UMNファーマにより付与された全ての権利を同社に返還、ASP7374の製造販売承認申請を取り下げ、ASP7373の開発を中止 する。
本件に関わるその他の無形資産の減損損失40億円を計上する予定。
UMNファーマは Unmet Medical Needs を満たす薬剤を開発する創薬ベンチャーとして2004年に設立された。
米国 Protein Sciences Corp.が開発したBEVS (Baculovirus Expression Vector System) 技術のインフルエンザに関する日本での独占的ライセンス契約を2006年8月に締結している。
これは、人体に影響がないとされるウイルスに標的遺伝子情報を組み込んだ後、既存ワクチンのように鶏卵を使用するのではなく、昆虫細胞に感染させて目的タンパク質を大量に製造する技術で、UMNファーマはヨトウガ由来の細胞株を用い、UMN-0501、UMN-0502を製造する。
技術導入元であるProtein Sciences Corporationが米国で2013年1月にFDAから承認を取得し、季節性組換えインフルエンザHA ワクチンFlublok®(UMN-0502 と同薬)を販売している。
2013 年1月に、FDA より Flublok®3価製剤について、18 歳から49 歳までを対象として承認を取得し販売を開始、2014 年10 月には50 歳以上についても接種対象となっている。
2016年10月には、主流となりつつある4価インフルエンザワクチンについて、18 歳以上を対象として製造販売承認を取得した。
Flublok®(4価)は、50 歳以上の年齢層を対象とした9,000 例規模の臨床試験において、Flublok®(4価)を接種した群が、既承認孵化鶏卵不活化ワクチンを接種した群に比べ、インフルエンザの発症が40%以上少ないという結果が示された。
日本では、2014年5月30 日付で厚生労働省に対してインフルエンザの予防の効能・効果にて製造販売承認を申請、 医薬品医療機器総合機構による審査を受けていた。
今般、医薬品医療機器総合機構より、リスク・ベネフィットの観点に鑑み、本剤の臨床的意義は極めて乏しく、審査の継続はできないとの見解が示された 。
このため、アステラス製薬では、製造販売承認取得が困難と判断、申請取り下げ意思の決定に至った 。
(FDAが米国で承認しており、しかも孵化鶏卵不活化ワクチンよりも良い効果が出ているのを、医薬品医療機器総合機構がダメだとする根拠については、アステラスの発表にもUMNファーマの発表にもなく、不明)
UMNファーマでは、国内における本剤の臨床試験成績や、Protein Sciences Corporationでの試験結果や米国での使用状況から、本剤の臨床的意義は高いと認識しており、再度の製造販売承認申請の検討を行う。
UMNファーマは2010年1月に、中国・韓国・台湾・香港・シンガポールにおけるインフルエンザワクチンの独占事業化権を取得している。
このうち、、韓国については、ライセンス許諾先である日東製薬で臨床試験に向けて準備を進めており、他の東アジアについてもProtein Sciences CorporationがFlublok®4価製剤の製造販売承認をFDA より取得したことを契機に、引き合いがあることから、交渉を進める。
ーーー
UMNファーマはアステラス製薬との間で日本での共同開発及び独占的販売に関する共同事業契約を締結したが、生産面ではIHIと提携した。
IHIとUMNファーマは、2010年1月に細胞培養法を用いたインフルエンザワクチン原薬の製造事業に関する基本協定 を締結し、2010年6月に原薬の製造新会社 UNIGENを共同で設立した。
UMNファーマが秋田市に建設中の細胞培養法によるインフルエンザワクチン原薬製造工場における生産業務を担当する。現在の出資比率は50:50となっている。
従来の発育鶏卵を用いて製造するインフルエンザワクチンは製造に少なくとも約6ヶ月を要するが、UNIGENが原薬の製造を担当するUMN-0501では、ワクチンが必要とされてから市場に供給できるようになるまでの期間を約2ヶ月と、大幅に短縮できる。
2013年5月に岐阜工場を竣工した。21,000Lスケール培養槽を最大4基設置する予定で、完成後は、世界最大級のバイオ医薬品生産施設となる。
UMN ファーマは2016年2月、Protein Sciences Corporationが米国で製造・販売している季節性組換えイ ンフルエンザ HA ワクチン Flublok®の原薬について、UNIGEN 岐阜工場から供給する正式合意書を締結した。FDA より認可を取得すべく協力して準備を進めている。
しかし、今般のアステラス製薬の撤退により、IHIは事業の継続が難しいと判断し、撤退を含め検討する。 UNIGEN の持ち分を売却する方針で既に複数の企業に打診した。
IHIはUNIGENの製造設備資金や運転資金の一部を債務保証しており、2016年12月末時点の残高は110億円 となっている。
コメントする