Trump 大統領 自動車の燃費規制見直しを発表

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Trump大統領は3月15日、デトロイト近郊を訪問し、アメリカの大手自動車メーカーのほか、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど日本の自動車メーカーの幹部も参加した会合を開いた。

席上、トヨタ自動車の幹部に対し、雇用の創出のため、アメリカ国内に工場を建設するよう改めて求めた。

このあと大統領は演説し、「自動車産業は打撃を受けてきたが、それも長くは続かない。自動車産業を妨げるいかなる規制も取り払う。私はきょう、規制を決めたオバマ前大統領の大統領令を取り消すことを宣言する」と述べた。

オバマ前大統領は、退任直前のことし1月、米国で販売するLight-duty vehicle (普通乗用車とライトトラック) に2025年までに 平均54.5マイル/ガロン(約23.2km/リットル)の燃費規制を義務づける規制を決定し、地球温暖化対策に取り組む姿勢を強調したが、Trump 政権はこれを見直す形となった。

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米国では、2011年1月に、2016 Model Year の Light-duty vehicleのCO2排出量を250g/mile、CAFE燃費を35.5 mpg(15.1km/L)とする規制が発効した。

2012 MY 2013 MY 2014 MY 2015 MY 2016 MY
Passenger Cars 33.8 34.7 36.0 37.7 39.5
Light Trucks 25.7 26.4 27.3 28.5 29.8
Combined Cars & Trucks 30.1 31.1 32.2 33.8 35.5

オバマ大統領は2011年7月に、次の段階として2025 Model YearのCO2排出量を163g/mile、CAFE燃費を54.5 mpg(23.2km/L)とする規制案を提案した。

オバマ政権は2012年8月28日、54.5 mpg の燃費規制を正式に発表した。

これは平均値で、具体的な規制例は下記の通り。

Segment Make & Model 2012MY 2017MY 2021MY 2025MY
Compact Car
Chevrolet Cruze
33.4
40.0
46.6
56.0
Midsize Car
Toyota Camry
32.3
38.4
44.8
53.8

この時点では、2022年から2025年にかけての平均燃費値について2018年4月までに再審査するとしていた。

しかし、EPAはトランプ政権発足の直前の本年1月13日、再審査をしない方針を突然決めた。これにより、54.5 mpg の燃費規制の維持が決まった。

自動車メーカーには目標達成の用意があるというのが理由で、次の通り述べている。

  • 自動車メーカーは目標を、当初予想より少し低いコストで達成する幅広い技術を持っている。
    電気自動車やハイブリッド等が余り増えなくとも達成可能である。
  • 新基準で消費者コストは低減し、温室効果ガスの放出と燃料消費が著しく減り、米国民の健康と福祉に貢献する。
  • 自動車メーカーは2012-2015年の基準を達成しており、前例のないペースで燃料効率化技術を採用している。

これに対し、米自動車工業会と外資系メーカーを中心につくるGlobal Automakersは2月21日、燃費規制の厳格化に反対する要望書をEPAに提出した。

自動車メーカーの幹部は大統領への書簡で、この規制により将来の生産レベルに影響が及び、数十万、あるいは100万人分もの雇用が危険にさらされると批判、EPAの決定を見直すよう求めた。



大統領の発言後、EPAは1月の決定を覆し、予定通り再審査を行うと発表した。

今後の予定は次の通り。

  • Step 1: 2016年7月に、National Highway Traffic Safety Administration とCalifornia Air Resources Boardが Draft Technical Assessment Reportを出し、パブリックコメントを求める。
  • Step 2: 2016年11月にEPA が提案を行い、パブリックコメントを求める。
  • Step 3: 2018年4月1日までに、EPAは基準を維持するか、変更するかの最終決定を行う。

今回の大統領の発表を受け、米自動車工業会は声明を出し、「自動車産業に携わる700万人以上の人や、求めやすい価格の自動車を探している国民に影響を与えるものだ」として評価、Global Automakers も「新政権の判断を歓迎する。今後規制当局と基準の見直しで協議できることを楽しみにしている」とコメントした。

一方、議会の野党・民主党の上院院内総務は声明を発表し、「トランプ政権が、重要な環境保護政策を廃止しようとする最初の措置となる。間違った決定であり、気候変動に対する我々の取り組みに逆行するものだ」と批判した。環境保護団体からも反発の声が相次いでいる。

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