ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず 

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朴槿恵大統領が絡む疑惑と親友の崔順実被告の国政介入事件を調べている韓国の特別検察官の捜査チームは1月16日、贈賄などの容疑でサムスングループの事実上のトップ、李在鎔サムスン電子副会長の逮捕状を請求した。

逮捕には裁判所の許可が必要である。

ソウル中央地裁は1月19日、特別検察官チームによる李在鎔副会長に対する贈賄や横領、偽証容疑の逮捕状の請求を棄却した。

判事は「現段階で逮捕の事由や必要性を認定するのは難しい」と発表。理由として「賄賂犯罪の要件となる対価関係、不正な請託などに対する現在までの証明の程度や、各種支援経緯に関する具体的事実関係とその法律的評価をめぐり争いの余地がある」と指摘した。

特別検察官チームは在宅起訴を検討するとみられる。

韓国ロッテグループの不透明な株取引を巡る昨年の捜査でも、検察は背任などの容疑で辛東彬(重光昭夫)会長の逮捕状を請求したが、裁判所は発付を認めなかった。

2016/10/3 ロッテ会長の逮捕状請求棄却と高高度防衛ミサイル(THAAD)配置 

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サムスンは2015年8月に崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した。
2015年10月と2016年1月には崔被告のめいのチャン・シホ氏が設立した韓国冬季スポーツ英才センターにも16億2800万ウォンを後援した。
崔被告が設立に深くかかわった文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」に204億ウォンを拠出した。

支援を約束したものまで含めると総額430億ウォン(約41億3600万円)に上る。

特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した 。

これに対しサムスングループはコメントを発表し、「特別検察官の決定は理解しがたい。副会長が対価を望んで支援したことは決してない。崔順実被告に対する支援とミル財団・Kスポーツ財団への支援金は、朴大統領の強要により仕方なく出したものだ。とりわけ、合併や経営権の継承と関連して不正な請託があったとする特別検察官の主張は受け入れがたい。裁判所の正しい判断を信じている」として、裁判所が、特別検察官側の逮捕状の請求を認めないことに期待を示した。

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Samsung Group の持株会社 第一毛織(Cheil Industries Inc.) が2014年12月18日に上場した。

上場は創業家の事業継承の一環で、「李在鎔・電子副会長らは上場で得た資金を、病床にある父親の李健熙・電子会長の資産を引き継ぐ際の相続税か、系列会社の株式の買い増しに使うのではないか」と見られている。

李健熙会長は、三星生命の20.76%、三星電子の20.76%を保有しており、李在鎔副会長がこれを相続すれば、相続税は約7兆ウォン(約7千億円)とされる。

第一毛織は旧称 三星エバーランドで、レジャー関連事業(ソウル南方の龍仁市にあるテーマパーク、三星エバーランドを運営)などの事業を行うが、事実上のサムスングループの持ち株会社としての性格も持つ。

2013年9月に旧 第一毛織からファッション事業部を買収した。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 

2015年7月18日の臨時株主総会で、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) の合併を決めた。これにより、財閥の中心の三星電子に対する李一族の支配権が強化される。

ヘッジファンドのElliot Managementなどが反対したが、
国民年金公団などの賛成で承認した。 賛成は69%強で、必要な2/3にギリギリであった。

サムスン物産の株式 7.12%を保有しているElliot Managementは、過度に不利な割合でも合併案を可決するサムスン物産を理解しがたいと述べた。

議決権の諮問機関であるISS(Institutional Shareholds Service)とGlass Lewis、韓国企業支配構造員なども相次いで合併比率がサムスン物産に不利だと国民年金に反対を勧告した。

サムスン側は合併実現に必死で、サムスン物産は自社株を親密企業に売却し、追加の議決権を作り出した。また賛成票を確保するための緊急対応チームを設け、株主訪問をさせた。

2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T)が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) とな り、Samsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。

李一族 → サムスン物産(Samsung C&T) → 三星生命 → 三星電子

この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがある。

国民年金基金運用委員会が投資委員会を開き、合併に賛成することに決定した過程を記録した議事録が出て疑惑が増幅された。

この合併に対する疑惑は下記の通り。

国民年金が、サムスン物産・第一毛織間の合併比率1対0.35 (サムスン物産1株を第一毛織 0.35株で交換)が不利という点を明確に認識しながら合併に賛成した。

国民年金リサーチチーム長は、「私たちが算出した両社の適正価値に基づいて合併比率をを見ると1対0.46で、サムスンが提示した合併比率はサムスン物産に多少不利だ」と認めた。

サムスンが出した合併比率を適用すれば、国民年金が独自に算出した適正比率より3468億ウォン損害を被ることを知りながらも合併に賛成した。

国民年金の資料では、第一毛織の終値18万ウォンを基準に国民年金が保有したサムスン物産と第一毛織株式の総価値を計算すると、サムスンが提示した合併比率(1対0.35)では、2兆2799億ウォン、適正合併比率(1対0.46)では 2兆6267億ウォンとなる。

③ 国民年金にとって合併比率が不利にもかかわらず、賛成の理由として、合併のシナジー効果が2兆ウォン以上あり、合併比率の差による損失を相殺するとした。

   しかし、これは国民年金が独自判断で合併シナジー効果を算出したのではなく、サムスンの発表をそのままコピーしただけ。

④ ヘッジファンドのElliot Managementが合併反対の立場を表明した後、国民年金が急に合併に賛成したのは、大統領府と政府の圧力のためではないか。

この 議事録によると、正式参加者の中ではリスク管理センター長、運用戦略室長、海外証券室長が、サムスンが提示した合併比率の不公正性、合併後シナジー効果の不確実性などを理由に最後まで反対したが、基金運用本部長は議論が明確に整理していないのに表決を強行し、出席者12人のうち8人の賛成で決定した。

ハンファ証券は合併に否定的な報告書を二度出し、サムスン物産株式を持った国内の50あまりの機関投資家の中で唯一、株主総会で合併に反対した。
社長はその後、グループのトップからの圧力で退職を余儀なくされた。

その元社長の発言。

サムスンは、副会長一家の持分が多い第一毛織に有利に合併を実現させるため、サムスン物産の実績をわざと悪くして株価を低下させた。

外国の機関投資家らは大部分反対したが、国内の機関投資家たちもファンド加入投資者たちに損だということを知りながら、共に合併に賛成した。
金融会社としては、サムスンが最大顧客であり、サムスンが全方位ロビーを行った。

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