日ロ経済協力

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12月16日の 日ロ首脳会談にあわせて、8項目の経済協力プランに沿って、両国の企業の間でエネルギー分野を中心に当初の見込みの2倍近い68件のプロジェクトの覚書などが交わされた。

政府関係者によると、日本側の総額は約 3000億円規模となる見通しだという。

8項目の経済協力プラン:

(1)健康寿命の伸長
(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り
(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大
(4)エネルギー
(5)ロシアの産業多様化・生産性向上
(6)極東の産業振興・輸出基地化
(7)先端技術協力
(8)人的交流の抜本的拡大

主な内容は次の通り。

エネルギー関連:

1) Gazprom 下記の契約を締結

① 三井物産

Sakhalin II 拡張、LNG bunkering (船舶へのLNG燃料供給)を含む戦略的協力協定

② 三菱商事

Sakhalin II LNG plantの第3系列追加を含むLNG部門での協力についての戦略的協力協定
また、現在のLNG計画に限らず、いろいろな事業分野での協力拡大も。

(三菱商事発表)
これまでの両社の信頼関係をさらに発展させ、エネルギー事業分野での協業のみならず、資機材調達など幅広い分野を対象に、更なる協業を検討

 国際協力銀行(JBIC)

日本企業が参加する Gazpromの計画への資金確保の原則の覚書


参考 Sakhalin II
プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%→12.5%
・三菱商事 20%→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出  

2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

2) Rosneft と 丸紅、国際石油開発帝石、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

ロシア・サハリン島南西海域における炭化水素の共同での探査・開発及び生産に係る協力基本合意

経済産業省資源エネルギー庁が所有する物理探査船「資源」を本海域の一部において活用することや、JOGMECの「知見活用型構造調査」のスキームを活用することも検討。

地質調査や探鉱を進め、2020年代後半以降の本格生産開始を目指す。サハリン北東部のSakhalin II と並ぶ大型のLNG事業に育つ可能性がある。

日本勢は最終的に上流権益への出資比率を3分の1程度確保したい考え。


3) 丸紅、三菱重工、Rosneft

極東でのワールドクラスのガス化学設備建設のFS実施の協力協定

4) 丸紅、Novatek(ロシア民間最大のガス生産販売会社)

石油ガス分野での協力を目的とした覚書を締結。

Novatekがロシア北極圏ギダン半島にて計画する新規の北極 LNG-2プロジェクトの上中流開発、LNG 取引及び輸送、ガス関連インフラの開発、石油製品取引に関する協業機会を検討する。

5) 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) とイルクーツク石油 (Irkutsk Oil)

東シベリア地域における新たな共同探鉱事業創設、油ガス田の生産性向上に資する共同スタディ実施等に向けた覚書

JOGMECは、2003年1月の日露首脳会談で採択された「日露行動計画」、その後2007年6月の日露首脳会談での「極東・東シベリア地域での日露間協力強化に関するイニシアティブ」に基づき、極東・東シベリア地域における探鉱促進による我が国への石油供給源の多様化ならびに日露民間企業の協力促進の一環として、2007年からINKと共同で地質構造調査事業を実施した。

これまでの探鉱作業により、複数鉱区で原油・ガスを確認しており、一部鉱区での発見油田については、テスト生産を経て、現在、開発・生産段階への移行をロシア当局に申請中であり、2016年末までの承認取得を見込んでい る。

今回、隣接地域に連携を広げる。

Irkutsk Oil は、イルクーツク州で最大の上流開発会社で、主な事業は原油・コンデンセートの生産販売。イルクーツク州およびサハ共和国(ヤクーチア)を中心に23の探鉱・生産ライセンスを保有。

6) 日揮

サハリン州政府と超小型 LNG の事業可能性を探る調査に向けて覚書を交わす。
年産12千トンの液化設備をサハリン東部に設け、LNGを同州西部に運んで家庭や産業向けに供給する。
ガスパイプラインの設置が難しい地域もあり、液化して輸送することで、これまでディーゼルや石炭だったエネルギー源を多様化する。


極東地域の産業振興:

1) 双日、日本空港ビルデング、海外交通・都市開発事業支援機構、ロシア連邦ハバロフスク空港会社

ロシア連邦極東地域に所在するハバロフスク国際空港において新旅客ターミナル整備運営事業を共同で実施するための協議を更に推進することを確認した。

2) 北海道銀行などが出資する「北海道総合商事」や、野菜の栽培施設の建設などを手がける「ホッコウ」

極東のサハ共和国の首都ヤクーツクに 1000平方メートルの温室ハウスを建設し、9月からトマトの試験栽培に取り組んできたが、事業化のメドが立ったことから、今の30倍あまりにあたる3.2 ヘクタールのハウスを新たに建設することで合意した 。

医療・健康分野:

1) 三井物産

① ロシアの食糧大手 Rusargo と資本・業務提携をめざす覚書を交わす。出資額は数十億円とみられる。

Rusagro は穀物や食用油、畜産を手がけ、2015年度の売上高は約1400億円 で、ロンドン証券取引所に上場している。

経営ノウハウや日本の農業技術をRusagro に提供し、アジアやロシア国内での販売拡大を後押しする。既に出資するロシアの食用油と穀物を扱う企業との相乗効果も探る。

② ロシアの製薬大手R-Pharm に出資したうえで医薬品の販路拡大などで提携

R-Pharm はインドなどの製薬会社からライセンス供与を受けた医薬品を製造する。

三井物産は150億~200億円を投じて株式の約10%を取得する見通しで、提携によって医薬品の種類を増やし、海外の販路も開拓する。

なお、富士フイルムは、12月14日、ロシア有数の製薬企業であるR-Pharm JSCと、ヘルスケア領域を中心に包括的な事業提携を進めることで合意したと発表した。

先端技術の分野:

1) 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、Ruselectronics(ロシア最大級の国営企業 Rostecの子会社)

リチウム資源開発に関する覚書を締結。

Ruselectronicsのリチウム回収技術を用いて塩湖からリチウムを回収する事業について、JOGMECが日本企業との橋渡し役を務める内容。

2) 富士通、ロシアのソフトウェア大手アビーなど

AI (人工知能) を使った文書管理のシステム開発で協力

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