大塚製薬、米国バイオベンチャー買収 

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大塚製薬は3月3日、Otsuka America Inc.が米国マサチューセッツ州ケンブリッジのNeurovance, Inc.を完全子会社化することについて合意したと発表した。

Neurovanceは2011年にEuthymics Bioscienceから独立した企業で、成人と小児の注意欠陥・多動性障害(ADHD:attention deficit hyperactivity disorder)治療薬として開発中の「Centanafadine」を保有する。

同薬は、神経伝達物質のノルエピネフリン、セロトニンおよびドパミンの再取込を抑制する「トリプル再取込阻害」という作用機序を持ち、米国における臨床第2相後期(P2b)試験では、成人ADHD患者を対象に実施した結果、ADHD評価スケールが有意に改善している。現在、臨床第3相試験を準備中。

同社は、Novartis Venture Fund、Venture Investors、Tekla Capital Management、GBS Venture Partners、State of Wisconsin Investment Board、Timothy J. Barberich などのベンチャーキャピタルから出資を受けている。

大塚製薬はNeurovanceの株主に対し、本買収の対価として本買収完了時に100百万米ドルを支払うとともに、Centanafadineの進捗に応じた開発マイルストンとして最大150百万米ドルを支払う。
さらに発売後は売上高に応じた販売マイルストンを支払う。

大塚製薬では、「Neurovanceから新たな中枢神経領域のポートフォリオを得ることで、この領域を一層強化できる。今後とも、未解決の医療ニーズを満たすため、中枢神経、がん、循環器・腎領域を最重点とした治療薬の研究開発を行っていく」としている。

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注意欠如・多動性障害(ADHD)は、不注意(散漫性、物忘れ)、過活動(そわそわする)、衝動性(落ち着きのなさ)を特徴とする発達障害。

不注意(inattention)

  • 簡単に気をそらされる、細部をミスする、物事を忘れる
  • ひとつの作業に集中し続けるのが難しい
  • その作業が楽しくないと、数分後にはすぐに退屈になる

過活動(hyperactive)

  • じっと座っていることができない
  • 絶え間なく喋り続ける
  • 黙ってじっとし続けられない

衝動性(impulsive)

  • 結論なしに喋りつづける
  • 他の人を遮って喋る
  • 自分の話す順番を待つことが出来ない

現在、米国では精神刺激薬が主に処方されているが、中枢興奮作用および精神依存性や薬剤耐性が課題で、ときには乱用などが問題視されている。
刺激薬と同等の有効性を持ちながら、非刺激薬と同じ忍容性で乱用の懸念が少ない薬剤が求められており、トリプル再取込阻害というユニークな作用機序を持つ「Centanafadine」の上市が期待されている。

NeurovanceによるADHDの説明は次の通りで、それぞれが神経伝達物質のNorepinephrine (NE)、Dopamine (DA) 、Serotonin (5-HT) の不足が関係している。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) を例にとると下記の通り。(Wikipedia)

シナプス前ニューロンから放出された神経伝達物質 セロトニンはセロトニン受容体に作用するが、シナプス間隙に貯まったセロトニンは、セロトニントランスポーターにより再取り込みされる。
うつ状態にある人はシナプスにおけるセロトニンの濃度が低下し、セロトニン受容体にセロトニンが作用しにくい状態となっているという仮説がある。
セロトニン再取り込み阻害薬はセロトニントランスポーターに選択的に作用し、セロトニン再取り込みを阻害 し、結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持する。


Neurovanceの新薬 Centanafadine は Norepinephrine (NE) と Dopamine (DA) 、Serotonin (5-HT) のトリプルの再取込阻害というユニークな作用機序を持つ。
このうち、Serotonin の再取込阻害機能は少し劣る。

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