原発燃料事業の統合、延期 

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2016年9月末に、日立製作所、東芝、三菱重工業の3社が核燃料の製造事業統合の調整を進めていると一斉に報じられた。

原発の再稼働が進まないために各社とも事業の採算が厳しく、工場の統廃合などでコストを削減するねらい。

既に廃棄したのが福島第一の6基、廃炉決定が原電敦賀、関電美浜①②、中国電力島根①、九電玄海①、四国電力伊方①の6基で合計12基に達する。
原子力規制委員会に再稼働の申請をしていない原発が福島第二の4基を含め、17基もある。

当初あった54基のうち、12基は廃棄、17基が再稼働申請さえしていない。
再稼働申請したのは、25基のみ。

2017年2月22日に関電大飯③④が、事実上合格したとする「審査書案」 了承を得て、6原発12基が実質上合格となったが、現在稼働しているのは九州電力の川内原発1、2号機と、四国電力伊方原発3号機 の3基のみ。他は稼働には時間がかかる。

このうち、高浜③④は裁判所から差し止め命令を受けている。今回事実上合格となった大飯③④も、基準値振動問題で異議を唱えた原子力規制委員会の島崎元委員を名古屋高裁が4月にも証人喚問する予定で、稼働できるかどうか不明である。

背景には経済産業省の意向があったとみられ、核燃料事業の次は原子炉事業の再編が焦点となるとみられた。

しかし3社は、原発向け核燃料事業の統合計画について、目標としていた今春の統合を断念し、延期する方針を固めた。

燃料製造拠点の統廃合を巡る調整が難航していることに加え、公正取引委員会の審査も長期化が必至なためで、今秋以降にずれ込む公算が大きい。

3社はそれぞれ製造拠点を抱えており、どの拠点をなくすかという具体的な計画の協議に入ると、雇用の削減と絡んでくるため、難航しているという。

原発への供給者がほぼ1社になるため、簡単に公取委が了承するとは思えないが、3社の協議が難航し、審査請求ができていないとされる。

GE、Westinghouse、Arevaも加わっているため、米国やフランスの政府の関与も予想される。

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統合を目指していたのは、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、原子燃料工業、三菱原子力燃料の3社で、それぞれの陣営が1/3ずつ出資する持株会社の下に3社を入れる案などを検討しているとみられる。

3社の概要は下記の通り。

1)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン

GE、日立、東芝の3社は、1967年に包括的な沸騰水型原発プラント(BWR)の技術ライセンス契約締結以来、日本および海外でBWRプラントの建設、運転プラントの予防保全サービス分野において協力関係を構築してきた。原子燃料分野においては、1967年に燃料製造合弁会社としてグローバル・ニュークリア・フュエル ・ジャパンを設立し、原子燃料を国内の電力会社などに納入している。

その後、3社は2000年1月1日に、原子燃料の営業、設計、開発、製造部門を統合して、日米に拠点を持つ国際燃料合弁会社 Global Nuclear Fuel を設立した。
GEが51%、日本の2社が各24.5%を出資する。

日本における事業拠点はグローバル・ニュークリア・フュエル ・ジャパンとし、3社がそれぞれ行ってきた軽水炉用原子燃料の営業、設計、開発業務を移管し、原子燃料の製造から販売までを一貫して行う専門会社とした。

米国における拠点として、GEの軽水炉用原子燃料部門(営業、設計、開発、販売部門、ノースカロライナ州ウィルミントンの燃料製造工場)を分離し、Global Nuclear Fuel Americasとした。

なお、日立と東芝は、これとは別に、1972年に両社の原発向け核燃料の研究開発部門を統合し、50/50JVの日本核燃料開発を設立している。

2) 原子燃料工業

古河電工と住友電工はそれぞれ、原子燃料事業を手掛けていたが、1972年に統合し、原子燃料工業を設立し、総合原子燃料専業メーカーとしてスタートした。

我が国唯一の沸騰水型(BWR)〈東海工場〉及び加圧水型(PWR)〈熊取工場〉の両タイプ用燃料のメーカーとして、ほとんど全ての原子力発電所へ供給している。

2009年にWestinghouseが52%出資し、筆頭株主となった。 (WestinghouseはBWRとPWRの両方を持つ)

東芝は2006年10月にWestinghouseを買収している。このため、東芝としては、1)のグローバル・ニュークリア・フュエル ・ジャパンと、2)の原子燃料工業の両方に参加したこととなる。

3) 三菱原子力燃料

ウラン鉱の選鉱試験をしていた三菱金属(現在の三菱マテリアル)と原子燃料の研究開発をしていた三菱原子力工業(その後三菱重工が吸収)が1971年に三菱原子燃料を設立した。

2009年にフランスのArevaが30%、三菱商事が5%出資したが、2016年には三菱重工が95%、Arevaが5%となった。

加圧水型原子炉(PWR)用ウラン燃料の開発・設計、製造、販売、輸送を行うほか、Areva製の沸騰水型原子炉(BWR)用ウラン燃料の販売、輸送を行っている。

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