Trump 次期大統領、米空調大手のメキシコ移転阻止

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米航空機エンジン・機械大手 United Technologies 傘下の空調大手 Carrier は11月30日、メキシコに移転予定だったインディアナ州のIndianapolis 工場の1,000人の雇用を維持することで、Trump 次期大統領と Pence 次期副大統領(同州知事)と合意したと発表した。

Carrier は2016年2月にメキシコ移転を発表した。Indianapolis 工場は閉鎖とな る。移転は2017年に始まり、2019年に完了、約1,400人の雇用が犠牲になる。

Trump 氏はCarrierが2月のメキシコへの生産移転を発表した直後からこれを批判しており、最近も同社の名前をあげて移転を阻止する方針を明らかにしていた。

しかし、会社側は計画を進め、7月には労働組合が退職条件で会社側と合意している。

大統領選挙での勝利を受け、Trump氏はCarrier の親会社のUnited Technologies のGregory Hayes CEOに電話し、計画取り止めを求めた。CEOがメキシコに新工場を建設済みだと反論したのに対し、「貸すか、売るか、壊すかしろ。知ったことか」と応えたという。

インディアナ州知事でもあるPence 次期副大統領とHayes CEOが水面下で交渉した。

今回の合意に伴い、インディアナ州はCarrierに10年間で700万ドルの助成金を支給する。

具体的には以下の通り。

The Indiana Economic Development Corp. (インディアナ経済開発公社)は Carrierに対し、平均時給 30.91ドルで 1,069人の雇用を維持する条件で、

1)  年50万ドルの税額控除を10年間行う。(計500万ドル)

2)  従業員訓練費用の補助金として100万ドルを支払う。

3) Carrierが同工場に将来投資をすることを条件に100万ドルの税額控除を行う。

Carrierはこの取り決めで、工場の従業員1400人中 800人前後と本社の開発・ 管理要員など 300人前後の雇用を継続する。

United TechnologiesのCEOは、Indianapolis 工場を維持するため2年間で1600万ドル以上を投資すると表明している。

合計でも1年当たり70万ドルの助成で、工場移転で想定していたコスト削減効果のごく一部に 過ぎない。

米メディアによると、Carrier はメキシコでの平均賃金を日給11ドルと見込んでおり、30.91ドルとは大きな開きがある。
1,069人をメキシコに移す場合の人件費の差は年間 45百万ドルに達する。

親会社のUnited Technologies は子会社にジェットエンジン製造のPratt & Whitney を持つ防衛関連のコントラクターで、連邦政府向けの売上高は全体の約10%の56億ドルもある。連邦政府はまた、同社に15億ドルの研究開発費を払っている。

メディアでは同社とTrump 次期大統領との間でなんらかの約束があるのではないかと見ている。

United Technologiesが軍用機事業で政府側の取引停止など報復を恐れたとの報道もある。
Trump次期大統領はUnited TechnologiesのCEOに対し、メキシコ移転で失業する従業員の多くを救済する道を探さなければ、次期政権の怒りを買うと警告していた。

同社は「Trump - Pence 次期政権がビジネス社会を支え、国内ビジネス環境の改善と競争力強化を進める方針を力説したため、今日の合意に至った」と表明した。

Trump次期大統領は12月1日に同工場を訪問した際、他の企業へのメッセージとして、生産を海外に移す企業が製品を米国に輸入する際、その製品に厳しい関税を課するとの誓約を実行する積もりだと 述べた。「我々は米国の労働者を守らねばならないということをCorporate America は理解する必要がある」と述べた。

12月4日のツイッターでは海外移転企業の米国への輸入品に35%を課税すると述べた。

また、NAFTAは「全くの災害」と批判し、「それは変わるだろう」と見直しの必要性を改めて示唆した。

Ronald Trump は10月下旬に、大統領に選ばれた場合の公約 "Donald Trump's Contract With The American Voter" を発表している。
その中で、米国の労働者保護のため、7つのアクションを行うとし、「TPPからの撤退宣言」と「米・加・メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA) の再交渉又は撤退の意思を発表」などを挙げている

2016/11/11 トランプの公約 

今回、Carrier はメキシコに雇用を移す予定であった1400人のうち、800人をIndianapolis 工場に残すが、残り600人分の雇用をメキシコ工場に移す。Carrier は更に、インディアナ州Huntingtonの工場を閉鎖し、700人分の雇用をメキシコに移す予定である。

United TechnologiesはCarrier のほかに Pratt & Whitney(ジェットエンジン)やOtis (エレベーター)を持ち、20万人を雇用するが、そのうち米国での雇用は1/3に過ぎない。

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米国の資本主義はルールと法をベースにする。

Carrierに関しては、次期大統領は飴と鞭を使って自分の望むようにやらせた。

Reagan 大統領の空港管制官ストライキへの対応は小さな行動だったが大きな影響を与えた。今回のことも小さなことだが、そうなるのではなかろうか。

大統領が、国民が何を求めているか見当をつけ、それを国民に与えるよう企業に圧力をかけるのが良いことだという原則が確立されつつある。

中国が自分の意思をどんどんと課している香港のように、我々は、ルールに基づく資本主義(rule of law capitalism)からその場しのぎの合意に基づく資本主義 (ad hoc deal-based capitalism) への逆行の第一歩を踏み出したのかも知れない。

大統領は大きな権限を持つ。しかし、その使用を制限するのが、我々と独裁国 (banana republics ) との重要な違いの一つだ。

もし、企業が大統領の望む場所に工場をつくり、大統領の再選の選挙資金を寄付し、大統領が望む人を雇用し、大統領が望む研究開発を行い、大統領が支援したい人に金を貸すなら、どうなるか?

私が間違っていることを望むが、結果として我々がより貧しくなるだけでなく、より不自由になると考える。

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