東芝の状況

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東芝は2月14日に予定した第3四半期の決算発表を延期した。

Westinghouse によるS&W買収に関し、不適切な行為が判明し、継続調査が必要になったという。

S&W買収に関する「のれん代」を過少に見積もった疑いがあるとされる。
Westinghouse 経営者による不適切なプレッシャーが存在した疑いもある。

本ブログは1月24日の記事で、Westinghouseが2016年8月12日以前の時点で、30億ドル強の損失を認識していた筈で、このことを12月までトップにあげていないこととなるとし、粉飾決算事件から再出発した筈の東芝の経営体制は一体、どうなっているのだろうかと述べている。

同日、原子力事業を統括してきた志賀会長の辞任、エネルギーカンパニー社長(Westinghouse会長)のダニー・ロデリック氏のカンパニー社長解職も発表した。

決算について公認会計士事務所のレビューが未完のため、参考として、同社の責任で第3四半期の実績と2017年3月度決算の概要を明らかにした。

第1~第3四半期 実績

営業損益 -5,447億円 (原子力部門のれん償却 -7,125億円)
純利益  -4,999億円

2017年3月期 予想

営業損益 -4,100億円 
純利益  -3,900億円
株主資本 -1,500億円  

対策なしでは債務超過
  金融機関からの融資に支障
  東証2部に変更

対策として、これまで分社するメモリー新社の19.9%を売却するとしていたが、社長は社内放送で「もうマジョリティにこだわらない」と述べた。
売却先候補が2割では魅力に乏しいとされていた。

しかし、この場合、公取委の審査などで3月末までに売却を決めることは出来ない。昨年の東芝メディカル売却で使った奇手は使えない。

東芝では、有利な条件で売却するため、時間をかけて交渉することとし、東証2部落ちを覚悟したと報じられた。

1年後に債務超過を解消できなければ上場廃止となる。

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同社は原子力事業の問題点についても明らかにした。

Westinghouseの赤字の理由については、既報(2017/1/24 東芝の原子力事業の損失の実態)の通りである。

米国での2原発(計4基)の建設で工事が遅延、建設費が大幅アップした。
電力会社からの訴訟、WestinghouseとS&Wの訴訟の可能性などを一括解決し、プロジェクト完工に注力するためS&Wを買収した。
電力会社とは契約金額の増額(電力会社の負担上限の決定)、納期変更で合意した。

ところがS&W買収後のチェックで、コスト見積もりが大幅に増加した。

コスト見積もり増加額の内容

 労務費(直間人件費)    37億ドル 作業効率低下、物量増加、直間接人員増加等
 調達コスト(設備、下請け) 18億ドル 設備の購入価格上昇、下請け業者支払増加
 予備費等            6億ドル  損害賠償費用、ワランティ費用等
 合計               61億ドル

東芝では当初、S&W買収の「のれん」を87百万ドルとしていたが、今回、5,368百万ドル(6,253億円)を計上した。

そして、第3四半期にこの全額と、Westinghouse買収の「のれん」の残額を償却する。

のれん償却額 S&W買収  6,253億円(5,368百万ドル)
       Westinghouse買収 872億円 当初29.3億ドル(3,500億円)、2016年5月発表の償却 2,476億円の残り全額 
       合計        7,125億円

純損益への影響        -6,204億円 非支配株主持ち分、法人税影響、繰延税金資産取り崩しを除く

         

原子力事業の営業損益推移 (億円)

09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度予
営業損益 416 535 452 147 -358 -4 -2,088 -6,995
うち「のれん」減損 -2,476 -7,125

         

今後の原子力事業の方針は下記の通り。

 国内事業

再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に、社会的責任を果たす。

 海外事業

燃料・サービス:高収益かつ安定したビジネスとして継続

新設プラント:今後は建設リスクを負担せず、機器供給やエンジニアリングなどに特化

進行中の8基は、コスト削減策を講じ、リスクを低減

米国2原発 計4基
浙江省台州市三門県 三門原発 2基
山東省煙台市海陽市 海陽原発 2基

英国のNuGenのプロジェクトについては、土木建築リスクを負わない前提で検討をすすめ、従来通り出資希望者への持ち分売却を検討するとしている。

東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。

NuGen は、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。

Westinghouse Electric のAP 1000 を3基建設する予定。東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。世耕弘成経済産業相が同日、来日したGreg Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相と会談し、覚書を結んだ。


覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
また、原子力の研究開発や、福島第1原子力発電所の廃炉や除染などでも協力を深めることを確認した。

2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

この協力覚書は実質的には日立と東芝の計画を支援するものである。

報道では、東芝はNuGenの持株を韓国電力公社(Kepco)に売却するための検討に入ったとされる。

韓国電力関係者はこれについて「東芝が実際に売却の提案をしてくれば提示した条件次第で判断する問題」と述べた。

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