Trump大統領は3月6日、中東・アフリカ7カ国の国民を一時入国禁止にした米大統領令の一部を修正した新たな大統領令 に署名した。
Executive Order on March 06, 2017
Executive Order Protecting The Nation From Foreign Terrorist Entry Into The United States
これに対し、ハワイ州が3月8日に憲法違反として提訴、ワシントン州が9日に提訴した。このほか、ニューヨーク、マサチューセッツ、メリーランド、ミネソタ、オレゴン各州が無効化を求めて法的手段を取る方針を示した。
ウィスコンシン州の連邦地裁は3月10日、シリア北部アレッポに残る妻子の難民申請手続き中の同州在住のシリア難民男性が提起した訴えで、執行を停止する仮処分を下した。
付記 ハワイ州地裁は3月15日、新たな大統領令について全米で執行を一時的に差し止める決定を出した。
メリーランド州地裁は16日、一時差し止めの仮処分を命じた。
付記 米司法省は3月17日、リッチモンド連邦高裁に仮処分の取り消しを求めて上訴の手続きを取った。
(ハワイの場合は、上訴すると、旧大統領令の差し止めを認めたサンフランシスコ連邦高裁が再び担当することになるため、避けた。)
付記 バージニア州の連邦地裁は3月24日、新たな大統領令が特定の宗教には言及していないことを指摘、差し止め請求を却下した。
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Trump大統領は1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。
Executive Order on January 27, 2017
Executive Order: Protecting the Nation from Foreign Terrorist Entry into the United States・移民国籍法 217(a)(12) と連邦法1187(a)(12)で規定した国(イラン、イラク、シリア、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの7か国)へのビザ発給を90日間停止
・シリア難民受け入れを無期限停止、他国の難民受け入れも120日間停止
・全体の難民受け入れを年5万人に半減
ワシントン州が大統領令の緊急停止を求めて連邦地裁に提訴したのに対し、シアトルの連邦地裁のJames L. Robart 判事は2月3日、「大統領令が雇用や教育、企業活動などに取り返しのつかない損害を生じさせている」として、一時差し止めを命じる仮処分の決定を出した。
サンフランシスコの連邦控訴裁判所は2月9日、7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、3人の判事の全員一致で、即時停止を命じた連邦地裁の仮処分を支持する判断を示した。
2017/2/5 米連邦地裁、移民の入国一時禁止の大統領令の即時差し止め仮処分
これに対する大統領のツイッターは、"See you in court. The security of our nation is at stake !" (最高裁で会おう。我が国の安全は危機に瀕している!)であったが、最高裁で覆るのは確実ではない。
Scalia 判事が亡くなり、現在の8人の判事はリベラル派が4人、保守派が3人、保守寄りの中間派が1人。
大統領は1月31日、保守的な信条で知られる Neil Gorsuch 連邦控訴裁判事を指名すると発表したが、上院で3/5の賛成による承認が必要で、見通しは立っていない。
このため、前回の大統領令の問題個所を修正し、新たな大統領令を出した。
前回との違いは下記の通り。
前回 | 今回 | 理由 | ||
入国禁止 | 対象国 | イラン、シリア、リビア、イエメン、スーダン、ソマリア、イラク | イラクを除外 | イラクは対ISで共闘 イラク政府はビザ申請者の情報提供など協力 |
禁止日時 | 発表時から90日 | 3月16日から90日 | 前回は空港で大混乱 今回は10日の猶予 |
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対象 | 全員 | 下記は除外 ・ビザ、グリーンカード保有 ・外交官 ・対象国以外の二重国籍保有 |
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難民受入 | 停止期間 | シリアからの移民は無期限停止 他の国からは120日間停止 |
一律120日停止 | |
停止対象外 | その国の少数派異教徒(minoriry religions) | (規定除外) | ||
(規定なし) | 受け入れが決まっている難民 | |||
受入数 | 5万人(従来は11万人) | 5万人 |
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