和解金はDuPontとChemoursが等分に負担する。
同訴訟は、ウェストバージニア州のデュポンのWashington工場から流出した化学物質ペルフルオロオクタン酸(PFOA)が混じった飲料水が原因で、ウェストバージニア州とオハイオ州の住民が 癌などの健康被害を受けたとするもの。PFOAはフッ素樹脂「テフロン」の製造過程で使われた。DuPontは10年以上前にPFOAの生産を停止している。
原告側は、DuPontは1950年代からWashington工場から空中およびオハイオ川にPFOAを流出してきたが、1980年以降、ラットに癌を発生させることを知りながら、隠し、流出を続けたと非難した。
工場の近くの井戸水を飲む住民は血液中に平均の7.6倍のPFOAがみつかったとする。2012年に科学パネルはPFOAと肝臓癌など6つの病気に関係する可能性("probable link" )があると結論づけた。
裁判の途中で和解が発表され、陪審員は帰宅を命じられた。
原告のうち、200人ほどの癌患者は最低100万ドル、コレステロール患者は数万ドルを受け取るとみられている。
両社とも不法行為(wrongdoing)を否定している。
ChemoursはもともとDuPontの化学品事業で、2015年に分離・独立した。DuPontとは 独立時にPFOAの訴訟関連費用の負担について合意していた。
DuPontは2013年7月23日、Performance Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。
Performance Chemicals 事業は、酸化チタンを中心に、フッ素化学品、フッ素樹脂などを扱っている。スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討するとしたが、その後、2015年央にスピンオフすることを決めた。
名称は The Chemours Companyで、New Yorkで上場する。2015年7月1日に、株主にDuPont株式 5株当たり新会社株式 1株を渡した。
2015/6/12 DuPont、Performance Chemicals 事業を分離
今後も支払いが発生する可能性があるため、これについても決めている。
今後5年に発生する債務については、最初の25百万ドルまではChemoursが、次の 25百万ドルまではDuPontが、それを超える分はChemoursが負担する。
5年以降については、DuPontは責任を持たない。
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PFOAは、パーフルオロオクタン酸およびその塩類(アンモニウム塩、アルカリ金属塩;C7F15COOX、XはNH4、Na、Kなど)を含む化合物の総称。また炭素が8個含まれていることからC8と呼ばれることもあ る。
PFOAは、半導体・情報通信・自動車・航空産業・化学工業・調理用器具コーティングなど、幅広い用途で使用される一部のフッ素樹脂・ゴム製品の製造に必要な助剤として使用されてい た。
2000年に米国においてPFOAのヒトへの蓄積性が注目され、メーカー各社と米国政府が研究を行った。
PFOAは安定な物質だが、その反面、環境残存性もある。生体に摂取された場合、生体からの排出が遅いことから、蓄積する可能性を有している。
動物実験における、通常ではあり得ない高濃度かつ長期間投与では、影響を引き起こすことが米国を中心とした研究で報告された。
2006年1月末に、EPAは「PFOA自主削減プログラム」を発表し、世界の主要フッ素化学メーカー8社に対しプログラムへの参加を呼びかけ 、各社はこれに応じた。
DuPont、3M、旭硝子、Solvay、Arkema、Clariant、Ciba Specialty Chemical、ダイキン工業の8社
「PFOA自主削減プログラム」の内容は次の通り。
(1) PFOA、もしくは分解してPFOAを発生する前駆体物質、およびC8より炭素数の多い類縁物質の、工場から環境中への排出量、製品中含有量の両方について、2010年に2000年比 95%削減すること。
(2) PFOA、もしくは分解してPFOAを発生する前駆体物質、およびC8より炭素数の多い類縁物質を2015年に全廃することに対する努力を行うことを約束すること。
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