Bayer-Monsanto、合併承認を条件に米国での投資と雇用増を約束 

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Trump次期大統領(当時)は1月12日、New YorkでBayer のCEOのWerner Baumann、MonsantoのCEO の Hugh Grant と会談を行った。

両社は合併を決めているが、米国の農民団体などはTrump氏に対し、競争が減り、種子や農薬の価格が上がるとして合併を認めないよう求めていた。

会談当日は、Bayerは、「農業の将来やイノベーションの必要性についての生産的な会談であった」とのみ発表した。

Bayer-Monsanto の合併もDow Chemical - DuPontの合併もまだ承認されておらず、Trumpが指名する司法省反トラスト局と連邦取引委員会(Federal Trade Commission)のトップが決めることとなる。
承認はされるとみられるが、いくつかの製品群を売却する必要があると思われる。


しかし、BayerとMonsanto両社のCEOがTrump次期大統領に対し、合併が承認された場合に米国での80億ドルの投資と数千人の新しい雇用を約束していたことが1月17日に判明した。

Trump氏のスポークスマンによると、BayerのCEOは、合併が承認された場合、Monsantoの本社を今まで通り St. Louisに置くとともに、3000人を追加雇用すると約束した。

BayerとMonsantoも次の共同声明を発表した。

両社のCEOはTrump 次期大統領とそのチームとの間で農業の将来とイノベーションの必要性について建設的な会談を行った。

両社の合併を行うのは、イノベーションを増やし、加速することで、世界の農民が気候変動や食料安全保障のような問題に対応するのを助けるためである。

米国は農業での世界のリーダーであり、両社の合併はこの役割を確実にする。

合併後の会社は今後6年間で農業分野でのR&Dに約160億ドルを投資する予定で、少なくともその半分は米国で投資する。数千人の高所得のハイテク職を新しく雇用し、米国を農業革新の最先端に置き、米国の農民によりよい製品とサービスをもっと早く供給する。

遺伝、ロボット、衛星写真分析、技師、データ処理、先進飼育、統計など、これらのハイテク職は農業におけるイノベーションを推し進める。


これに対し、合併に反対する農民団体などからは懸念の声が出ている。

米国第二の農民団体のThe National Farmers Union は会談が新政権による合併承認につながるなら問題だとの発表を行った。

合併には他の諸国の承認も必要である。

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Trump 大統領のモットーのMAGA(Make America Great Again)と twitter による米国の雇用の追加要求を受け、各社が米国での雇用増のPRをしている。

下記がその例の一部。
枠内はtwitter で、外国(特にメキシコ)生産を批判し、米国での投資・雇用増には称賛と感謝を表している。

ソフトバンクグループの孫正義社長は12月6日、Trump 次期米大統領とニューヨークの Trump Tower で45分間会談し、米国のスタートアップ企業などに500億ドルを投資し、5万人の雇用を生みだすと約束した。

"Masa (SoftBank) of Japan has agreed to invest $50 billion in the U.S. toward businesses and 50,000 new jobs....

Masa said he would never do this had we (Trump) not won the election! "

2016/12/7  ソフトバンク孫社長、米に500億ドル投資 

米航空機エンジン・機械大手 United Technologies 傘下の空調大手 Carrier は11月30日、メキシコに移転予定だったインディアナ州のIndianapolis 工場の1,000人の雇用を維持することで、Trump 次期大統領と Pence 次期副大統領(同州知事)と合意したと発表した。

"Trump is already delivering the jobs he promised America"

引用している記事では、Trump氏と会談した孫正義氏のソフトバンク傘下のSprintが5,000人、出資を決めた衛星通信ベンチャーのOneWeb が3,000人の雇用増を行うこと、Carrierの移転阻止で1,000人の雇用が維持されることを報じている。

2016/12/6 Trump 次期大統領、米空調大手のメキシコ移転阻止

Ford は2016年4月5日、メキシコのSan Luis Potosi に小型車の工場を新設すると発表した。Trump氏は当時、これを「全くの恥」と呼び、「私が大統領になったら、こうした雇用をつぶすばかげた取引を認めるつもりはない」と表明した。

Ford はその後もメキシコの工場への移管を進めたが、本年1月3日、メキシコでの工場新設をとりやめ、代わりに米ミシガン州 Flat Rock工場で7億ドルを投じて電気自動車と自動運転車をつくると発表した。700人を雇用する。

"Ford to scrap Mexico plant, invest in Michigan due to Trump policies"

"Thank you to Ford for scrapping a new plant in Mexico and creating 700 new jobs in the U.S. This is just the beginning - much more to follow "

2017/1/5 米フォード、メキシコ工場建設を中止 

Trump氏は同時に、GMがChevy Cruzeをメキシコで生産し、無関税で米国に輸入しているとし、米国で生産するか、高関税をはらうかどちらかだと脅かした。

"General Motors is sending Mexican made model of Chevy Cruze to U.S. car dealers-tax free across border. Make in U.S.A. or pay big border tax!"

