三菱重工、仏原子力大手Arevaの新会社に出資

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三菱重工業は2月3日、フランスの総合原子力メーカーであるArevaグループが設立する新会社に5%(250百万ユーロ)を出資することで大筋合意したと発表した。
日本原燃も5%出資する。

出資するのは、Arevaがウランの採掘、濃縮、転換や使用済み燃料の再処理を中核とする燃料サイクル事業を分社して新たに設立する会社 (仮称:NewCo)。

なお、三菱重工は仏電力公社が引き受けるArevaの原子力部門(Areva NP)への出資も検討している。

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2001年に発足したArevaはウランの採掘から原子炉の製造、核燃料の再処理まで、原発に関わる一連の分野を手掛ける総合原子力メーカーで、フランス政府が過半を出資する。

フランスの原子力政策はフランス原子力庁 (CEA) が主導し、 民間企業のFramatomeが原子炉プラントの製造を、CEA子会社のCogemaが核燃料製造を担当する分業体制であった。
2001年にFramatome はプラント需要低迷に危機を迎えていたドイツ Siemensの原子力部門を買収し、更にCogema と統合し、Areva となった。

Framatomeと Siemensは1989年から欧州加圧水型原子炉(EPR)の開発で協力していた。

福島第一原発の事故で、欧州の一部の国が脱原発を決めたほか、日本の原発の再稼働が遅れてビジネス機会が減少、更にフィンランドの新型原発の建設で費用が膨らみ、2015年12月期まで5期連続の最終赤字を計上した。2014年には48億ユーロの赤字、2015年には20億ユーロの赤字となった。

フィンランドのオルキルオト原発3号機はArevaが建設する160万kwの欧州加圧水型原子炉(EPR)で、2005年8月に建設が始まった。当初は2009年に開業予定であったが、 まだ完成していない。
EPRの特徴である二重封じ込め構造の構築にも時間を要しているとされる。

コストは41億ドルの予想が72億ドルに上昇、契約価格は固定されているので、費用の増加分は同社の利益を圧迫する。

Arevaの救済のため、フランス政府は抜本的な同社の構造改革を決めた。2017年に実行される。

仏電力公社(EDF)が原子炉製造を担う子会社 Areva NPの過半数を握る大株主になる。

但し、フィンランドのオルキルオト原発3号機については、Areva SA に残し、政府が責任をもって完成させる。

政府はAreva本体に資本注入して再建を支援する。

Arevaは2017年2月3日の株主総会で50億ユーロの増資を発表した。政府が45億ユーロ、三菱重工と日本原燃が合わせて5億ユーロ出資する。

燃料再処理部門を分社する(仮称 Newco)。 三菱重工と日本原燃はこれへの出資となる。

NewCoへの出資は中国の原発大手の中国核工業集団(CNNC)も交渉をしていたが破談になった。日本側より多い出資や取締役派遣を求め、フランス側が断ったとされる。安全保障の観点から米国や日本政府が強い懸念を伝えたともいわれる。

しかし、ArevaやEDFには中国の参加を求める声が強い。
今後の原発新設の大部分は中国であり、受注のために関係を良くしたい。またEDFの英国計画は中国との共同事業である。

英国のHinkley Point 原発計画には、中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資する。

EDFが英国のSizewell とBradwellで予定する新規原発建設計画にも中国が参画、後者については欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。

 2015/10/28 中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

このため、今後、中国が参加する可能性は強い。

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三菱重工は次のように述べている。

Arevaグループと原子力発電事業において長年の協力関係を有しており、1991年に燃料サイクル分野における合弁会社を設立して各種再処理関連機器を製造・販売しているほか、2007年にはArevaと当社の最新技術を融合した加圧水型(PWR)原子力発電プラントの開発に着手、電気出力110万キロワットの最新鋭PWRプラント「ATMEA1」を開発、トルコを始め世界各地での販売活動を展開しています。

当社はNewCoの事業拡大を通じたArevaグループの今後の成長戦略の実現を支援するとともに、従来以上の事業面・技術面での協力関係構築により、2015年10月に日仏両政府間において確認された両国政府および原子力産業界の連携強化にも重要な役割を果たし、原子力事業の世界的なバリューチェーンの強化を目指します。

一方、日本原燃は青森県六ケ所村の再処理工場の建設で、Arevaから全面的な技術協力を受けるなど両社の関係は深い。


日本側の出資には中国に対抗する意味もある。

しかし、各社が原発事業で莫大な赤字を計上し、撤退が続くなか、また、原発計画そのものが(中国やインドを除くと)取り止められるなか、新たに投資するリスクは大きい。

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