SADAFはサウジのAl-Jubail地区にエチレン(年産110万トン)とエタノール(30万トン)、SM(110万トン)、MTBE(70万トン)、電解(ソーダ 67万トン)、EDC(84万トン)の6つのプラントを持つ。
SADAFは1980年設立だが、2020年(設立40年)でJV契約が切れ、SABICが契約を更新するか、終了してShell 持ち分を購入し100%子会社にするかの権利を有しており、この期限が来る前にShellが離脱することとなる。
SABICは、SADAFを100%子会社化することにより、SADAFの事業を最適化し、更なる投資をするとともに、他のSABICの関係会社との統合を図る。
Al-Jubailには、日本のサウディ石油化学との50/50JVのSHARQ、ExxonMobil との50/50JVのKEMYA、SABIC 100%子会社のPetrokemya、SABIC 70%出資のIbn Zahrがある。
SHARQは1981年、KEMYAは1979年に設立されており、SADAFと同様のJV契約と考えられ、40年後にSABICが持ち分を買収する可能性がある。
一方、Shellは50/50JVのSADAFを手放すことで自社のダウンストリームの活動に集中し、グローバルな石化事業の成長を支えるため戦略的投資を行うとしている。
Shellでは、「サウジでの最初の石化JVの一つが成長したのを誇りに思っており、将来のSABICとの協力の機会を引き続き探す」としている。
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サウジでは油田で燃やされていた石油随伴ガスを貴重な原料として石油化学を興すことを決め、1975年に石油化学基地として2つの工業都市の建設が決められた。
1つは油田に近いペルシャ湾岸のAl-Jubail、もう1つは紅海沿岸のYanbu である。
1976年9月にサウジ基礎産業公社 (SABIC)が設立された。
石油化学計画実施のため、ガス収集システムと両工業都市を結んで原油とガスを送るパイプラインが建設された。
計画の遂行に当たり、サウジ政府は海外の石化メーカーに参加してもらい、50%出資と技術供与、従業員の教育を依頼するという戦略を決め、シェル、モービル、ダウ、エクソン、三菱グループ、三菱ガス化学等と交渉を始めた。
当初は各社ともサウジでの石化事業に前向きではなかったが、サウジ政府は1973年10月に始まった石油ショックを利用して、参加企業にインセンティブ・オイルを出すとの条件を出した。
これは当時は公示価格では入手できない原油を、公示価格で一定量を15年間供給するというものであった。(結果的には成約後数年して、他国から公示価格以下で入手できることとなり、メリットがなくなり、各社とも権利を放棄した。)
各社はこの条件を呑んで計画に参加し、以下のSABIC 50%出資(Petrokemyaは100%)で次のJVが設立された。
相手 | ||
Al-Jubail | SHARQ (Eastern Petrochemical) |
サウディ石油化学 |
KEMYA (Al-Jubail Petrochemical ) |
Exxon | |
PETROKEMYA (Arabian Petrochemical) |
(SABIC 100%) | |
SADAF (Saudi Petrochemical) |
Pecten Arabian (Shell) | |
AR-RAZI (Saudi Methanol) |
三菱ガス化学ほか日本側 | |
IBN SINA (National Methanol) |
Hoechst-Celanese、Pan Energy | |
Yanbu | YANPET (Saudi-Yanbu Petrochemical) |
ExxonMobil |
2006/3/30 サウジアラビアの石油化学の歴史
現在の Al-Jubail 地区の石化事業は下記の通り。
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Shellは2015年4月に英の天然ガス生産大手の BGグループの買収を完了したが、その後、事業の再編成を行っている。
ShellとQatar Petroleum とは2011年12月4日にカタールのRas Laffan Industrial Cityでのワールドスケールの石油化学コンプレックス計画のHeads of Agreement を締結したが、2015年1月14日、建設費が高過ぎるとして計画中止を発表した。
2011/12/14 Qatar Petroleum とShell、カタールの石化計画でHeads of Agreement を締結
Shell はAbu Dhabi National Oil Company (ADNOC) とのJV(Shell 40%) でアブダビでBab サワーガス(硫黄分を含む天然ガス)の開発を計画していたが、2016年1月に市況軟化と建設コスト高を理由に撤退を決めた。
ShellとSaudi Aramco は2016年3月16日、両社の米国のJVのMotiva Enterprises LLCの資産を分離する覚書を締結したと発表した。
それぞれが独自の下流事業の目的に向け動くときだとしている。
2016/3/25 Shell とAramco、米国のJVのMotivaを分離
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