU域内での新たな通商上の救済措置を策定することを選択したこととな る。

カタイネン欧州委員会副委員長(雇用、成長、投資及び競争政策担当)は、今回の審議は中国が「市場経済国」であるかどうかについて行ったわけではなく、過剰生産能力という実態、さらには変貌しつつある国際的な法的枠組みに対処する上でEUの貿易防御手段をこれにどう適合させるかについて行ったものであると述べてい る。

また、マルムストロム通商担当委員は、市場の歪みに対処するための効果的な通商上の貿易手段が今後必要になるとし、新たな経済の実態に適合し、臨機に活用することのできるツールを確保することが必要であると述べ た。

欧州委員会は11月9日、輸入製品が不当にEU域内で安く販売された場合に適用する、反ダンピング課税の算出に関する制度改正案をまとめた。
鉄鋼の過剰生産などで域内企業を脅かす中国を念頭に、WTOルールとの整合性を保ちつつ、制度の実効性を確保するのが狙い。

まず、輸入品のダンピング判定に関しては、中国を含む15カ国を指定している非市場経済国のカテゴリーの廃止を提案する。

一方で、国家介入によりゆがめられていると見なされる市場を有する国に対し、反ダンピング税算出の特別な公式を策定することを目指している。
これにより中国製品への反ダンピング税は現行水準で維持できることとなり、域内の経済成長や雇用に障害となる安い中国製品の大量流入の可能性に対する産業界の懸念と政治的懸念の双方に対処できる。

これに対し中国は、EUが中国の「市場経済国」としての地位を完全には認めていないことに政府は失望していると述べた。

EUの提案は、 中国が「非市場経済国」であるとの認定を取り下げるものだとみなすが、欧州委員会が「著しいゆがみ」が生じた場合の条項を盛り込んだことに失望していると述べた。

「現状をひそかに維持することを許容したに過ぎない」と述べ 、新しい基準は「公正で合理的かつ、透明性を持つべきであり、新しい形で差別を行うものであってはならない」と主張した。

日本は外交関係も考慮して市場経済国か否かを明確にせず、事実上は非市場経済国としての対応を取るものとみられる。

付記 経済産業省は12月8日、中国のWTOでの立場について、引き続き「市場経済国」と認定しないことを決めたと発表した。

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