韓国最大の製鉄会社POSCO(旧称 浦項総合製鉄)は2月7日、全羅南道の光陽製鉄所内に建設したリチウム生産工場の完成式典を行った。
現在のリチウム生産法は、塩水を自然蒸発させる方式で、抽出には12~18ヵ月かかる。また、塩水に含有されたマグネシウムなどが不純物状態で残るため、再精製しなければならない。
これに対し、POSCOが同社傘下の浦項産業科学研究院(RIST)と共同で開発した「リチウム直接抽出技術」は、世界で初めて塩水に化学反応を起こしてリチウムを直接抽出するもの。
POSCOは2014年1月、カナダのリチウム会社Lithium Americas Corp. とCooperation Agreementを締結、Lithium Americas のアルゼンチン北部のJujuy州Cauchari 塩湖周辺に実証プラントを建設することとした。
2014年12月 にの年産200トン規模の実証プラントの完工式を行い、技術検証を開始した。
2014/12/27 韓国 POSCO、リチウム抽出技術の検証開始
今回、独自の技術開発に取り掛かってから7年 で、韓国で年間2,500トン規模の炭酸リチウムを生産する。これは、ノートパソコンのバッテリー 7,000万個を生産できる量という。
POSCOのリチウム抽出技術は、化学反応を通じて塩水からリン酸リチウムを抽出した後、炭酸リチウムに転換する工法で、 従来の自然蒸発式リチウム抽出法が平均12~18ヶ月程度を要するのとは異なり、最短 8時間から最長1カ月以内に高純度のリチウムを抽出することができる。
リチウム回収率も、従来の工法は30~40%に過ぎないが、POSCOは80%以上に引き上げた。リチウムの純度も99.9%以上に高めた。
また、どんな塩水でも処理でき、不純物の多いダーティな塩水でも処理できるのが特徴。従来法では邪魔になる含有マグネシウム、カルシウム、カリ、その他の回収、リサイクルが可能である。
従来法では必要な蒸発池が不要で、エコフレンドリーで、天候にも依存しない。
POSCOでは、「世界のバッテリー用炭酸リチウムの需要は2015年に66千トンと推定され、2025年には18万トン以上に増えるだろう 。光陽リチウム工場をはじめとして国内外に年4万トンの生産体制を構築し、グローバルなリチウム生産基地としての地位を確固たるものにする計画」としている。
POSCOでは今後、塩分含有量の高い塩湖を確保して、国内外炭酸リチウムの生産量を4万トンにまで拡大する。
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日本では2014年2月に日本原子力研究開発機構がリチウムの革新的な元素分離技術を確立したと発表している。
研究チームは、海水と薄い塩酸を用意し、その間に海水に溶けたリチウムだけを通すセラミックスを使った薄膜 (5センチ四方)と電極板を浸した。
海水側と塩酸側の電極板を導線でつなぐと導線に電流が流れ、30日間で 海水25リットルから約2mg の高純度リチウムを塩酸側に採取できた。
また、0.56ボルトの発電にも成功した。
従来の塩湖からの回収技術に比べ、短時間、省スペース、さらに、リチウム分離過程で電気等の外部エネルギー消費を要さない革新的技術であり、使用済リチウムイオン電池から回収されていないリチウムのリサイクルにも適応可能な技術で あるとしている。
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