これに対しては、GMは「米国で売られているChevrolet Cruze のセダンはすべてオハイオ州の Lordstownで生産されている。メキシコでは海外向けのChevrolet Cruzeのハッチバックを生産しており、米国ではごく少量が販売されているに過ぎない」と述べ、メキシコ計画を進めるとした。

しかし、GMは1月17日、米国の工場に10億ドルを追加投資すること、サプライヤーがメキシコで生産していた車軸をミシガン州で生産すること、キイとなる成長分野で5000人以上を雇用することを発表した。
これとは別にWalmartも雇用増を発表した。

"Thank you to General Motors and Walmart for starting the big jobs push back into the U.S.!"

トヨタの豊田社長は1月5日の経済3団体の新年祝賀パーティーで、メキシコ新工場について、「工場建設はひとたび決めた以上は雇用と地域への責任がある。現地に行く以上はそこで貢献したい。決断はしっかりやりながら、動き出してからは粘り強くやる」と述べ、現時点で見直す予定はないという考えを示した。

その直後に、Trump次期大統領は twitterでトヨタのメキシコを取り上げた。米国に工場をつくるか、それとも多額の国境税を払えとする。

"Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S.
NO WAY!
Build plant in U.S. or pay big border tax."

これを受け、トヨタ自動車は1月9日、今後5年間で米国に100億ドル(約1兆1600億円)を投資すると発表した。デトロイトで同日開幕した北米国際自動車ショーの会場で、豊田章男社長が記者会見を開いて明らかにした。

豊田社長は米国で13万6000人を雇用し、過去60年間で220億ドルを投資したと説明した。100億ドルの新たな投資の使途に言及しなかった。雇用増についても触れていない。

Trump氏はトヨタの発表に対しては、何もつぶやいていない。 雇用増を約束しなかったためではないかと言われている。


付記

トヨタは4月10日、1月公表の「今後5年間の米国内での100億ドル投資計画」の一つとして、ケンタッキー工場の刷新に13.3億ドルを投資すると発表した。

大統領のtwitter

"Toyota's decision to invest $1.3 billion in their Kentucky plant is further evidence that manufacturers are now confident that the economic climate has greatly improved under my administration and echoes the recent National Association of Manufacturers' 2017 Outlook Survey showing that 93% of manufacturers are now optimistic, which is an increase of 37% from just a few months ago."

付記

トヨタは2017年8月に
マツダと共同で米国に新工場を建設することを発表し、メキシコ新工場で生産するはずだったカローラは米国の新工場に移管する方針を示した。カローラは米国で集中的に生産することで効率を高める。

メキシコ新工場ではピックアップトラックのタコマを生産する計画に変更した。当初はカローラを年間20万台生産する予定であったが、タコマ10万台とし、投資額も10億ドルから7億ドルに3割減らす。


Fiat Chrysler Automobiles は1月8日、ミシガン州とオハイオ州の工場の設備増強のため計10億ドルを投じ、約2000人を追加で雇用すると発表した。「米市場で進む大型車への需要シフトに対応するため」としている。

ミシガン州Warren工場の設備を3年かけて入れ替え、ジープ2種を新たに生産する。また大型ピックアップのRamの生産をメキシコから移す。 オハイオ州Toledo 工場を近代化し、新しいピックアップトラックを生産する。

同社では、国と地方政府からの補助金支給をこれらの投資の前提条件としている。

"It's finally happening - Fiat Chrysler just announced plans to invest $1 BILLION in Michigan and Ohio plants, adding 2000 jobs. This after... 
Ford said last week that it will expand in Michigan and U.S. instead of building a BILLION dollar plant in Mexico. Thank you Ford & Fiat C! "


そして、大統領就任後のtwitter

"We will follow two simple rules: BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN! " 

"We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth - and we will bring back our dreams! "


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付記

鴻海精密工業の郭台銘董事長は1月22日、液晶パネル工場を米国に新設する検討に入ったと表明した。投資額は70億ドルを超えるとされる。

ソフトバンクの孫社長が2016年12月6日にTrump 次期大統領とともに記者団の前に現れた際、写真の紙を示した。

次の4年に米国に500億ドル+70億ドルを投資し、米国に50千人+50千人の雇用を生むとなっており、Softbank に加え、Foxconn鴻海精密工業)の社名が示されている。

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