Trump大統領、原油パイプライン建設へ大統領令

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Trump大統領は1月24日、これまで米政府が承認していなかったカナダからの原油パイプライン Keystone XL Pipeline と Dakota Access Pipeline の建設を推進する大統領令に署名した。

Keystone XLの建設を再申請するよう企業に促すとともに、Dakota Access についても承認の手続きを進めるよう省庁に指示した。

建設によって「2万8千人の雇用を生む」としたほか、地方の税収が向上することでインフラ投資の財源となると指摘、エネルギー安全保障の強化にもつながるとしている。

更に、「パイプラインは米国が造る。鉄鋼業の労働者が仕事に戻れる」と述べ、今後、米国でのパイプラインの建設や補修には米国製品を可能な限り使うよう求める大統領令にも署名し、商務長官に具体策の検討を指示した。

ホワイトハウスは大統領が就任演説で宣言した "BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN!"の一環と説明している。

大統領はツイッターで、"Signing orders to move forward with the construction of the Keystone XL and Dakota Access pipelines in the Oval Office" と述べている。

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TransCanadaが建設計画中のKeystone XL Pipelineは、カナダのOil sandを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、Keystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。

問題になっているのは、Phase 4 で、ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。
ネブラスカ州の責任者や住民はSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表していた。

オバマ米大統領は2015年11月6日、カナダと米メキシコ湾をつなぐ原油パイプライン Keystone XLの建設計画について、環境に悪影響を与える懸念から却下したと発表した。

2015/11/11 オバマ米大統領、Keystone XL パイプライン建設計画を却下

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Dakota Access Pipeline は石油パイプライン会社Energy Transfer Partnersがノースダコタ州のシェールオイル・バッケン鉱区からイリノイ州までをつなぐ1,172マイルのパイプラインを建設するプロジェクトで、ノースダコタ州の建設ルート近くの居留地に住む米国先住民スタンディングロック・スー族は、水源のミズーリ川が汚染されることを懸念し抗議デモを続けた。

抗議活動が勢いを増し、およそ2000人の退役軍人もデモ参加者を支援することを検討した。

これについて、米国陸軍省は2016年12月4日、水源となるミズーリ川をせき止めたダム湖「オアヒ湖」の地下にパイプラインを通す工事を認可しないと発表した。

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トランプ新政権は1月20日正午の就任演説の直後に、ホワイトハウスのホームページ上でエネルギーや通商など6項目の政策方針を発表した。

その第一が「America First のエネルギー計画」で、以下の通り。

エネルギーは米国人の生活と世界経済にとって必須のものである。政権は米国人のコストを下げ、米国の資源を最大に利用し、海外の石油への依存から解放する。

余りにも長期間、エネルギー産業への重い規制に苦しめられてきた。大統領はClimate Action Planのような有害で不要な政策を取りやめる。

健全なエネルギー政策はまず、米国には膨大な未開発のエネルギー源があることの認識から始まる。50兆ドルと推定されるシェール、原油、天然ガスを活用せねばならない。それらからの収入で道路や、学校や、橋や公共インフラを建設する。安いエネルギーは米国の農業にも貢献する。

トランプ政権はクリーンな石炭技術にもコミットし、長く傷つけられていた米国の石炭産業を復活させる。

国内のエネルギー生産は安全保障にも役立つ。大統領は、OPECカルテルや敵対する国からのエネルギーの独立達成にコミットする。

エネルギー確保は、環境保護と歩調を合わせる。EPAに空気と水を守るというミッションに注力させる。

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Trump大統領は1月20日の就任後、直ちに最初の大統領令でオバマケア撤廃に向け、各省庁に現行制度による経済的負担を軽減するよう指示し、1月22日には、メキシコ、カナダとそれぞれ開く首脳会談で北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始めると表明、1月23日には大統領令で、TPPから永久に離脱することを明らかにした。

矢継ぎ早に、オバマ政権の政策を覆している。



付記

新政権はホワイトハウスのWebサイトから"気候変動"(climate change)と"地球温暖化"(global warming)の言葉をすべて消した。
気候変動に関するページ http://www.whitehouse.gov/energy/climate-change も、完全に削除された。

トランプ米政権は、環境保護局(EPA)に対し、気候変動に関するページを同局のウェブサイトから削除するよう指示した。
ページには、地球温暖化に関する科学的な研究へのリンクや、温暖化ガス排出に関する詳細なデータも含まれている。25日にも削除される可能性があるという。

日本時間1月26日11時時点では まだ掲載されている。
   https://www.epa.gov/climatechange

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