欧州委員会は3月27日、DowとDuPont の合併を条件付きで承認すると発表した。
Dow Chemical と DuPontは2015年12月11日、対等で経営統合すると発表した。
2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表
2016/8/15 EU、Dow とDuPont の合併で調査開始
EUの規制当局が慎重な姿勢を続けたため、両社は2017年2月7日に更なる事業売却案を当局に提案した。
2017/2/15 Dow とDuPont、合併承認を求め、事業売却を提案
欧州委員会は今回、これを条件に合併を承認した。
米国などの独禁法当局の認可に想定以上の時間がかかっており、当初2016年末を予定していた統合の完了時期が遅れている。
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欧州委員会の懸念は次の通り。
a) 既存農薬の多くの市場での著しい競争の減少
- 除草剤について、穀類、菜種、向日葵、米、穀物飼料などの除草剤で著しく競争が減少
- 殺虫剤について、果物や野菜、その他の害虫で著しく競争が減少
- 殺菌剤について、イモチ病での競争が減少
当初は、殺線虫剤と種子での競争減少も懸念したが、詳細調査の結果、問題はなかった。
b) 農薬でのイノベーション競争の著しい減少
- 両社は重要な除草剤、殺虫剤、殺菌剤の開発でぶつかっており(head-to-head competition)、統合後にはコストのかかる開発をやめる誘惑がある。
- 5社(統合する両社とBASF、Bayer、Syngenta)が原体の発見から製剤品の販売までの全体でグローバルに活躍しており、他社は限定的である。合併でたった3社が統合会社と競合する。特定の分野では競合はさらに減る。
c) 特定の石油化学製品で著しい競争の減少
これに対する両社の対策提案は次の通り。
a & b) 農薬市場における価格競争、イノベーション競争の維持
DuPontの農薬事業のかなりの部分をR&D組織を含めて売却する。(DuPontは「1社に売却」としている。)
- グローバルで、DuPontの除草剤 thifensulfuron, tribenuron, metsulfuron, chlorsulfuron, triflusulfuron, lenacil, flupyrsulfuron, ethametsulfuron and azimsulfuron、殺虫剤 indoxacarb, cyazypyr and rynaxypyr。
- 殺菌剤については、European Economic Areaにおけるイモチ病殺菌剤の独占技術供与
- DuPontのグローバルなR&D組織。売却対象外のDuPont殺虫剤用のものを除く。
c) 特定の石油化学製品での競争の維持
Dow はスペインと米国のアクリル酸コポリマー製造拠点の売却及び購入販売しているアイオノマーの購入契約の譲渡
* Dowは2017年2月2日、グローバルのエチレンアクリル酸(EAA) コポリマーとアイオノマー事業をSK Global Chemical に売却する契約を締結した。
2017/2/15 Dow とDuPont、合併承認を求め、事業売却を提案
欧州委員会としては、このほかに、ChemChinaによるSyngentaの買収案件を審査中である。
2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収
BayerによるMonsanto買収の審査も始まる。
2016/9/19 Bayer、Monsantoを買収
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