環境省は3月10日、「(仮称)蘇我火力発電所建設計画に係る計画段階環境配慮書」に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。事業実施の再検討も選択肢とするよう求めている。
環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境影響配慮書について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされており、この手続に沿って意見を提出するもの。
内容は次の通り。
パリ協定の目標達成のため「石炭火力の稼働を是認できなくなるおそれもある」
本事業者においては、石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、2030 年及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2 排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検7討することが重要である。
経産省に対しては、省エネ法に基づくベンチマーク指標の2030 年度目標の確実な遵守及び道筋の検討、共同実施の評価の明確化、自主的枠組みの実効性・透明性の向上及び参加事業者の拡大、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた適切な運用、引き続き、CCS 導入に向けた一層の取組を進めること。
環境省は2015年に、多くの石炭火力計画に対し、「現段階では是認できない」とする環境影響評価(アセスメント)の意見を経済産業省に提出した。
2015/11/18 環境省、千葉と秋田の石炭火力計画も是認せず
その後、環境省は経産省との合意をもとに、2016年2月に石炭火力の新設を容認した。
環境省と経産省の合意内容は下記の通り。
・火力発電の効率に数値目標を設定、効率の悪い設備や休廃止
・再生可能エネルギーと原発を合わせた非化石電源の利用を合計で原則44%以上にするよう電力会社に求める
・発電所のCO2排出量などの情報の開示
・電力業界は削減計画を誠実に実行
・環境省は電力業界の取り組みを毎年点検し、不十分なら見直しを求める2016/2/11 環境省、石炭火力発電所の建設を容認
今回、山本環境相は上記の合意を維持するとしつつ、「事業リスクが極めて高いことを自覚してほしい」と述べ、自主的な計画撤回に期待感をにじませた。
「パリ協定」で、日本は2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減する目標を掲げるが、石炭火力の新増設計画が今年2月現在で約1940万キロワット分に上り、達成できないおそれがある。
(仮称)蘇我火力発電所建設計画の概要は下記の通り。
事業者 | 中国電力、JFEスチール | |
立地 | 千葉市 JFEスチール東日本製鉄所構内 | |
燃料 | 石炭 | |
出力 | 約107万kW | |
運転開始時期 | 2024年(予定) | |
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