Trump大統領は2月3日、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しに関する大統領令に署名した。
大統領令では、 まず政権が米国の金融システムはこうあるべきだと考える基本原則(Core Principles)を列挙した。
(a) empower Americans to make independent financial decisions and informed choices in the marketplace, save for retirement, and build individual wealth;
国民が財産管理で独自の決定、情報に基づく選択ができること(b) prevent taxpayer-funded bailouts;
税金での救済策の禁止(c) foster economic growth and vibrant financial markets through more rigorous regulatory impact analysis that addresses systemic risk and market failures, such as moral hazard and information asymmetry;
システミックリスクや市場の失敗に対処する、より厳格な規制影響分析を通じて、経済成長と活力のある金融市場を育成(d) enable American companies to be competitive with foreign firms in domestic and foreign markets;
米企業が国内、海外で海外企業と競争しうること(e) advance American interests in international financial regulatory negotiations and meetings;
国際的な金融規制交渉で米国の利益を促進(g) restore public accountability within Federal financial regulatory agencies and rationalize the Federal financial regulatory framework.
金融監督機関の公的説明責任を回復し、金融規制フレームワークを合理化
そして財務長官に対し、 どの法律・規則が基本原則に沿っており、基本原則を推進するためどんな行動が取られているか、またどんな法律・規則が基本原則に沿っていないかについて120日以内に報告するよう求めている。
Trump氏は選挙期間中、ドッド・フランク法 (Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act) の廃止を掲げており、公約の実現に向け一歩踏み出した。
2008年のLehman ショックを受け、オバマ前政権は2010年にドッド・フランク法を成立させた。
金融機関がリスクの高い取引に走って金融危機が起こったことから、金融機関への規制を強めた。
主な内容
・一部の大手金融機関を「金融システムで重要な金融機関(Systemically Important Financial Institutions)」に指定、
厳しい監督下に置く
・銀行が自己資金でリスクの高い取引をおこなうことを禁じる(Volcker Rule)
・金融機関への特別検査(ストレステスト)の実施
・金融危機に事前に対処するための米金融安定化監督会議(Financial Stability Oversight Council)の設立
・消費者・金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau)を新設
金融業界からは、複雑な規制で膨大な作業が求められ、コストが増えるなどの不満がある。
米政府高官は、「ドッド・フランク法は政府の管理範囲を広げすぎた。一部は違憲のものもあるうえ、消費者保護につながらない新たな規制機関も生み出した」と批判し ている。
新政権には、Goldman Sachs などウォール街出身者が多く入って いる。
但し、同法の見直しは議会を通す必要があり、民主党の強い反発が予想される。
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大統領は2月3日、オバマ前政権が導入した「受託者規則」と呼ばれるルールの見直しを指示する大統領令を出した。
Presidential Memorandum Presidential Memorandum on Fiduciary Duty Rule
「受託者規則」は、金融機関が退職した個人の年金運用に助言する際、利用者保護を徹底することを求めるもので、2017年4月からの導入が決まっていた。
新ルール対応のコストや広告費などの負担が発生するほか、投資信託を勧めて手数料を得ると、条件次第では規制に背く可能性も指摘され、金融業界の反対が強かった。特にコスト圧力は中小の投資アドバイザーやブローカーを圧迫するとされる。
ホワイトハウス高官は、年金基金や投資会社の負担が重いとして「ルールは完全に過ちだ」と批判している。
大統領令では、政権のプライオリティとして、国民が財産管理で独自の決定をなしうることを挙げ、労働省に対して、「受託者規則」が国民が情報や助言を得るのに悪影響を与えるかどうかを調べ、もしそうなら、廃止または改正の案を発表することを求めている。
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